レオンの部屋
「はい、とうちゃーく!」
「ちょっとぉぉ!いきなりは、ヤメテよね!」
この、瞬間移動酔い?とでもいえばいいのかな。
全然、慣れない。
ふらふらしながら、レオンに抗議してみても、
いまいち伝わってないみたいで。
「ごめん、ごめん。
大人げなかったね。
目の前に樹里がいるって思うと嬉しくって、
つい、はしゃいじゃった」
うぅ、ズルイ。
そんなかわいく謝られたら、怒る気も失せるよ。
「こんなに簡単に、どこでも行けたら楽しいだろうね?」
軽い気持ちでそう聞いたら、
意外な答えが帰って来た。
「どこでも、ってわけでもないんだけどね」
「そうなの?」
「ああ、いや。正確にいうと…、」
その先に続く言葉を聞く前に、
「兄上が言えないなら、オレが言いますよ」
突然、目の前に現れたアレクは、
不敵な笑みを浮かべて、レオンと私の間に割ってはいった。
どうやら馬は置いてきたらしい。
「どういうこと?」
「聞きたい?」
「お前は、黙ってろ!
樹里にはオレから話すから」
「ふーん。
まあ、どうでもいいけどね。
せいぜい頑張ってください」
アレクがその場を去った後、
重たい沈黙を破ったのは、
さっきまでのレオンに戻った、明るい声だった。
「城の中、案内するよ」
そう言って差し出された手を、
掴むのを躊躇していると、
レオンは困ったように頭を掻いた。
「じゃあ、オレの部屋で、お茶でもどう?」
話がある、とは言わなかったけど、
そういうことなんだろう。
樹里は何も言わずに、そっとその指先を掴んだ。
「ありがとう」
歩き始めた背中越しに、確かにそう聞こえた。




