妄想暴走少女 二宮 円香 3
今回は、お泊まり会です。
家に帰ると、服を脱ぎ捨て、スウェットへと着替える。
そして、来たる客人をもてなす準備を始める。
これは仕方ない。
仕方の無い事なのだ。
みんなが幸せになるには
『これ』しか無いのだ────
☆☆☆
「第四回! 徹夜ゲーム大会〜in 真央宅〜 」
「「「イェーーーーイッ!!!! 」」」
現在、僕の家には優太、佑、茜の3人の野郎共が泊まりに来ている。
理由は簡単。
昼休みに円香に襲われたので、夜も襲われる可能性があるからだ。
幸い、明日は土曜日。つまり休みだ。
「今日は存分に楽しんでくれ」
「「「任せろ」」」
うわ、なんて頼もしい奴らだ。
「ところで、真央。妹さんは今日はいないのか? 」
え? なんで佑が咲の事気にしてんの?? 好きなの? うちの妹に手を出そうとしてんのッ!?
「俺らが騒いだら妹さんに迷惑じゃないか? 」
あぁ、なんだ。そういう事か。
「咲なら円香の家に泊まってるよ 」
「え〜、真央の妹可愛いから会いたかったな〜」
すまん、優太。咲に「優太も来るよ」って言ったら「わたしあの人嫌い。目がエロい」って言って円香の家に向かっていったよ。
「まぁ、定期的に咲とは連絡取るから」
「え、なんで? 」
「なんか定期的に僕の声を聞かないと不安になるんだって」
「へ〜、咲ちゃんってもしかしてブラコン? 」
「優太、それ絶対咲に言うなよ? 」
ブラコンでは無いけど、まぁ、色々あったからな〜・・・・。
まぁ、そんな事よりも気になる事がある訳ですよ。
「なぁ、茜」
「ん? なんだいっ?? 」
「なんで、まだ女装してるんだ? 」
いや、おかしいわ。男だらけのお泊まり会だと思ったら女がいるんだもん。いや、男なんだけどさ。
それにしても、おかしいだろ。
男三人と女(♂)一人の空間って。
なんか、これって────
「男3人が寄って集って女の子にエッチな事する漫画とシチュエーションが似てるよな! 」
「おい優太、その口閉じろ」
「あっはっはっは! わかるっ!! 」
そっか〜、茜はわかっちゃうのか〜。
って言うか本当に息ぴったりだな、この3人。
「ところで真央。今日は何をするんだ? 」
お、さすが常識人。僕の聞いて欲しいことをちゃんと聞いてくれる。
「はい、今日プレイするゲームはこちら」
「ん? プレイ?? 」
「優太クンって本当に馬鹿だよねっ」
わかる、茜。僕もそう思う。
「『Dead or Alive』です」
「「「でっどおああらいぶ?? 」」」
うん、物騒なタイトルだね。
て言うか、本当に息ぴったりだな。
「真央、それはどうゆうゲームなんだ? 」
「んー、迫り来るゾンビ────」
「撃って殺す系? 」
「え〜、怖〜いっ! 優太クンに抱き着いちゃおっ」
「・・・・俺、男でもイケる気がしてきた」
「ボクは普通に女の子が好きだけどねっ」
おめでとう優太。お前の春は5秒で終わった。
「ンフフw」
「ん? どうした、佑?? 」
優太を看取ると、後ろで佑が笑いを堪えていた。
手には、ゲームの説明書が握られていた。
そうか、お前、読んだのか・・・・。
「な、なに? このゲームそんな面白いの?? 」
「おぉ、これはこれは、楽しみだねっ」
よしよし、食いついて来たな。
「まぁ、このゲームの事は実際にやってから理解してくれ」
そして、地獄を見るがいい。童貞共。
☆☆☆
僕達のゲーム大会では、特別ルールがある。
『プレイヤーは一人』
『他の3人はとにかく後ろから邪魔をする』
『朝までにクリア出来なければプレイヤーが罰ゲーム』
『朝までにクリア出来れば、他の3人が罰ゲーム』
そして、じゃんけんの結果茜が操作する事になった。
「じゃあ、主人公の名前は『ゆうた』にしようっ」
「なんでっ!? 」
「もしもゾンビに食われる展開になっても怖くなさそう」
「「わかる」」
「オイッ!? 」
「まぁまぁ、じゃあ始めるよっ」
ポチッ
「おっ、起動した」
【ドキドキッ! Dead or Aliveッ!! 】
「「・・・・は? 」」
説明しよう!
『ドキドキッ! Dead or Alive』とは、迫り来るゾンビから逃げつつ、生存者の女の子を口説き、アダムとイヴるゲームだ!!
「つまり、エロゲーだったって事? 」
「そう、みたいだねっ」
ふふっ、騙されたなぁ、二人共。
僕と佑はこうなる事を知ってたんだ。だから二人して笑いを堪える事に必死だったんだよっ!
「あ、でもリメイク版でCERO表示が下がってる」
18禁を買う勇気は無かったからネ!
仕方ないよネ!!
さぁ、さっさとプレイを開始す────
「このヒロイン、一ノ瀬さんに似てるよな〜」
・・・・おい、佑。何を言い出す?
いやいや、そんな訳無いじゃん?
画面に映るメインヒロインの顔をじっと見つめてみる。
・・・・そっくりじゃん。
え!? なんでっ!? このヒロインこんな顔してたっけ!?
