一夜明けて~樹里~
なかなか寝付けずに、ようやく睡魔がやってきたのは
外が白み始めた頃だった。
考えたって仕方ないと言われても、
考えずにいられるわけもなく。
考え過ぎて危うくお風呂でおぼれそうになった。
せっかくの豪華な夕食も、きれいなドレスも、
お姫様のようなこの部屋も、なかったことにしてしまうような、
ショッキングな出来事。
レオンとアレクがあんな大声で喧嘩するなんて!
その喧嘩の原因が、
樹里自身にあることが、一番の問題なんだけれど。
時はゆうべのディナーの後まで遡る。
すっかり打ち解けたアレクの妻、エミリアに誘われて、
お茶をいただきながら、女子トークに花を咲かせていた。
二人のなれそめなんかを聞き出しては、
照れるのを冷やかして楽しんでいたところまではよかったのだけれど。
途中から雲行きが怪しくなってきて。
「創造主様にお会いできる日が来るなんて、
わたくし、今でも夢のようですわ。」
「創造主って…。
その呼び方はちょっと」
どこぞの新興宗教の教祖様みたいでこわくなる。
樹里の戸惑いはそのまま顔に出ていたようで、
エミリアは慌てて謝罪した。
「失礼しました。
でも、なんとお呼びしたらいいものかと…。
さすがに、お義姉様とお呼びするのは、気が早いでしょうか?」
「お義姉様!?」
「レオン様とご結婚となれば、
わたくしにとってはお義姉様ですわ。
まあ、なんて幸せなんでしょう!」
「いやいや、それはさすがに!」
「いいえ!呼ばせてくださいませ!
ああ!
お二人のお子が、本当に楽しみですわ!
どれほど強大な魔力を受け継いで、産まれてくるのやら。
これでこの国も安泰ですわね。
今から待ち遠しいですわ」
「あの、気が早いよ?色々と」
「ところで、お義姉様!
お義姉様はレオン様の初恋のお相手、運命の方だとお聞きしました。
なんてロマンチックなお話なの!
ぜひ、詳しく、お聞かせくださいませ!」
「運命って、そんな、ねぇ、あはは、はは…」
乾いた笑いを浮かべつつ、後ずさりする。
もうちょっと色々聞いてみたかったけど、
今度はこっちが根掘り葉掘り聞かれそうな雰囲気。
そうなる前に、お暇するとしよう。




