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ロマン・ストーリー 剣に導かれし者たち  作者: 灰庭論
第二章 戦士の資質編
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第三十六話(80) 三人の王

 ユリスがミクロスに念を押す。


「それはヴォルベ本人で間違いないのか? 彼はまだ新兵の年齢に達していないのだから、彼の名で州都札が発行されているというのはおかしいじゃないか。名前を利用されて、札が偽造された可能性もあるんじゃないのか?」


 ミクロスが答える。


「オザン村の宿屋の主人が『赤紫の髪色をした少年だった』と証言しているので間違いないかと思われます」


 エムル・テレスコ州都長官が発言する。


「殿下、それはおそらく倅で間違いないでしょう。昨年の夏に峠越えの演習に参加したいというので州都札を発行したのを憶えております。しかし信書を持たせた事実はございません。それが事実ならば、倅は罪を犯したということになりますな」


 ユリスは落ち着いている。


「まだ本人と決まったわけではないので慎重に対応しようじゃないか」


 そこでサッジ・タリアス国防副長官が口を挟む。


「しかし殿下、ご承知のことと思われますが、捜査本部が二つに分かれております故、捜査主任のモノス・セロスがこちらと同じように考えるとは限りませんぞ。関与の疑いのある殿下には手を出せませんが、テレスコ長官が相手では躊躇する理由はありませんからな」


 州都長官が居ずまいを正す。


「捜査を拒むつもりはございません。捜査協力も惜しまないつもりであります。もしも倅が王宮の襲撃に関与しているならば、相応の罰を受けねばなりませんし、小官も職を辞す所存であります。特別な処置は望んではおりませぬ」


 フィンス王太子が発言する。


「ヴォルベが王宮の襲撃に関与しているなんて、まず有り得ないことです。なぜなら、所在が不明になるまで、ずっと僕と行動を共にしてきましたからね。それにヴォルベは僕に隠し事をするような男ではありません。それは、この私が保証します」


 州都長官が謝辞を述べる。


「心強いお言葉、感謝いたします」


 ユリスがミクロスに指示する。


「こちらの捜査方針は、ヴォルベが事件に関与している疑いがあるという見方ではなく、犯行グループに連れ去られて利用された可能性が高いという捉え方でいこう。実際にその可能性も考えられるわけだからね。そうすればヴォルベも被害者の一人となり、テレスコ長官も被害者家族となるわけだから、参考人であっても容疑者にはならないわけだ。とにかくヴォルベの身の安全を優先するんだ。モノス・セロスにも私の口から直接伝えた方が良さそうだね」


 僕はフィンス王太子ほどヴォルベ・テレスコを信用する気にはなれなかった。なにしろドラコやランバが事件に関与していることが決定的となったからである。


「次の議題に移ろうか」


 ユリスが話を変える。


「エムル、他に話し合っておくことはないかな?」


 州都長官が答える。


「最も重要な問題がございます。それは七政院の扱いでございましょう」


 そこで一息つく。


「その影響力の大きさ故、王族の後継者問題まで、この部屋にある七つの椅子で決められておりました。王族の少子化を招いたのは、ここに座っていた者たちだったといっても過言ではないのです。しかしながら、七つの名家がそれぞれ七つの地域を平定してきたのは紛れもない事実でございます。名家の者たちは皆、我々が生を受ける前からフェニックス家に忠誠を誓ってきたという歴史も忘れてはなりません。七政院の名家が治めてきた土地に生まれてきた者は、国王陛下と同じか、それ以上に領主を崇拝すると聞いたことがございましょう? これは王都に生を受けた者には理解しがたい感情かもしれませぬ」


