心配
あれからどれくらい時間がたったのか、
ようやく樹里はアナスタシアから解放された。
窓の外はいつのまにか、すっかり暗くなっていて、
疲れと空腹で樹里はソファに倒れ込んだ。
「おつかれ」
いつのまにかいなくなっていたレオンが、
戻ってきて樹里の隣りに腰をおろした。
樹里の頭にそっと手を乗せると、
自分の肩にもたれるように促す。
「あの人、言い出したらきかないから」
優しく髪を梳くレオンの指に、樹里はふふっと微笑みだけでこたえる。
ウェディングドレスに始まり、
一体何着のドレスを試着させられたのか。
もちろんそこは魔法の世界。
いちいち脱ぎ着する必要はなく、
鏡の中の樹里だけが、どんどん着せ替えられていった。
数が多すぎて、どれがいいかなんて聞かれても、
答えられず、好みじゃないモノだけなんとか伝えた。
そもそも、結婚するなんて言ってないのに!
とは、さすがに言えなかった。
とてもじゃないけど言い出せる雰囲気ではなくて。
「疲れたけど、楽しかったよ」
申し訳なさそうなレオンを慰めようとかけた言葉は、
樹里の本心でもあった。
一応女の子だし、膨大な量のドレスを選びながら、
母と買い物するような楽しさを、味わっている自分がいた。
たわいない話をしながら、その中に色々と収穫もあったし。
レオンは今までの苦労とか、苦悩とか、
何も教えてくれないから、
樹里を迎えにくるために、魔法の技術を磨き、
その研究に人生のすべてを費やしてきたこと。
心ない噂や、誹謗中傷にも耐えてきたこと。
知れてよかった。
できるなら、レオンの口から話してほしかったなぁ。
どうして話してくれないんだろう?
このままじゃ、自分は流されているだけ。
そう感じていた樹里は、腹をくくることにした。
レオンの本音を聞きださないことには、
話は先に進まないのだ。




