本題
豪華な装飾が施された重々しいドアを開けると、
恭しく頭を下げる、幼い少女が立っていた。
メイドさん、だよね?
作り物みたいにかわいくて、ついまじまじと見てしまう。
「おかえりなさいませ」
「ただいま、リン」
リンちゃんって言うのかぁ。
無表情を装ってはいるが、名前を呼ばれたその一瞬だけ、
口角が上がるのを、樹里は見逃さなかった。
ご主人様、大好きなんだねぇ。
反応を隠し切れてないのがまた、かわいすぎる。
「お茶を頼むよ」
「かしこまりました」
おじぎして立ち去るまで、一度も彼女は樹里の方を見なかった。
残念だけど、嫌われたかな。
理由はわからないけど、まあよくは思われていないよね。
当たり前といえば、当たり前かぁ。
自分の慕うご主人様が、いきなり異世界の女連れて帰ってきたら、
気分いいわけないもんね。
「そんなとこ突っ立ってないで、座れば?」
手招きされておずおずと足を進める。
「それとも、先に着替えたい?
そのカッコ、ちょっと目立つしね」
そう言われて初めて、
自分がもこもこパジャマに身を包んでいることを思い出した。
こんな格好でウロウロしてたなんて!
色んなことがありすぎて、服装なんて気にも留めてなかった。
「どうしよ、恥ずかしすぎるよぉ…」
「なんで?かわいいよ?すっごく似合ってる」
いや、似合う似合わないじゃないでしょ、この場合。
TPOの問題だから。
それでも、褒められてまんざらでもない、なんて。
さっきとは違う理由で、顔がかあっと熱くなるのを感じた。
イケメン設定も考えものだ。
なんてことない社交辞令も、必要以上に意識させられる。
「樹里に似合いそうなドレス、
色々用意してみたんだけどね、
樹里はどういうのが好き?
昔はピンクとか、フリフリなのが好きだっだでしょ?
でも、案外、黒とか似合うんじゃないかと、」
「ねぇ!
話、あるんじゃないの?」
「だよね」
ドレスは確かに魅力的だけど、
さっきのアレクの意味深なセリフが、
どうしても気になった。
穏やかな性格のレオンが、
声を荒げたりしたから、余計に。
まずはそれを片づけないと、ゆっくり試着なんてしてられない。




