冒険者ラミアの巻 その③
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サーシャの町はマギラ湖の畔にあり、澄んだ空気ときれいな水が特産品である。
しかし、最も有名なのは、町で行われるオークションだった。
古来より続く伝統あるオークションには、希少なものが出品されることもあり、多くの観光客が訪れると同時に、多くの利権が絡んでいる。
そしてその利権を狙い、表立って名前を言えないような組織さえ手を伸ばしているという噂もあった。
「きれいな街ですね、お嬢様」
ラミアとアルは渡し船を降り、ちょうどサーシャの町に足を踏み入れたところだった。
多くの人でにぎわう街道は石で舗装され、その脇には街路樹が植えられている。
レンガ造りの建物は整然と立ち並んでおり、町の景観をより洗練されたものにしていた。
「そうね、アル。見た目はきれいだわ」
ラミアの言葉にアルは眉を顰める。
「何か気になることがあるのですか、お嬢様? ……裏組織が幅を利かせてるって話ですか?」
「それが一つ目。もう一つは、この町の町長のことよ」
「町長?」
「そう。希少な品物をオークションに出せるように不正な働きかけをしているとか、裏の団体と繋がっているとか、あまりいい噂は聞かないわ」
「よくありませんね。ですが、私たちには関係ないのではないですか?」
「どうでしょうね。今回の錯誤異物の出品に、噂の彼が関わっていないという確証はないわ」
「……なるほど。言われてみれば、そうですね」
「だから、実際に会ってもみるのよ。会談の予定は入れてあるのでしょ?」
「もちろんです。明日の昼過ぎから、サーシャの町の庁舎で……」
言いかけて、アルの顔つきが険しくなる。
アルたちを監視するような、妙な視線を感じたからだ。
「油断してはいけないようね、アル」
「お嬢様の話にあった、裏の連中かもしれません。私たちのことに感づいたのか、それともよそ者に対してはいつもそうなのか……」
「今は宿へ向かいましょう。トラブルは起きないに越したことはないわ」
「はい、お嬢様」
とはいえ、とアルは思う。
ラミアお嬢様のように豪奢なドレスを着て街を歩くならば、否が応でも人の目を引くものだ……。
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