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異世界が迎えに来る  作者: chil
32/35

母親

「こんな日が来るなんて!

祈り続けていれば、願いはかなうのね!

神様ってホントにいらっしゃるんだわ!」


抱き着かれたままで、その表情まではわからなかったが、

感極まったアナスタシアの声は震えていて、たぶん、泣いていた。


「うちの愚息もやるときはやるのねー。

樹里ちゃん連れて来ちゃうなんて、お手柄だわ!」


「は、はは」


アナスタシアの勢いに圧倒され、乾いた笑いしか出てこない樹里。


「レオンが結婚しないって言い出した時は、どうなることかと思ったけれど、

結局、これでよかったのよね。

離れていたのも、二人に課せられた試練だったんだわ!」


興奮冷めやらぬ様子のアナスタシアは、

全てを都合のいいように解釈しているように見えた。

それは樹里が責められないための配慮のようにも感じられ、

レオンも樹里も、あえて反論や訂正はしなかった。


「形だけでいいからって言ってるのに、

政略結婚まで頑なに拒否するんだもの。

おかげで変な噂立てられて、それを否定しようともしないのよ!

もう、この子に普通の幸せはありえないんだって、すっかり諦めていたの」



それを言われると、樹里も胸が痛い。

本当なら、母親の立場からすれば、

樹里を憎んでいたっておかしくはない。

アレクみたいに文句の一つも言いたいんじゃ…?

そんな樹里の心配は、杞憂に過ぎなかったと、

レオンに聞かされるのはもう少し後のことで、

この時の樹里は、もう少しで土下座してしまいそうなほどに、

いたたまれない気持ちでいた。


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