三峰 言葉は癒したい 5
『三峰 言葉』編はこれでラストです。
えーっと、なんで僕、言葉に頭を撫でられてるんだろう?
「せんぱい」
「は、はい! 」
うわ、なんか緊張する。
頭撫でられるのなんていつ以来だろう?
「わたし、せんぱいのこと、すき」
「・・・・ん? 」
あれ? 僕数時間前にフラれなかった??
「せんぱい」
「ん? 」
「きいて、ください」
「・・・・わかった」
言葉は、ゆっくりだけど、自分のペースで話し始めた。
「わたし、いちにちじゅう、おきてられない」
「うん」
「だから、みんな、はなれていった。『ぶきみだ』、って」
「・・・・うん」
「だから、わたし、ひとと、いっしょにいられなかった」
言葉は、ぷるぷると身体を震わせ、俯いていた。
「わたしは、なにか、『びょうき』なのかも、って。でも、なにもなくて、わたし・・・・わたし・・・・」
「言葉・・・・」
「でもっ! 」
言葉がグッと顔を上げる。
そして、その目でしっかりと僕の目を捉える。
「せんぱいだけは、わたしといてくれた! わたしといっしょに、いてくれた! 」
「それは・・・・。僕が、言葉の先輩だから」
「『こうはいだから』、それでも、いい。それで、いい。そばに、いてくれた。それが、うれしかった」
段々と、言葉の目には涙が溜まり始める。
「せんぱいといると、あったかいきもちになる」
「・・・・うん」
「せんぱいといると、しあわせなきもちになる」
「うん」
「でも、せんぱいは、ときどき、かなしそうなかおをする」
「そう、かな? 」
「じぶんじゃない、だれかのために、わらってる。そんなかお、してほしくない! だれかのための、えがお、じゃない! じぶんの、じぶんのために、わらってほしい!! 」
「・・・・・・」
「わたしは、せんぱいにしあわせになって、ほしい! 」
「それじゃあ────」
「でも、わたしじゃ、それが、できない・・・・」
言葉がまた俯いてしまう。
彼女は、今でも自分の体質を気にしている。
だから、自分の想いに蓋をしてしまっている。
「だから、さな。まどか。」
「はい」
「なぁに? 」
「おねがい、します。せんぱいを、しあわせにして、ください 」
言葉は、一ノ瀬さんと円香に対してぺこりとお辞儀をする。
そして、円香が口を開こうとすると
「無理です」
と、一ノ瀬さんが遮った。
「な、なんで・・・・? 」
「だって私、まおくんが何をすれば幸せなのか知りませんし? 」
・・・・うん。だろうね? 基本ストーカー行為しかしてこないもんね??
「でも・・・・」
「それでも、私はまおくんが好きです。大好きです。私、まおくんを幸せに出来る自信はありません。でも、まおくんと一緒にいて、幸せになる自信があります。」
「しあわせになる、じしん?」
「私は、まおくんからは『変態ストーカー』だと思われています。」
あ、自覚あったんだ?
「でも、仕方ないんです。初恋なんです。恋なんです。愛しくて愛しくてたまらないんです。」
「それって・・・・」
「まおくんがそばに居ると、幸せになれます。まおくんとお話すると、幸せになれます。まおくんに触れると、幸せになれます。そして、まおくんが『生きている』事で、私は幸せになります」
「・・・・・・」
「彼が幸せになればなるほど、私の心は満たされるんです。彼が満たされれば、私も満たされるんです。」
一ノ瀬さんは、グイッと言葉に目線を合わせる。
「言葉ちゃん。貴女もそうでしょう? 」
「・・・・・・」
「私、恋敵達とは正々堂々と戦ってまおくんと結ばれたいんです。だから────」
一ノ瀬さんは、ゆっくりと手を伸ばし、言葉の頭を撫で始める。
「あなたも、逃げないでください。私との戦いから。自分の、『想い』から。」
「・・・・うんっ! 」
この時、僕は言葉の笑顔を初めて見た様な気がする。何かが吹っ切れた様な良い笑顔だった。
うん、まぁ、言葉の件はこのままじゃ終わらない気がするけどね・・・・。
☆☆☆
急いで家に帰り、僕の部屋へと入る。
「・・・・咲? 」
僕の呼びかけに反応する様に、部屋の隅で何かが動く。
「おにい、ちゃん・・・・? 」
何かがゆっくりとこちらへ近付くと、光が当たり布団に包まれた咲が現れる。
「おにいちゃん? おにいちゃん、だよね?? 」
「あぁ、そうだよ」
咲は、ぶわぁっと涙を流し僕へと飛びかかってくる。
そして、縋るように僕の服を掴む。
「もう、どこにもいかないで・・・・」
きっと、そんな事は出来ないだろう。
でも、咲がそれを望むなら。
咲が、それで『幸せ』になれるのなら────
「・・・・うん、僕はどこにも行かないよ」
僕の言葉に安心したのか、咲はゆっくりと目を閉じ眠りに就いた。
☆☆☆
「夜も遅いし、送っていきな」
母さんに言われ、仕方なく一ノ瀬さんと円香を送っていく事になった。
と言っても、円香の家はすぐ隣なので数分で着いた。
「き、気を付けてね? 」
「ん? 大丈夫だよ、一ノ瀬さんはちゃんと送って行くから。」
