番外 恋人の日ネタ 私は知っている
6/12 は恋人の日ということで、掌編を。
時系列としては、アレクシアとヴァイス、二人で旅をしている「第四十五話 障りと先触れ」あたりの話です。
――私は知っている。
ヴァイスはいつも朝が早いのだ。それもとても。
誰よりも早く起きる。
そして私は肌寒くて目を覚ます。
起きたらまず、野営地周辺の見回りをしてくれる。ま、お手洗いのついでかもしれないけれど。
次に準備運動代わりに、ウサギなんかを捕まえてきてくれる。運動のついでって本人は言っているけれど。
そして毛づくろいを始める。いつも念入りにしている。
ひとしきり終わったら、再び寝床に戻ってくる。
――私のところに戻ってくる。
最近はすっかり彼が毛布兼、枕だ。
私を起こさないように気を使っているのか、そおっと腰を下ろし、私を包み込んでくれる。
ぬくもりを求めて私は彼の身体に腕を回す。
頭をぐしぐし押し付けて、しっかり抱き寄せる。
違うか。
彼のとても大きな体に抱きすくめられる。
あたたかい。ぽかぽかのおひさまの下の、原っぱのような香り。そんな中に、少しゾクッとする狼の臭い。
今日はもう少し寝かせてね?
二人旅になってから、彼は私を決して起こさない。
どうして? って尋ねても「お前がそうしたいからだろ」って。
あなたはどうなのよ、って聞いても「うるさい」っていってしらんぷり。
しつこく尋ねたら、ようやく観念したようにつぶやいた。
「俺も……そうしたいからだ」
ええ、もちろん。知ってたよ。
私のこと、大好きだもんね、君。
「うるさい」
……ね、ヴァイス。今日は――さぼっちゃおうか?






