突然のプロポーズ
色とりどりのスイーツが運ばれてきて、
紅茶の香りが漂い始めると、レオンはリンを下がらせた。
「樹里は、チョコレートケーキ、好きだったよね?」
嬉しそうに笑って、目の前に置いたものの、
「あ、ごめん。もう子供じゃないのに…」
困ったように人差し指で鼻の先を掻く。
あ、これ、照れた時にするレオンのクセだ!
まだ幼かったレオンの面影がよぎり、胸の奥が苦しくなる。
「ありがとう。
今でも好きだよ、チョコレートケーキ」
それに気づかないふりをして、
大きめに切った一口を頬張った。
食べてる場合じゃないのはわかってるけど、
何かしてないと、緊張でどうにかなりそうで。
「最初に、謝らせて。
樹里、
キミを騙すつもりはなかったんだけど」
「それって、どういう意味?」
いきなり切り出したレオンの表情からして、
ただごとではないことだけはわかった。
平静を装ってみても、声の震えまではかくせなかった。
「ボクの命に代えても、樹里を守るよ。
それだけは信じてほしい」
真剣な眼差しを向けられるほどに、
私の胸の中は不安が渦巻いて行く。
そこまで深刻なことなんだって、
イヤでもわかってしまうから。
「しばらくの間、向こうの世界へは帰れない」
「しばらくって…?」
「それは、…樹里、次第なんだけど」
「私?」
「いきなり、こんなこと言われても、困るよね。
樹里には樹里の、生活があるんだし。
本当に身勝手だと思ってる。
ボクを恨んでくれていいから」
「そんなんじゃわからないよ!
理由を説明して!
じゃないと私、」
「ボクと結婚してほしいんだ!」
思わず立ち上がった私は、そのまま腰をストンと落とした。
何、言ってるの?
なんかわかんないけど、すっごく誤魔化されてる気がする。
肝心なとこ、まるごとすっ飛ばされてる気がする。
頭の中では赤色信号が点滅してるのに、
人生初のド直球プロポーズに、ちょっと喜んでる自分がいて。
いやいや、われながら、チョロすぎじゃない?
絶対にダメなはずなのに、即断できないのはどうして?