 どうやら州都長官は年少のフィンス王太子に分かりやすく説明しているようだ。


「それ故、名家の扱いには格別の配慮を要するのでございます。名家をぞんざいに扱えば、土地の者は己が侮辱を受けたと感じますし、かといって優遇すれば、他の地域の者たちへの負担が大きくなります。ここで頭を痛めるのは、優遇が必ずしも悪しきことではないということでございましょうな。七政院が治める領土は治安が良く、確実な税収をもたらすため、国の安定を図るためには不可欠なのでございます。その土地の風土を熟知しており、先祖から受け継いだ知恵と技術を守り、何よりも土地への愛着が揺るぎない信頼へと繋がっておりますので、それがそのまま国政を担う王家への忠誠へと帰納するわけでございます。それ故、名家の解体などというのは現実的な選択にはならぬのです」


 そこで国防副長官が口を挟む。


「しかし、神祇官であるダリス・ハドラの事件への関与が裏付けられれば、処分だけでは済まされないでしょうな。なにしろ国王の後継者を暗殺したのですから、一族を反逆罪で処刑せねばなりますまい。もっとも、一族ごと姿を消したので見つけるのが先決ですがな」


 ユリスが州都長官に訊ねる。


「ハドラ領に関しては、どのようにすべきだと考える?」


 州都長官が熟考する。


「さようでございますね。ハドラ領といえば、カグマン州とハクタ州に跨る最重要領地でございます。国を分割すれば、オフィウ王妃陛下は必ずや領有権を主張してくることでしょう。しかし、絶対にハドラ領まで分割してはなりませぬ。かの地は製紙工場や防具工場など、国の重要な軍需工場が集中しております故、何があっても手放してはいけないのでございます。土地や建物だけではなく、引き続き技術者の確保を優先せねばなりません。技術者の中にはハドラ家の親類縁者もおりますが、守秘義務契約を交わしている重要な仕事を任せております故、寛大なご処置で保護せねば、貴重な人材の流出は避けられぬと申し上げておきます」


 国防副長官が付け加える。


「防衛ラインを見直すならば、軍需工場の移転も考えねばなりますまい。反対する者や国益に反する行為を犯す者がいれば、技術者といえども厳しい処分を検討せねばなりませんぞ。ハクタが味方であり続ける保障はございませんからな」


 ユリスが深々と頷く。


「前線基地として機能させる方が現実的なようだな。ハドラ家の代わりを見つけるのではなく、王宮直轄の地区として軍隊を配備させよう。演習地の変更も含めて、そこは副長官にお任せします」


 国防副長官が頷く。


「了解いたしました」


 ユリスが訊ねる。


「他の官僚についてはどうだ? 希望通り任命して良いものだろうか?」


 州都長官が首を振る。


「そちらに関しては、できるだけ決断を先延ばしにされた方がよいかと存じます。十日ほど調査をしておりましたが、オフィウ王妃陛下と繋がりの強い者たちが後任として選ばれていることが分かりました。半数以上の四名が、マクス王子をフェニックス家の子息として認めるように強く働きかけた者たちだったのです。当時の議会記録に証拠を提出しているので名前が記載されておりました。しかしその証拠というのも、オルバ王の直筆の書簡や、産婦の手紙など、ご懐妊した記録と呼べるものではないのです。どれもマクス王子が実子であることを証明したものではございません。荘園地に籠られた空白の十年は、依然として空白のままなのです」


 僕はオルバ王の亡霊を見たばかりなので、マクス王子が本当の子孫だと確信するに至ったが、他の人たちは見ていないので疑っても仕方がないと思う。それも証拠と呼べるものではないので黙っていることしかできなかった。


「しかしフィンスが即位すれば、まず手始めに任命を行わなければいけないだろうな」


 ユリスが喋りながら考える。


「そうなった場合、何か対抗し得る手段はないだろうか?」


 州都長官が答える。


「各名家も決して一枚岩というわけではございません。それぞれの土地にそれぞれの政争がございます。それ故、王家の介入を防ぐために早期の任命を急がれているのではないでしょうか? ならば積極的に介入すれば良いのです。あちらにとって都合が悪いことがあるのならば、それこそが見直すべき改善点というわけでございます。名家の解体は考えられなくとも、構造改革まで反対する必要はありませんからな。具体的に申し上げますと、これまで内々に行われていた候補者選挙を、王宮内で行うだけでも変化が起こるかと思われます。対立候補を呼び寄せて、その中から陛下が任命すれば、第二のダリス・ハドラに怯える心配も軽減されるのではありませんか?」


