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初めての
本当に魔法の世界に来たんだ。
簡単には信じがたいことでも、
目の前でこうも次々に起こると、
人って慣れてくるものなんだな。
なんて考えながら、
ぼーっと窓辺にたたずんでいた。
「あーあ。
ひっどいなあ、樹里。
兄上のこと泣かせたの?」
声がした方を振りかえると、
アレクが、大理石の柱に凭れて、
ふんぞりかえっていた。
「アレク!人聞き悪いこと言わないでよ!」
「いやぁ、誰かさんがバカみたいに何重も結界張るもんだから、
入るのに時間かかっちゃってね。
こんだけ厳重ってことは、
ファーストキスくらい、すませたかと思ったんだけど、
…まだみたいだね?」
ファースト、キス?
それってすなわち、人生初の、唯一無二の、
初めてのあれのこと、だよね?
「変な冗談言わないで。
全然、おもしろくないし」
言い返した樹里に向かって、
アレクは何も言わずに、
やれやれと両手を上げて呆れた顔をした。
え、
そんなわけないじゃん。
あの美貌だよ?
女子がほっとくわけないもん。
そうでしょ?
いくら言い募っても、アレクの表情は変わらない。




