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プロローグ
どうして途中でやめてしまったのか、
思い出せないくらい曖昧な記憶の中にそれはあった。
いわゆる中二病まっただ中の、
できれば二度と思い出したくないような自分が、
毎晩、せっせと書いていた異世界の物語。
現実逃避と言われようと、私は夢の世界の中でだけ、
本当の自分でいられた。
いっそ、そちら側へ逃げ込みたいくらいに、夢中だった。
今となっては、その原稿も、どこあるのかもわからないけれど。
ある日、突然、憑き物が落ちたように、
私は中二病を卒業した。
無事、社会人となった今、それも懐かしい思い出。
いや、封印したい黒歴史というべきか。
とにかく、思い出しもしなかった。
目の前に彼、いや、彼らが、現れるまでは。
それは、些細な変化だったように思う。
最初は、気のせい、くらいにしか思っていなかったし。
本当は、もっと前から、変わり始めていたのかもしれないけれど、
あの日まで、私は気づきもしなかった。