 ユリスが力強く頷く。


「よし、私とフィンスで候補者を直接吟味しようじゃないか」


 その言葉を受けて、フィンス王太子も頷いた。


「引き続き、各候補者の情報を集めてくれ」


 ユリスの指示に、州都長官が返事をする。


「承知いたしました」


 そこで国防副長官が訊ねる。


「殿下、空席となった神祇官のポストはいかがされるおつもりですかな? 最重要ポストでございますし、いつまでも空席というわけにもいきますまい。最優先事項といっても過言ではありませんぞ」


 ユリスが改まる。


「そのことだが、サッジ、貴官が引き受けてはくれないだろうか?」


 国防副長官が驚いたまま固まってしまった。


「貴官ほど信仰心が篤い者はいないじゃないか。それにサッジが神祇官として国葬を執り行ってくれれば、亡くなった伯父上も喜ばれるだろうからね。反発もあるだろうが、信頼して任せられる者はサッジしかいないんだ。引き受けてくれるね?」


 老兵の目がウルウルしている。


「謹んでお受けいたします」


 ユリスが微笑む。


「そしてエムル、貴官には王都の首都長官の職を引き受けてほしい。ハクタに留まらせた方がいいのかもしれないが、フィンスを守るには側にいた方がいいだろう。キンチ将軍はそのままハクタ国に従属するだろうから、サッジがカグマン国の国防長官を暫定的に兼務することになる。二人が揃えばカグマン国は安泰だ。引き受けてくれるね?」


 州都長官が力強く頷く。


「承知いたしました。しかし……」


 そこで言い淀んだ。


「どうした? エムル、言ってくれ」


 州都長官が意を決する。


「此度の三国分割で最も懸念すべきは、カイドル国の独立ではございませんか? 今までは統一国家としてフェニックス家が後ろ盾となっておりましたが、これからはこれまでのやり方が通るとは限りませぬ。いえ、これは殿下の能力に疑いを持っているわけではございません。そこは誤解なきよう、お願い申し上げます。小官が疑っているのは、カイドル州にある荘園の領主らのことでございます。ここからは礼を失した発言となりますが、続けてもよろしいでしょうか?」


 ユリスが頷く。


「忌憚のない意見を聞かせてくれ」


 州都長官が続ける。


「承知いたしました。カイドル州の荘園の領主らは、カグマン州やハクタ州の領主たちとは異なり、戦後になって住み着いた者ばかりでございます。その中には、王家の縁者ならまだしも、七政院の遠縁と婚姻を結んだだけの新興勢力もございます。その者らが、これまで通り殿下に忠誠を誓うとは限らないと思われるのです。考え得る最悪の事態は、オーヒン国への主権譲渡でございますな。土地を守る兵士を派遣できなければ、奪われることもあるやもしれません」


 国防副長官が後を継ぐように付け加える。


「うむ。これまでのようにカグマン国から派兵するという手もございますが、その場合も支援がなければ孤立を招きますからな。武器や食料の補給がない状態でゲリラ戦が続けば、持ち堪えられるかも保証いたしかねます。そうなれば、カイドルの州都から離れた地域の荘園ならば、当然のようにオーヒン国に対して支援を要請することになりましょう。それでその対価として税収をそのまま持っていかれることとなり、結局は名目だけの主権地域となりかねないのでございます。オーヒンのならず者が殿下の領土である荘園を荒らし、それをオーヒンの兵士が取り締まり、その褒賞として作物を差し出さねばならないのですから、これほどバカげた話はございません。すでにオーヒン国の役人と懇意にしている領主もございますからな。どんな手を使って殿下を困らせてくるかも分かりませぬ。元々儲けのことしか考えない者が多い地域でございます故、くれぐれも気を付けていただきますよう、切に願う次第でございます」