「そ、そうじゃなくて」
「そうじゃなくて? 」
「ま、真央君、一ノ瀬さんに襲われないようにね? 」
「・・・・・・」
普通、その心配は逆だと思うんだ。
ほら、一ノ瀬さん。口笛吹いて誤魔化さない。
円香を見送り、一ノ瀬さんを送る事になる。
まぁ、2人っきりなんですよね。
「2人っきりですね、まおくん♡」
「そうだね、2人っきりだね・・・・」
言葉ってテンションが違うとこんなにも意味が変わってくるんだね。
「襲わないでね? 」
「保証はできませんね」
「数m離れて歩いてくれない? 」
「こうでしょうか? 」
「うん、近付いてるね、それは。」
眠いからそうゆうのやめて欲しいんだけどな〜。
・・・・あっ。
「一ノ瀬さん」
「なんでしょう? 」
「ちょっと手出して・・・・。いや、手を差し出せって言ってんのになんで服に手をかけてんの? 舌なめずりしないで。さらっと僕のシャツ奪わないで、どうやってんのそれ。」
「でも、まおくんが『手出せ』と言ったので・・・・」
「うん、言葉が足りなかった僕も悪いけど普通に考えて襲おうとはしないで。普通に手を差し出して欲しかったんだけど」
「あら、勘違いしてしまいました! まったく、私ったらうっかりさん♡ 」
「うん、僕はそうは思いませんね。」
この人はいつだって確信犯だしね。
「えぇっと、はい。出しました。何をするん────」
差し出された一ノ瀬さんの手をギュッと握る。
「佑に聞いた。一ノ瀬さんが僕と『手を繋ぎたがってた』って。まぁ、色々とお世話になってるし、今日ぐらいは、ね? ・・・・あぁ、変な気起こしたらすぐ離すから。」
我ながら恥ずかしい事をしてるな。
まぁ、でも、円香の事とか、言葉の事とか。お礼しなきゃとは思ってたし・・・・。
あれ? なんか、反応薄いな・・・・??
俯いてるし。やっぱり、お気に召さなかった??
「えっと、一ノ瀬さん? ・・・・えっ!? 」
心配になり顔を覗き込むと、一ノ瀬さんは顔を真っ赤にし『恋する乙女』の様な表情をしていた。
「ど、どうしたの、一ノ瀬さん!? 体調悪い!? それとも、手を繋がれるのが気に食わなかったっ!? 」
「えっ!? いや、違います! そう、じゃなくて、えっと、なんというか・・・・」
「う、うん? 」
「手を、繋いでもらえたのが、嬉しいのと、すこし、照れ臭いのが混ざって・・・・。と、とにかく、私、今、すごい、幸せで! 」
「そ、そっか・・・・」
「もう少し、繋いでいても、良い、ですか? 」
「・・・・・・」
な、なんなんだ、この反応!
こっちまで顔が熱くなってきた!!
普段とのギャップにドキドキしてしまう。ダメだ、この人は変態で僕のストーカーなんだぞ!? いいのか? 一ノ瀬さんルートを辿っちゃっていいの────
「あ、あの! 」
「は、はい!? 」
「ま、まおくん。わ、私のお家、すぐそこ、なので・・・・」
「え? あ、あぁ、ウチと結構近いんだね」
「は、はい。私の部屋からまおくんのお部屋がよく見えます」
「・・・・ん? 」
「そ、それでですね? 今、お父さんお母さん旅行に行ってて。明日の夜まで帰って来ないんです」
「・・・・はい。」
「さぁ、ヤるなら今です! 急ぎましょう!! 私、いつでも準備は出来ていますからッ!! 」
「さぁ、この話は終わりだ。」
「なぁんでですかぁぁぁぁぁぁっ!! 」
あ〜、ドキドキして損した。
☆☆☆
チュンチュン♪
なんだろ。今日は妙にスカッと目が覚めたな。
頭も冴えてる。目も冴えてる。
だからこそ、わからない。
「なんで言葉ちゃんが僕の布団に紛れ込んでるのかな・・・・」
一ノ瀬さんが入ってくるならまだわかるんですよ。いや、それもよくわからないんですけど。
なんで、言葉ちゃん? あれ? これ夢かなぁ??
言葉ちゃん、僕に抱き着く様に寝てるけど一向に起きる気配が無いな。
ちょっとぐらいイタズラしても────
「ま、真央君、朝だ────」
まさかのベストタイミングで円香さん登場するし。
「ま〜おくん! 今日も(性的に)起こしに来まし────」
一ノ瀬さんが来るし。
「「これは一体どうゆうこと(ですか)? 」」
ハモってるし・・・・。
「言葉、ちょっと、起きて説明してくれ」
「う、う〜ん・・・・。せんぱいは、わたしの、も、の・・・・zzZ」
「ちょっと!? 」
余計紛らわしくしただけじゃないですかっ!?
・・・・はっ!? 背後から淫気が!!
「い、いや、待って、2人とも。話せばわかる。だから、その、ジリジリ擦り寄ってこないで、ちょっ────」
「さぁ、円香さん! 私がまおくんのお〇〇〇を■■■しますから×××!! 」
「ダメです! それは私の役目です!! 一ノ瀬さんこそ(自主規制)(禁則事項)(ピー音)しててください!! 」
「いいから、離せぇぇぇぇぇぇッ!! 」
その後、なんとか貞操を死守する事は出来たものの、僕達は四人一緒に遅刻しました。
少し展開が無理矢理だったかな・・・・?
次は『四ノ宮 歌鈴』編です。




