血も凍る陰謀の巻 その①
ふとアルは、思い出したように服のポケットから髪飾りを取り出した。
「お嬢様、これをお返しします」
「役に立ったかしら?」
「はい。すべてうまくいったと思います。今日のオークションに出品されていたものにも反応していました」
「そう。それはなによりだわ」
アルから受け取った髪飾りをラミアが自分の髪につけるのを、アルはぼんやりと眺めていた。
そこへ、ビノが大きな体を揺すりながら歩いて来た。
「いやはや、オークションはいかがでしたかな、ラミア嬢」
「おかげで、楽しませていただきましたわ」
「そうですか。それは結構。もう少しすれば運ばれてきますからな」
ビノがオークション会場の方へ顔を向けると、ちょうど係員が台車に載せられたガラスケースを運んでくるところだった。
おそらくは、あの中に『神の遺骸』が収納されているのだろう。
しかしアルは、その様子を奇妙に思った。
どこか、芝居がかっているような気がしたのだ。
「ビノさん、さっきは脅すような真似をしてごめんなさい」
「いえ、いいのです。あれは最初からラミア嬢に落札してもらう予定でしたから」
「最初から、わたくしに?」
「ええ。あなたにも共犯になってもらうために」
「何の話ですか、ビノさん?」
「私が申し上げたいのは、今から起こる事に動揺なさらないでいただきたいということです。先に謝っておきましょう。申し訳ない、ラミア嬢」
まるでビノがそう言うのを待っていたように、黒い服装で全身を固めた男たちが現れ、係員の手からガラスケースを奪い、そしてそのまま消え去った。
「あの者たち、何を!」
反射的に男たちを追おうとするアルを、ラミアが制止する。
「待ちなさい、アル。……ビノさん、これもあなたのシナリオ通りということですか?」
目を細め、ラミアはビノに向き直る。
ビノは頷いて、
「そうです。ヌエ一家はオークションに力づくで介入し、オークションそのもののルールを破る。そして、我々はルールを破った彼らを、大義名分のもと始末できる……そういうことですな」
「わたくしが落札しなければ、ヌエ一家が強硬手段にでる必要もなくなる。だからわたくしが落札できるよう図ってくださったのですね? 警備もつけずに錯誤異物を運ばせていたのも、強奪しやすくするためですか?」
「もちろん。警備が薄くなるタイミングさえ、相手には情報を漏らしておいたのです。ですが、ラミア嬢。私どもを恨みなさるなよ。先に私に取引を申し込んできたのはあなたなのですからな」