「あれっ? ほんとだねっ。どうするっ? プレイヤー名は『まお』にしとくっ?? 」
「おい、ちょっと────」
「そうだな、その方がなんかしっくりくるわ。この横の包丁持った女の子も円香ちゃんに似てるし」
待て待て待て、なんかおかしくない? この展開。
僕が焦っていると、ピロンと言う音と共にスマホに誰かから連絡が来た。
『私を攻略してくださいね? 愛しの彼女より♡』
一ノ瀬 紗奈、貴様、見ているな・・・・?
「じゃあ、もういっそプレイヤーを真央にして始めようぜ? 」
「「さんせーっ! 」」
くそぅ、こいつら息ぴったり過ぎるんだよ・・・・
ピロン♪
『まおくんが攻略してください』
なんであんたが一番ノリ気なんだよ。
佑と目が合うと、苦笑いを浮かべながら「すまん」とジェスチャーで表現していた。
ダメだ、そんな顔されたら許すしかない。
こうして、僕は一ノ瀬さん似の女の子を攻略するゲームをする事になった。
☆☆☆
今日の私は、どうかしていた。
なんであんな行動をしてしまったんだろう?
あぁ、はしたない。嫌われたらどうしよう・・・・。
「やだなぁ・・・・」
「何が? 」
「きゃっ!? 」
びっくりした。そうだ、今日は咲ちゃんが泊まりに来ているんだった。
勉強を教えて欲しいらしい。
それならお兄ちゃんに頼んだ方がよっぽど良いと思うけどな・・・・。
「円香ちゃん、今日、なんかおかしいよ? 」
「そ、そうかな? 」
「うん。お兄ちゃんと何かあった?? 」
「そ、それが────」
私は、今日あった事を咲ちゃんに話し始めた。
私は、誰かに話を聞いて欲しかった。
正直、今のこの状況を1人で抱え込むのは出来ない。
でも、友達にはなかなか言える事でもない。
クラスに友達はいても、本当に信頼出来るかどうかは正直微妙だ。
だからこそ、家族の様な存在である咲ちゃんに聞いて貰うのが一番良いと思ったのだ。
「う〜ん・・・・うん。まず、円香ちゃんは勘違いをしているね」
「か、勘違い? 」
どういう事だろう?
私は、何を勘違いしているんだろう??
「あのね、円香ちゃん。よく聞いて? 」
「う、うん・・・・」
「お兄ちゃんと一ノ瀬先輩は別に付き合ってないよ?? 」
・・・・・・え?
☆☆☆
「ひどいゲームだった・・・・」
「だね〜、お疲れ様っ! よ〜しよしよしっ!! 」
徹夜でゲームした所為でゲッソリとしている僕の頭を、茜がぐしゃぐしゃと撫でてくる。
「まさか、メインヒロインが主人公のストーカーで、しかも婚約を迫ってきたり、幼馴染と三角関係を築いて奪い合われるなんてな」
「しかも、メインヒロイン攻略まであと一歩の所で、ゾンビ化した幼馴染に殺されるとは・・・・驚いたぜ」
なんだよ、このゲーム。
『攻略する』ってより『攻略される』ゲームじゃねぇか。
しかも、途中で一ノ瀬さんからアドバイスの連絡が何度も来ていた。
本当にどこから見ているんだろう?
「この主人公誰かに似てるよねっ、誰だろ〜? ん〜?? 」
やめろ、茜。そんなニヤニヤした目で見るな。
「いや〜、真央クン。実に楽しめたよっ。でもね。」
「朝までにクリア出来なかった真央には、」
「罰ゲームがあるYo!! 」
もう、好きにしてくれ・・・・。
僕は敗者だ。どんな罰ゲームでも受け入れる。
「じゃあ、真央。スマホ貸して? 」
「ん? あぁ、はい」
「おっ、さんきゅー。ふんふ〜ん♪ 」
「何してんの? 佑?? 」
「一ノ瀬さんにデートのお誘いしてる」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?!?!?!? 」
ちょ、何してんの!? そんな事したらどうなるかわかんだろッ!?
ピロン♪
ピロン♪
ピロン♪
ピロン♪
ほらっ! 通知が鳴り止まねぇよッ!!
「ほら、罰ゲー・・・・いや、朝まで頑張ったご褒美か?? 」
「佑、お前、絶対許さねぇからなぁ・・・・」
「ルールは守れよ、真央」
くそ、誰だ、こんなルール作ったの。
俺か。
「あっはっはっは! まぁ、頑張りたまえよっ、七瀬クンっ! 」
「エッチしたら報告しろよ!? 絶対だからなッ!? 」
「しねぇよッ!! 」
ピロン♪
スマホの通知欄を覗く
『えっ、しないんですか? 』
「しねぇよッ!?!? 」
だからどこから聞いてんだよっ!?
途中から一ノ瀬さんも泊まりに参加してる気分だったよっ!!
「じゃあ、明日はデートだな。今日はしっかり休め。続きは俺達が攻略しておくから」
「く、くそっ! 絶対だからなっ!? 絶対攻略してなきゃ許さねぇからなッ!? 」
そう言って、気を張り過ぎて眠気が限界の僕は自分のベッドへ向かった。
明日、地獄が待っているとは知らずに・・・・
以上、お泊まり会(♂)でした。
次は一ノ瀬さんとのデート会です。
よろしくお願いします。