 ユリスが頷く。


「留意しよう」


 州都長官が説明する。


「オーヒン国はこれまでカグマン国に貢租を納めておりましたが、三国分割となれば条約の見直しも当然避けられないこととなりましょう。新しい条約はもちろんでございますが、ハクタ国が勝手にオーヒン国と条約を結ぶことのないよう牽制しておく必要もございます。オーヒン国の負担金が均等割りされるかどうかも、今後オフィウ王妃陛下と議論を詰めていかなければなりますまい。殿下が治められるカイドル国は国境警備での負担が大きくなりますが、それは島の安全保障の問題でもあります故、そちらも均等に分担した方がよいかと思われます」


 ユリスが頷く。


「安全保障に関する協定を最優先で作成してくれ。オーヒン国との条約は後で構わない」


 州都長官が答える。


「承知しました」


 国防副長官が眉を顰める。


「差し出がましいことは重々承知しておりますが、殿下にはオーヒン国を侮ることなきよう強く心に留めていただきたいのです。彼奴らは強かですからな。己にとっての一番の利が何であるかを見定め、態度を変えてくるということも考えられます故、三国で足並みを揃えて交渉に当たる必要がございましょう。分割されたからといって、間違っても、オーヒン国の者たちに我ら三国を対等な関係と思わせてはならぬのです。野望どころか、夢さえも抱かせてはなりませぬ。くれぐれも毅然とした態度で臨まれるよう、お願い申し上げます」


 ユリスが強く頷く。


「妥協も譲歩もせぬ。あるのは服従させるのみだ。心配はいらない」


 州都長官がほっとする。


「そのお言葉を聞けて、安心いたしました」


 ユリスが訊ねる。


「エムル、他に話し合っておくことはないか?」


 州都長官が答える。


「そうでございますね。三国の後継者問題も明確にしておいた方がよいかと存じます」


 国防副長官が言葉を継ぐ。


「フィン正妃陛下、並びにフィンス王太子殿下のお命は、このサッジの命に代えてでもお守りいたしますが、カイドル国へ帰還される殿下のお命を同時にお守りすることは、この老いぼれには、どうしてもお約束できませぬ。まだ王宮を襲撃した者らを捕えておりませぬ故、危機が去ったわけではございませんからな。いつ何時、狙われるかも分かりませんぞ。三国分割も仕組まれたもので、後継者の不在を招くのが目的やもしれませぬ。どうか、その点ご留意くださいませ」


 ユリスが了解する。


「そうだな。私の身に万一のことがあったとしても、国王の座に就けるのは王家の者のみなのだから、フィンスにお願いするとしよう。そこは妥協するつもりはない。その場合はこれまでのように、州都長官を据えて統治する形になるだろう」


 事件関与が裏付けられた今でも、ドラコがユリスの命まで狙うとは考えられなかった。


「まだまだ話し合わなければならないことがあるが、今日はこれまでとしておこう」


 ユリスが一息ついた。


「ユリス、私からも一つお尋ねしてもよろしいでしょうか?」


 そこでフィンス王太子が声を掛けた。


「ああ、もちろんだとも」


 フィンスが質問する。


「私が何もしなくても、ユリスさえいれば、こうして物事が決まっていきますが、では、私が国王になったら、何をすればいいのでしょうか? 一人になった時のことを想像すると、とても不安に感じてしまうのです。そんな私に王の資質はあるのでしょうか?」


