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記憶のカケラ
「迎えに行くのが遅くなってごめんね」
レオンは樹里の手をとって、指先に恭しくキスを落とした。
まるで壊れものを扱うみたいに、そっと、優しく。
あれ?
前にもこんなこと、あったような…。
目の前のレオンの、不安げに揺れる瞳が、
幼い日のレオンと重なって、
記憶を呼び覚ましていく。
ああ、あれは確か、
お城のバラ園をレオンが案内してくれた日。
二人で噴水の前のベンチに腰かけていたら、
急に真剣な顔したレオンが、
大事な話があるって言い出して…。
「大人になったら、迎えに行くから!」
そう言ってくれたんだった。
「思い出してくれた?」
下から覗き込んでくるレオンに、
私は取れそうなくらい何度も首を縦に振った。
「よかったぁ!」
がばっと正面から抱き着かれて、
その胸の中にぎゅーっと閉じ込められてしまう。
「ちょっと、レオン、苦しー」
胸をとんとん叩いても、
その締め付けはいっこうに緩まない。
こんなに喜んでくれて、思い出せてよかった。
よかったけど!
だからって、結婚なんてできるわけないじゃない!
何歳の時の話だと思ってんのー!




