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お嬢の美妙な冒険  作者: 安久谷クレージョ
2/27

冒険者ラミアの巻 その②

※※※


 錯誤異物と呼ばれる物体(アイテム)を知っているだろうか。

 世界各地に点在し、手にした者に人智を超えた力を与える物体(アイテム)である。

 そして、錯誤異物を探求する者の中で、政府から特別な認定を受けた者を錯誤異物研究家と呼んだ。


 ドレスの少女――ラミア・フォン・ハルフォードは、錯誤異物研究家の一人であった。


「アル、サーシャの町まであとどのくらいかしら?」


 昼間の人通りの多い街道を歩きながら、ラミアは隣を歩くアルに尋ねた。


「ここを抜ければすぐにマギラ湖が見えるはずですから、そこまでたどり着けばすぐです」


 二人分の旅行鞄を抱えたアルは、頭一つ分高いラミアの顔を見上げ、答える。


「そう。旅路はおおむね予定通りといったところね」

「はい。オークションには十分間に合います」

「錯誤異物『神の遺骸』。……まさか、オークションに出品されるとは思いもしなかったわ」


 ラミアは、自分の銀髪を束ねる髪飾りに触れながら、何かを考えるように目を細める。


 ラミアとアルの二人が、サーシャの町で『神の遺骸』のオークションが行われるという情報を掴んだのは数週間前の話だった。

 それから二人は、屋敷のあるアールハイトの町を飛び出し、馬車や船を乗り継ぎながらサーシャの町へと旅を続けてきた。


「見えてきましたよ、お嬢様。あれがマギラ湖です」


 アルが指さした先には、大きく広がる湖があった。

 まだ昼時の日の光を受けて煌めいている。

 そしてその向こう側には、背の高い建物が立ち並ぶ街並みが見えた。


「ということは、あの町がサーシャの町なのね」

「はい、お嬢様」

「町まではどう行けばいいのかしら」

「湖を渡してくれる船があるそうですよ」


 小さな手帳を見ながらアルが言う。


「そう。道案内は任せるわ」

「はい、お任せください。あちらの方です」


 アルは手帳を懐にしまいこみ、歩き出した。

 しかし、ラミアは立ち止まったまま動かない。

 数歩歩いてラミアの様子に気付いたアルは、慌てたように彼女に駆け寄った。


「どうしました、お嬢様!? 具合が悪いのですか?」

「……いえ、違うわ。髪飾りが反応しているの」

「髪飾りが? あの、錯誤遺物の?」


 見れば、ラミアが髪につけた髪飾りが薄く発光していた。


「そう。この反応は、錯誤遺物が近い証拠だわ」

「髪飾りの力ですか?」

「ええ。私の髪飾りは、所有者に錯誤遺物の在り処を感じさせてくれるの。どうやら情報は間違っていなかったみたいね」


 ラミアが髪飾りに触れると、髪飾りの光は徐々に収まっていった。

 魔法の力で光を抑え込んだのだろう。


「さあ、行きましょう、アル。錯誤遺物が呼んでいるわ」




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