名前
「樹里。
ボクの名前を、呼んで!
そしたら、いつでも助けに行くから。
だから、早く思い出して!」
その夜、夢の中で、繰り返し聞こえた声。
絶対聞いたことあるはずなのに、
どうしても思い出せない。
顔は…、きっと王子様みたいな、きれいな顔。
朝から夢に出てきた、あの王子様みたいな。
ホント、あの人、超タイプだったなぁ。
まるで、子供の頃、夢見てたような、
私の想像の物語の中の、王子様みたい…。
そこまで考えて、樹里は飛び起きた。
そしてそのまま、物置と化した勉強机の、
一番下の引き出しをひっくり返す。
「確か、この辺にしまったはずなんだけど…」
もう何年も、開けてもいなかったから、
何がどこに入っているのやら。
とにかく一番下まで手を突っ込んで、
混ぜ返してみた。
「あ!あった!」
昔、はまっていたキャラクターのノートに、
幼い文字で書いてある。
「『小説』だって」
表題だけで十分恥かしいのに、
中身のことを考えると、開くのが怖くなってくる。
思い切って一枚ずつページをめくって行くと、
登場人物の相関図らしきものが出てきた。
「『レオン』だ!」
そうだ、あの頃好きだった、
ハリウッドの俳優さんから取ったんだった。
子供だったとはいえ、単純すぎてなんか恥ずかしい。
あの頃はまだ幼くて、恋に恋していた私は、
愛情表現もほっぺにキスが限界で。
甘いセリフの1つ書くのにも、頭を悩ませていたものだった。
「私が大人になるまで待っててね」
小学生だった樹里は、そんな感じのことを彼に言ったような。




