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ロマン・ストーリー 剣に導かれし者たち  作者: 灰庭論
第二章 戦士の資質編
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第三話(47) コルヴス家の親子

 翌日は休みということもあり、昼過ぎまで惰眠を貪った。兵舎の三人部屋を宛がわれたのだが、ドラコの姿は消えていた。休みの日に休まないのが彼のライフスタイルだ。


「おう、やっと目を覚ましたか」


 見ると、ミクロスが地べたに座り込み、針の先端を鋭くなるまで研いでいた。彼は暇があると短剣の刃先を研いで時間を潰している。ちなみにドラコの頭がキレイに整髪されているのは、ミクロスのナイフのおかげでもある。


 針の手入れをしているということは、おそらく隠し針として持ち歩くためだろう。オーヒン国の市街を歩く時には帯剣が許されないので、そのための代替措置なのだろう。


「なあ、ジジよ、今から一緒に遊びに行かねぇか? 聞いたところによると、町外れにカーネーション広場っていう大人が楽しめる遊び場があるっていうんだよ。昼過ぎから営業してるらしいから、今すぐ行こうぜ」


 カーネーション広場というのは、おそらく娼館街のことだろう。


「いや、僕はいいよ」


 ミクロスがムッとする。


「なんでだよ。せっかく王都から脱出したってのによ」

「いや、ドラコが何て言うか……」

「関係ねぇよ。普段の生活にまで指図されたんじゃたまったもんじゃねぇ」

「いや、そうは言っても、新しい生活が始まったばかりだろう?」

「今日を逃せば、また荷馬車の警護であっちこっち引っ張り回されるかもしれねんだぞ」

「いや、でも、第一、お金がないじゃないか」


 ミクロスがニヤッとする。


「それならちゃんと当てがあるんだよ」


 そう言って、部屋から飛び出して行った。

 向かった先は兵舎の管理棟にある副長室だった。


「おいっ、ランバのオッサンよ。オレたちに少しばかり金を用立ててくれや」


 ランバは机の上の書類から目を離すことなく、雑務に追われている感じだった。


「使用目的は何だね?」

「調査費用ってヤツよ」

「今日は休みのはずだが」

「休みが必要なのは馬だけよ。オレたちはオッサンと違って若いからな」


 ランバが決めかねている。


「ほら、早くしてくれよ。昨日の夜も言ってたろ? これもドラコのためなんだよ。ちゃんと調べて後から報告するからよ。さっさと仕事を始めさせてくれよ。こんなんじゃ、日が暮れて道に迷っちまうよ」


 ランバが頷く。


「よかろう。必ずや、隊長のお役に立つのだぞ」


 そう言って、布袋に入った銀貨をそのまま渡してくれた。昔からランバという男は『ドラコのため』という言葉に弱いのだ。『隊長のためなら命は惜しくない』というのも決して口だけではないのである。



「へへっ、チョロいだろ?」


 副長室を出たミクロスが、僕に向かって舌を出した。僕はこの男の軽薄さが嫌いではなかった。死線に身を置く仕事ばかりなので、いつも気持ちがどんよりとしてしまうのだが、そんな時に気分を紛らわしてくれるのが彼の軽口だからだ。


「よしっ、行くべ」


 ということで、僕たちはカーネーション広場へと出掛けることにした。その目的は、つまり女性を金で買うということだった。生まれて初めての経験なので、もうすでに緊張でドキドキしている自分がいた。


「あれ? お前、ひょっとして初めてか?」

「いや」


 思わず嘘をついてしまった。


「嘘をつくな。そんなはずがないだろう」


 ミクロスの言う通りだった。僕たちは十年近く前から一緒にいるので、彼が知らないことなどないわけだ。それを知りつつ嘘をついてしまうというのが、男の悲しい性である。


「見栄を張ったって仕方ないからな。最初は身を任せてしまえばいいんだよ」


 ミクロスは犯罪組織の捜査において、町に潜伏して単独で行動する機会が多いので、あらゆる経験が豊富だった。中でも僕の性に関する知識のすべては、ミクロスから聞いたことばかりだ。


