アレク
「どう?思い出した?」
「ごめん、ちょっと、展開が急すぎて、
着いて行けない…」
「いや、仕方ないよ」
レオンはそう言ってくれたけど、
内心では、
どこかガッカリしているように見えた。
「自分で書いといてなんなんだけど、
もう10年以上も前のことだし、記憶が曖昧っていうか…。
でも!
あの、もうちょっと色々見たら、
思い出せるかもしれないし!ね?」
何の確証もない言葉だったけど、
言わずにはいられなかった。
10年以上も経って、わざわざ会いに来てくれたのには、
きっと何か事情があるからで。
放っておいた後ろめたさもあって、
自分にできることなら、何か役に立ちたかった。
「ゴメン、樹里を巻き込んで。
でも、これしか方法が、」
「兄上!困りますよ!
帰って来たなら、さっさとご報告いただかねば!
樹里が一緒なら、なおさらでしょう」
レオンの言葉を遮ったのは、馬に跨った若い男だった。
腰に剣をぶらさげて、誰よりも派手な装飾の衣装を身につけている。
兄上、ってことはレオンの弟?
弟なんていたっけなあ?
「樹里が知ってるのは5歳の時のアレクだから、
わからないのも無理ないよ」
「アレク…?
アレクって、あの?
あのアレク?
いつもレオンの後ろばっかり追いかけて、
走り回ってた!」
「そうそう」
「わあー、懐かしい!
こんなに大きくなってるなんて!
かわいかったんだよねー!
今もかわいいけど!」
興奮して歩み寄るも、
アレクはちっとも嬉しそうじゃなかった。
馬からおりることもなく、
不機嫌そうな眼差しで、二人を見下ろしていた。