 ユリスが何度も頷く。


「フィンス、その気持ちが大切なんだ。不安や心配といったネガティブな感情が防衛意識を高めるのだからね。決して自分のことを臆病者だと思ってはいけないよ。揶揄する者や、挑発する者もいるだろうが、それで本陣をお留守にするのは相手の思うつぼなんだからね。それと、何でも自分一人でやろうとしてはいけないんだ。いや、これは私自身も気をつけねばならないことなんだが、君の周りには優秀な者が揃っているのだから、任せてしまうのが君の仕事なんだよ」


 自分に言い聞かせているようにも聞こえる。


「ただし、大事な仕事を任せる相手を選ぶのは、君の判断力に懸かっている。七政院の任命だが、さっきは一緒に吟味すると言ったろう? でも、最終的に決めるのはフィンス、君一人なんだ。君には最後に決断するという大きな仕事がある。その決断の決め手となる判断材料を揃えるのが、私やサッジやエムルの話し合いというわけさ。つまり、私たちは君の最後の決断のために議論を詰めているということなんだ。意にそぐわないこともあるだろうし、通したい意見が反対されることもあるだろう。否定ばかりされると遠ざけたくなるかもしれないが、それでも、信頼できる人材は得難いものであることを忘れてはいけないよ」


 その言葉は、まさにユリスの生き方そのものだ。


「フィンス、いいかい? 初めから偉大な王になろうと意気込む必要はないんだ。現在は君のお父上が即位された時のような戦乱の世ではないのだからね。時代が変われば求められる政策も変わるものさ。戦時中ならば完全なる勝利、もしくは速やかなる休戦が望まれるだろうが、今は戦争がない時代なのだから、戦争を起こさず回避させることが重要なんだ。それは争い事の芽を摘み、不利益にならないように根回しするということだ。善政や悪政という言葉があるが、現実的に考えて、誰が望んで悪政など行うものか。贅を求め、国民を苦しめれば、すぐに自分の首が絞まるのだからね。暴君など、現実には希少な例としか認められないものなんだ」


 ユリスは歴史家でもある。


「だってそうだろう? 自分たちの土地を守る兵士というのは、その土地からしか生まれないんだ。土地に執着を持たぬ者が敵になることはあっても、土地に愛着を持つ者が敵になることは絶対にない。私たちの国を守る兵士を生み、育てていくには、どれだけ国民のことを考えられるか、ということでもあるんだよ。それが命を守るということじゃないか。私たちに課せられた責務は、決して小さいものではないはずだ。自分たちが生きている間だけ平和ならばそれでいいというわけにもいかないのだからね。それこそ、さっき言ったように、五十年でも百年でも、戦争を回避するように根回ししておくということが大事なんだ。偉大な王と語られることがあるとしたら、その根回しに気づくことができる一部の人たちだけだろうね。百年後か、二百年後かは分からないけど、それは後世の者にしか評価できないことなんだ」


 すべての国民に理解が得られるとも思っていないようだ。


「今の世を生きている者たちからは、徴兵による労働が厳しく、また、家業がある者も納税に苦しんでいるかもしれないが、それも平和のための根回しだと分かってくれるまで待つしかないんだよ。不平不満はあるだろうが、徴兵を止めたり、納税を緩和したりすれば、その分だけ国力が低下するんだ。そうなると戦争への呼び水となるかもしれないので、結局、最終的には国民の生命を脅かすことになってしまうことになる。危険な仕事もあれば、実際に犠牲者を出すこともあるだろう。その都度、フィンス、君への不満が溜まっていくことになる。君は君で、呵責に耐えられなくなることもあれば、職務を放棄したくなる時がくるかもしれない。しかし、そういう時こそ私の言葉を思い出すんだ。何もせずに国力が維持できるなんて思わないこと。そして、すべてにおいて国民の生命を守ることが基本となっているということを。今は圧政を敷いているように見えても、いつか理解者が現れてくれるはずだ。善政の『善』というのは、それを信じてやるしかないという意味でもあるんだよ」


 まるで遺言のような言葉だった。

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