表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢の美妙な冒険  作者: 安久谷クレージョ
18/27

負けられない競りの巻 その②


「ただではすまない……」


 ラミアは何気なしに、ビノの言ったことを繰り返した。


「まあ、そんなことはどうだってよろしい。今はオークションを楽しみましょう。そろそろ始まりますぞ」


 ビノがメインステージの方へ顔を向けると、オーケストラの壮大な音楽と共に舞台の幕が開くところだった。


「……アル」


 アルにだけ聞こえるような声でラミアが言い、アルは彼女に顔を寄せる。


「どうされました、お嬢様」

「疲れてない?」

「いえ、大丈夫です。万事予定通りです」

「そう。少し休んでいてもいいのよ」

「とはいえ、ここで眠るようなことはできませんから」

「……確かに、あなたの言うとおりね」


 司会の男の声が、マイクを通してミアたちのところへ届いて来る。


「あの男は、今日のために呼び寄せたのです。人気のある舞台役者ですからな。ご存知ですかな?」

「ごめんなさい、わたくし、そちらの方には疎くて」

「ほう、そうですか。一度行かれてみてはいかがです。その際のエスコートはぜひ、このビノにお任せください」

「ありがとう。考えておきますわ」


 中年の男が、色目を使って……と、アルは思った。



※※※



 いよいよオークションも終盤というところで、司会の大仰な前振りがあって、舞台袖から巨大なガラスケースが運ばれてきた。

 あの中に、ラミアたちの求めるもの――『神の遺骸』が収められているのだ。


「おお、来ましたぞ、ラミア嬢」

「無事に帰ってきて良かったですわね」

「それはそうです。が、ラミア嬢。落札するに十分な資金はお持ちですかな? 接戦になりますぞ」

「ハルフォード家の資金力を知った上で仰っているのですか、ビノさん?」

「おお、そうでしたな。いや、これは失礼」

「とは言っても、わたくしに使えるような額は微々たるものです。そのときは、ビノさん、お願い致しますわ」

「そのようなこと仰ってはいけませんな、ラミア嬢。高くつきますぞ」

「そうかしら? ヌエ一家はこのオークションに存続を賭けているのでしょう? わたくしが落札できなければ、『神の遺骸』は向こうの手に渡ることになりますわよ」

「といいますと?」


 ラミアはビノに微笑んでみせた。


「錯誤異物が表に出てくるケースは稀ですから、その取引には法外な値段が払われるでしょう。恐らくは、今回のオークションにかかる以上の値段で。それを資金源にヌエ一家が息を吹き返すようなことがあれば、それはビノさんにとっても不都合でなくって?」

「……これは、一本取られましたな。なるほど」


 腕を組んで、ビノは唸る。


「あら、始まりましたわ」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