好きな人の好きな人
そんなことがあって迎えた朝、
顔面に降り注ぐ朝日をものともせずに、
樹里は眠り続けていた。
リンに何度か名前を呼ばれたことに気づいてはいるが、
起き上がろうとしても起き上がれずに、
また深い眠りへと沈んでいく。
そんな寝ぼけた意識の中で、
もう若くないなあ、と少し凹む樹里。
たまっていた疲れが出ただけだと思いたい。
寝かせて、寝たら治るから、これくらい。
「お願い、あと、10分だけ…」
呻くようにそれだけ言って、羽布団の中へと潜りこんでいく。
「樹里様、起きて下さい!
そろそろレオン様が、」
樹里の肩に手をかけようとしたリンの手首を、
大きな手が、がしっと掴んで制止した。
リンがはっとして振り向くと、そこにはレオンが立っていた。
「レオン様!」
「寝かせてやって」
目を見開いて驚くリンをスルーし、樹里の頭元に膝間づいて、
心配そうに顔を覗きこんでいる。
レオンは自分の掌をそっと樹里の額に乗せた。
「熱いな…」
高熱、というわけではなさそうだが、額に貼りついた前髪をよけると、
じっとりと汗がにじんでいる。
よく見ると、息もあがっていて苦しそうだ。
「かわいそうに」
そう呟くと、レオンは自分の額を樹里のと合わせ、目を閉じる。
優しい光が樹里のカラダを包んだと思ったら、途端に顔色がよくなった。
すーすーと立てる寝息も穏やかなものに変わる。
レオンは嬉しそうに目を細めて、樹里の寝顔を飽きることなく見つめていた。
「レオン様」
ホントに好きなんですね。
傍らで一部始終を見ていたリンは、
その言葉をグッと飲み込んで、そっとドアを閉めた。




