プロローグ
「ダンスじゃない」
それは唐突に否定された。
「なにそれ?大道芸?ウチの部ではそういうの違うんだよね。てかダンスに組み込むものであってジャンルかってなったら微妙でしょ。」
新入生の部活体験。
中学1年の間宮優太は、2つ歳の離れた先輩に言われるがまま言い返すことができなかった。
今まで経験してこなかった上下関係、積み上げてきた努力の否定。頭の中で色々な事が交差して、すでに思考は止まりかけている。
それでもなお先輩の言葉は止まらない、罵詈雑言は止まらなかった。
「確かに凄いけど、そんなん真面目にやってる奴とかいないだろ、もしそれをウチでやるつもりならほかをあたってくれ。」
先輩の言葉が一つ、また一つと積み重なっていく。好き放題言われて言い返せないことに悔しさと怒りがこみ上げてくる。握った拳に次第に力がこもり、奥歯を噛み締めた。
先輩相手に言い返すのが怖い、自分より上の人に反抗した後が怖い。
そんな事を考えていると、先輩は少し小幅で近付いてきた。そして
「あんま調子乗ってんじゃねぇぞ?」
誰にも聞こえない、優太だけに聞こえるようにそう言った。
「ッ!」
バタンッ!
ドアを叩きつけるように開け、走り出した。逃げ出したかった。
自分の中の感情が泥々になって崩れていくのが分かる。
目が回る、気持ち悪い、周りからの視線が痛い。
「ゆうくん‼︎」
背にした教室から聞こえる聞き慣れた声も痛く、足を止めはしなかった。
視線も言葉も、何もかもが痛い。
「もう、嫌だ。こんな事なら…」
ダンスなんてやらなきゃよかった