「よしっ、見えてきたぞ」


 カーネーション広場といっても花壇に花が咲いているわけではなく、派手な売春婦が通りにいるから、そういう名称になっただけである。景観は高級な宿から安宿まで雑多に建ち並んでいる感じだ。


「交渉は任せとけ。相場は聞いているから、ぼったくられる心配はいらないさ。それはいいとして、帰りは一人で帰るんだぞ。オレ様は酒を飲むから、今夜は帰らないからよ。お前は明日大事な仕事があるんだから早めに寝るんだ」


 同い歳だというのに、ミクロスは僕のことを弟のように接して、それが出会った時から変わらないのである。そのいつまでも変わらない態度が、僕に家族のありがたみを感じさせてくれるのだった。


「はじめまして。タンタンです」


 安宿の一室で対面した彼女が自己紹介した。


「はじめまして。ジジです」


 そう言うと、タンタンさんが口元を手で隠して笑うのだった。


「どうしたの?」

「わざわざ名乗る人なんていないから」

「ああ」


 僕の気の抜けた返事に、またしてもタンタンさんは口を押えて笑うのだった。二人とも裸なので手で口を隠すことなどないのだが、その仕草にタンタンさんの魅力が詰まっているように感じられた。


 彼女は僕と同じで原住民をルーツに持つ女性だ。それだと、オーヒン国では職業の選択どころか、職に就くことすらできないと聞いている。タンタンさんもまた、僕と変わらず自分の意思で人生を歩んだことのない人間なのかもしれない。


「大丈夫ですか?」


 反応しない僕に、タンタンさんが心配そうな表情を浮かべる。


「焦らなくていいですからね」


 彼女に励まされても、僕は反応することができなかった。


「ゆっくりでいいですからね」


 励まされれば励まされるほど、反応できない自分が惨めになった。


「ごめんなさい」


 いくら時間が経っても、どうすることもできなかったので、宿を出て帰ることにした。帰り道で、ミクロスに何て話そうかと悩んだが、結局はいつものように、最初に嘘をついて、それから正直に打ち明けることになりそうだ、という結論に思い至った。


 それとは別に、一つだけ引っ掛かることがあった。それはタンタンさんの身体にできた生傷のことだ。古傷ではない痣が身体中に刻まれていたのである。身体は商売道具でもあるので、雇い主に暴力を振るわれているとは考えにくかった。


 そうなると客に暴行を受けたということになるが、その場合は泣き寝入りしているということになる。僕たちのような原住民は、たとえ殺されても町外れに死体が捨てられるだけの存在だから、どうすることもできない。



「ジジ、起きろ。朝だぞ」


 どうやら考え事をしているうちに眠りに落ちたようだ。目が覚めると朝になっていた。声を掛けてくれたドラコは、すでにシャキッとした顔をしていた。この日はコルヴス家の邸宅に伺う大事な日である。


「ミクロスはどうしたんだ? 昨夜は戻らなかったようだが」

「ああ、それなら本人が『帰らない』って言ってたよ」

「そうか。言伝を聞いているなら安心だ」


 飲み歩いているという理由まで報告する必要はないだろう。


「さぁ、顔を洗って正装に着替えるんだ。歯も磨くんだぞ」


 ミクロスが弟扱いなら、ドラコは子ども扱いだった。でもそれは仕方がないことだ。王都の町外れに捨てられていた僕の面倒を看てくれたのが、同い歳の彼だからである。実際の年齢は分からないが、一緒に兵士になるために同い歳ということにしたのだ。


 病気で死にかけていた僕を看病してくれたのが八年前なので、彼が十歳の時だ。誰も僕の身体に触れようとしなかったが、幼少のドラコだけが抱きかかえてくれたのである。あの時の感触は今でも思い出すことができた。


