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お嬢の美妙な冒険  作者: 安久谷クレージョ
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冒険者ラミアの巻 その①

本編(https://ncode.syosetu.com/n9165fa/)の姉妹作です。



 日が沈もうとする時間帯、暗くなりかけた路地裏に群れる人影があった。


 その集団が荒くれ者の集まりであることは、彼らの薄汚れた服や人相から簡単に見て取れた。

 そして彼らは、一人の少女を取り囲んでいた。

 喪服のような彼女の服は、見方を変えればメイド服のようにも見える。

 その胸元には、十字架のペンダントが下がっていた。


「おい、姉ちゃんよ。俺らに文句があるらしいな」


 下っ端らしい男が少女に凄みを効かせる。

 が、少女は憶する様子もなく男を見上げると、


「はい。その通りです。私は貴方たちに謝罪を要求します」


 少女の凛とした声に、男たちは笑った。


「面白えじゃねえか。お前、状況分かって言ってんのか? お前の命は俺たちが握ってるようなものなんだぜ。謝るのはお前の方なんじゃねえのか。痛い目見たくなけりゃなあ」


 男が懐から取り出したナイフを、少女の前で光らせる。

 少女はその刃先を眺めながら、目を細めた。

 そして、挑発するように片方の口角を上げながら、


「力の差も分かりませんか。そのような(なまくら)で私を殺すことができるとでも?」

「……てめえっ!」


 男のナイフが少女の首筋に振り下ろされる。

 その瞬間、男の体は宙を舞い、そして地面に叩きつけられていた。


「――!」


 周囲の男たちに動揺が広がる。

 同時に、少女が動いた――が。

 ぱっ、と裏路地に明かりがさした。

 かと思えば、少女と男たちの間を、火球が切り裂いていった。

 呆気にとられた男たちは立ち尽くし、少女の視線が火球の発生源を追う。


「……(フレア)


 そこに立っていたのは、ゴシック調の仰々しいドレスに身を包んだ女だった。

 いや、彼女もまた、まだ少女と呼べるような見た目をしていた。

 その姿を見て、メイド服の少女が呟く。


「ミアお嬢様……!」

「……アル、そこまでにしておきなさい。それ以上はわたくしが許しませんわ」


 アルと呼ばれた少女は、ドレスの少女の言葉に対し、明らかに不満げな顔を浮かべた。


「しかしお嬢様、この者たちはお嬢様にぶつかった挙句謝りもせず通り過ぎようとしたのです。許すわけにはいきません!」

「その私がもういいと言っているのです。私の言うことが聞けないの、アル」


 ドレスの少女の透き通った声が路地裏に響いた。

 それは、人を従わせることに慣れた声だった。


「……お嬢様が仰るなら仕方ありません。命拾いしましたね、貴方たち」


 アルは呆然と立ち尽くすままの男たちに刃物のような視線を浴びせながら、歩き出した。

 そしてアルとドレスの少女が立ち去った後、裏路地には男たちと火球によって焼かれた石の壁が残された。


 男の一人が、誰ともなしに言う。


「あいつら、何だったんだ……!?」


 瞬間、男の履いていたズボンが裂け、下にずり落ちた。


 どういう方法を使ったのかは分からない。しかし、アルがあの一瞬で、男のズボンを切り落としたのだろうことは確かだった。


※※※




次回の更新は7月12日、18時頃を予定しています。


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