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懐かしい声
「樹里!起きなさーい!
遅刻するわよー!」
階段の下からお母さんの声がする。
もう少し、いいよね。
だって、まだ、たぶん、これが1回目…。
だから、あと、2回までは大丈夫。
朝ごはん諦めて、ダッシュすれば、じゅうぶん間に合う。
「樹里、樹里」
ああ、またこの声だ。
欲求不満なのかなぁ。
最近、同じ夢ばかり見る。
どこかで聞いたことのある心地よい低音が、
樹里を極上の二度寝へと誘う。
「樹里!」
名前を呼ぶ声が少しきつくなる。
肩を揺すられて、不思議に思った。
あれ?珍しいな。
お母さんが部屋まで上がって来るなんて。
今日って、早く行かないといけないんだっけ?
寝ぼけながら頭を回転させていると、
耳元でささやく声が。
「樹里」
それは吐息と共に、
鼓膜に直接届いた。
頭に?マークがいくつも浮かぶ。
お母さん、…じゃない!
反射的に、枕を盾にして、ベッドの端へと飛びのいた。
主人公の名前は樹里です。