 それから言葉を覚えて、今では文字まで読めるようになった。長兄のオルグさん夫婦やケンタスのおかげでもあるが、それでもやはり僕に触れてくれたドラコがいなければ、今の僕は存在していなかった。



「随分と立派な屋敷だな」


 それがコルヴス邸を見たドラコの第一印象だった。高台の貴族街の一等地にあるその邸宅は、四方が高い石壁で囲われており、四隅に警備兵を立たせるなどセキュリティー対策が万全だった。おそらく一日三交代で常時見張らせているのだろう。


 同行しているランバからの事前情報によると、これから会うコルヴス親子というのは、オーヒン国で神祇官を務めているという話だった。これは我が国の七政院と同等の役職だと仮定するならば、国王に次ぐ最高ポストということになる。


 オーヒンは新興国だが、我が国と同じ神、つまり大陸由来の一神教である太教を国教と定めているということになる。


 神のお告げを聞いて聖堂を建てたブルドン王が太教を信仰しているのかどうか、そこはもう少し慎重に調べてみる必要がありそうだ。


「ねぇ、ドラコ。門を潜る前に聞いておきたいことがあるんだけど、いいかな?」

「なんだい?」


 ドラコの顔が優しいのは、僕の表情がナーバスになっているからだろう。


「オーヒンという国は街中で原住民をルーツに持つ者を見掛けることがなかっただろう? おそらく徹底的に排除される仕組みができあがっていると思うんだ。そういう国で、僕が貴族の家に行っても良いのだろうか? 僕のせいで外交面で迷惑が掛かるようならば、ここで待っていても構わないけど」


 そう言うと、ドラコが僕の両肩をガッシリと掴んだ。


「何も怖がることはない。俺がついている。おどおどした顔も見せてはいけない。俺たちはカグマン国の兵士なんだぞ? 膝を折って忠誠を誓っているのは国王陛下、ただ一人だ。だから他国の貴族に会っても、ひれ伏してはいけないのさ」


 ランバも優しい目でフォローする。


「それにジジ殿の存在は試金石にもなりますからな。原住民出身の者を同じテーブルに着かせるかどうかで、相手の思想や人となりが分かるのです。コルヴス親子が如何ほどの者か、見せてもらおうではありませんか」


 そうだった。オーヒン国は外国なのだ。有事の際に命令を受ければ、貴族であっても剣先を向けることになる。それに他国の貴族に膝を折れば、二心ありと見做されて、スパイ容疑を掛けられることにもなりかねない。


 僕は基本的なことですら何も分からない男なので、どんな些細なことでもドラコから教えを受けなければならなかった。それを面倒と思わずに丁寧に教えてくれるドラコを、僕は心から敬愛している。



「こちらでお待ちください。ただいま呼んでまいります」


 高齢の召使いに通されたのは貴賓室だった。つまり最高のもてなしをされているわけである。部屋の中には年代物の壺や彫刻などの美術品があり、圧倒的な経済力を見せつけられている感じだ。


 窓には貴重な板ガラスが嵌めこまれていて、毛足の長い絨毯は雲の上を歩いているようだった。長いテーブルの上には真っ白な布が敷かれており、その上には一月の寒い時期だというのに、名前も知らない果実が盛られていた。


 それだけで海外の有力者か、または上質な品物を提供してくれる豪商と交易できていると考えられるわけである。この島では手に入らない物ばかりなので、大陸と強固な繋がりを持っていることが推察できるというわけだ。


 門前払いを受けなかったので、とりあえず事前の心配は杞憂だったと断じて良さそうだ。果実を用意してくれているということは、同じテーブルでの食事を許可されているという意味も含まれているからだ。



「おお、そなたが噂のドラコ・キルギアスか。会いたかったぞ」


 ゲミニ・コルヴスが四人の護衛を引き連れて入ってきた。


「私も閣下にお会いできて光栄に存じます」


 そう言って、ドラコが差し出された手を握り返した。


「本日はお招きいただき感謝いたします」


 ランバもゲミニと握手を交わした。


「お招きいただき感謝いたします」


 僕もランバの言葉を真似して挨拶した。


「よく来てくれた」


 ゲミニは僕とも握手をしてくれた。六十歳を過ぎていると聞いていだが、肌の血色がよく、年齢よりもずっと若々しく見えた。小柄ではあるが、病弱に見えないのは、肉付きがいいからだろう。時折見せる長い舌が特徴だろうか。


「息子のゲティスを紹介しよう。近いうちに私の仕事を引き継ぐことになっておる。いずれは国政を担うであろうから、見知っておいて損はなかろう。君たちと違って優男ではあるが、頼りになる男であることは、この私が保証する」


 父親の言葉に、ゲティスが照れ笑いを浮かべる。


「どうか、父上の話を真に受けないでください。私は神にお仕えすることはあっても、国政に参加することはありませんからね。市井には『親バカ』という言葉がありますが、父上がまさにその親バカなのです。この私を買い被っているのですよ」


 ゲティスは温かみのある笑顔を見せる男だった。痩せぎすではあるが、父親と違って顔つきは精悍である。礼服の父親と比して、法服を纏っていることから、彼の方が篤い信仰心を持っているということが窺えた。


「お前はいつまで、この父を困らせるというのだ」

「いくら父上の頼みでも、神の御意思には逆らえませんからね」

「神は、お前の結婚と孫の誕生を望んでおるぞ」

「それは父上の願いではありませんか」


 息子の言葉に、ゲミニは弱り顔だ。


「最近はずっとこんな調子でしてな。父親としても困っておるのですよ」


 それから椅子に座り、果実を勧められた。


「さぁ、遠慮するでない」


 手をつけないのは遠慮しているからではなく、食べ方を知らないからだった。


「おい、剥いてやれ」


 ゲミニが後ろに立っている護衛に命じるが、それを制したのはランバだった。


「閣下、お気遣い感謝いたしますが、お手を煩わせるほどではございません」


 そう言って、果実の皮を剥き始めた。

 僕が真似をして皮を剥いている間に、ゲミニが回想する。


「幼い頃から町の芝居が好きでな。見張りの目を盗んでは、邸を抜け出し、よく観に行ったものだ。見つからないようにと、わざわざ町人の服を着て成りすますのだ。もう、五十年以上も前の話になるな。あの頃から今も変わらず、私の心を惹きつけてやまないのは、剣聖モンクルス、ただ一人だ。重たい大剣を舞うように扱う姿は、まさに芸術の域とも言われておったな。何よりも対人戦で負け知らずというのが最大の魅力だ。傷を負ったことすらないというではないか」


 そこでゲミニがドラコに羨望の眼差しを向ける。


「ドラコよ、お前が『モンクルスの再来』と呼ばれていると知った時、私の胸がどれだけ高鳴ったか知らぬであろう。銀山を荒らしていた一味を一網打尽にしたという話を伝え聞いた時には、興奮で眠れなかったぞ。それと同時に、どうして『モンクルスの再来』がオーヒンの地で生まれなかったのかと、理不尽にも八つ当たりしたほどであった。なぜなら私ほど、お前の価値を知る者はこの世に存在せぬからな」


 蛇のような長い舌を出して微笑む。


「もしもお前にその気があるのなら、我々の国は喜んで受け入れることだろう。そして行く行くは軍事の決定権をすべてお前に握らせてもいいと思っておる。それはドラコよ、お前にはそれだけの価値があるからなのだ。しかし私もかつてはカグマン人だった。だからお前がこの場で首を縦に振らぬことは分かっておる。だがな、心に留めておくのだ。お前のことを誰よりも高く買う人間が、ここオーヒンに存在するということをな」


 あまりにも大胆な提案に、僕たち三人は言葉を失ってしまった。これほど開けっ広げに亡命を勧められるとは思ってもみなかったからだ。神祇官直々の言葉なので、冗談ではなさそうである。


 要するに、これは実力を評価された上で、僕たちを傭兵として引き抜きたいというビジネスの話なのだ。やはりオーヒンは、商人の商人による商人のための国ということだ。


 それから一緒に昼食を頂きつつ、ゲミニ・コルヴスが話を続ける。


「話は変わるが、私は長年に渡って探している物があってな、どうしてもそれを手に入れなければ気が済まないのだ。この邸にあるすべての美術品と交換してもいいと思っておる。それほど黒金の剣には価値があるのだ」


 黒金の剣といえば、国王の暗殺に使用されて、その後モンクルスに託されて、暴君として有名なジュリオス三世を打ち破った武器として後世に名を残す剣のことである。残念ながら現在は、その所在のありかは不明となっていた。


「ドラコよ、黒金の剣について、何か知ってはおらんか?」


 ゲミニの言葉に、ドラコが首を振る。


「残念ながら、お力にはなれぬかと」


 落胆した素振りを見せないので、ゲミニは初めから期待していなかったようだ。


「もしも手に入れることができるなら、金を惜しむつもりはない。譲れる土地なら手放したって構わんのだ。依頼できる立場ではないが、万一にでも手に入れることができたなら、どうか、この私のところに一番に持ってくるのだぞ」


 そこでゲミニが大きなため息をついた。


「ああ、なんてもどかしいのだ。ドラコよ、お前がオーヒンの地に生まれてさえいれば、今すぐにでも黒金の剣を探すように命じることができただろう。そしてお前のことだから、必ずや私の願いを叶えたはずだ。それが王宮の無能どもは、お前ほどの男に、幾らでも代わりがきく国境警備を命じたなのだからな。それではまさに宝の持ち腐れではないか。あやつらは真の価値というものを分かっておらんのだ」


 そこでゲミニが微笑む。


「決めたぞ。私は黒金の剣と同じくらい、ドラコよ、お前のことが欲しくなった。お前を真に活かせるのは、この私しかおらぬ。すぐにとはいかぬが、いつの日か、お前のことを手に入れてみせるぞ」


 それから庭に出て、ドラコが剣舞を披露して、それを見てゲミニが手を叩きながら大絶賛するのだった。その顔はまるで芝居に夢中になっている子どもそのものである。おそらく、ドラコの中に憧れのモンクルスを重ねているのだろう。


「いつでも遊びにくるがよい」


 それから、果実の盛り合わせを抱えきれないほどもらって兵舎に戻った。帰り道は三人とも無言だった。それは会話を他人に聞かれてしまう危険性を排除するためだ。特にこの日は重要な話があったため注意が必要だった。


 気になるのは、やはり引き抜きの話だ。予想以上にドラコに対する評価が高いのは、やはり商人の街だからだろう。腕を磨けば磨くほど高額な報酬を得られるので、実力者が勝手に集まってくるシステムがすでに構築されているわけだ。


 オーヒン国は防衛のことを考えていないわけではなかったのだ。城や壁はないが、街の至る所に私兵が配置されているわけで、それこそが防衛システムそのものとなっていたわけだ。しかも金で雇われているスペシャリストばかりである。



「ミクロスの奴、今日も帰ってこないつもりのようだ」


 そう言って、ドラコは寝息を立ててしまった。亡命についてドラコが何を考えているのか気にはなるが、彼は一言も口にしなかった。そうなると、わざわざ僕の方から話し掛けることはない。


 彼は昔から一人で考えて決断を下す男なので、僕やミクロスは黙ってドラコの決断を受け入れるだけだ。それでこれまで上手くやってこられたので、これからもそうすべきなのだ。

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