三峰 言葉は癒したい 1
『三峰 言葉』編です。よろしくお願いします。
6月
『睡眠』ってさ、人間には大切なものだと思う訳だよ。
睡眠不足は体力低下をもたらすし、何より不快感が半端ない。
僕は朝起きたら10分はまどろむ時間が必要だと思うんだよね。
そのまま二度寝とか最高じゃん。
だからさ、それを妨害する奴はどんな事情があっても許されないと思うんだよね。
「・・・・ね、一ノ瀬さん」
「はい! 実にその通りですっ!! 」
目が覚めると、全裸で横たわる一ノ瀬さんが視界に入ってきた。
あぁ、もう。絶景なのに気分は最悪だよ。
この人には恥じらいってものが無いのかね?
今更驚きもしないけど。
「一応聞くけど、何でいるの? 」
「まおくん、昨日は激しかった・・・・ぽっ♡ 」
「あ〜はいはいはい」
あ〜やだやだ。この発情した猫は凄くめんどくさい。
まぁ、普通なら嬉しい状況なんだけど、やっぱり実際にやられると引くよなぁ〜。
ふと、誰かが階段を上がる音が聞こえてきた。
僕の部屋は、2階の階段付近に存在する。
だからこそ、階段を歩く音には敏感になる。
男の子は家族に見られたくない事がたくさんあるからね。女子はわからん。
そして、今も誰かが階段を上がってきている。
恐らく、円香か咲だろう。
だが、僕はすぐに異変に気付いた。
階段を歩く音は、人によって若干の違いがある。
例えば、咲なら「タッタッタッ」と言った感じで跳ねる様に駆け上がる。
そして、円香なら「トン、トン、トン」と、一段一段大きな音を出さない様にゆっくりと上がってくる。
しかし、今聞こえる音はそのどちらでも無い。
それに、気の所為か嫌な予感がする。
・・・・あれ? よく考えたら全裸の一ノ瀬さんが僕のベッドにいる時点でおかしくないか??
ようやく頭が働き始め、日常的な異常に気付く。
とりあえず、一ノ瀬さんをクローゼットに隠れさせ様と立ち上がらせる。
「あん♡ 突然どうしたんですか? 」
だが、無慈悲にも扉は開かれた。
「真央くーん、そろそろ起きなさ────」
そこには、50代前半と言った女性があんぐりと口を開けて見ていた。
「あら〜・・・・」
うん、今日は恐らく朝から説教だろう。
その前に、久しぶりに顔を合わせた『家族』に言う事があるよね。
「お、おかえり。『母さん』・・・・」
☆☆☆
『七瀬 香織』。
僕の母親。何の仕事をしているのかはあまり話をしないのでわからないが、基本的に夜にスーツを着て仕事へ向かう。父さんと同じ会社に勤めてるらしい。
非常に温厚で優しい人だけど、怒らせると本当に怖い。
「あら〜、そう。紗奈ちゃんはそんなに真央くんにアピールしてるのぉ〜」
「そうなんですよ〜。でも、まおくんってば冷たくって・・・・」
「大丈夫よぉ。私もあの人には積極的にアピールしてやっと振り向かせたんだもの! 」
「そうなんですか!? 」
なんか、一ノ瀬さんと母さん意気投合してんな〜・・・・。
ちらっと二人の方を見ると、母さんはニヤニヤした目で、一ノ瀬さんはキラキラとした目でこちらを見つめていた。
「あの、二人してこっち見ないでくれます? 」
「何を言いますか。まおくんの姿は既に私の網膜に焼き付いています。まおくんを見ないと言うのは無理な要求ですね」
「じゃあずっと目を瞑って幻想の僕と戯れていればいいと思うよ? 」
「それは、寂しいです。くすん」
この人最近泣き真似が多くなったな。
一ノ瀬さんを無視してご飯に戻ろうとすると、頭をゴチンと叩かれた。
「痛ってぇ・・・・」
「こらこら〜、女の子に酷いことを言っちゃダメだろ〜? 」
「子供を殴るのもよくないと思うよ? 『父さん』。」
『七瀬 将生』。
僕の父親。この人もよくわからない仕事をしているが夜になると仕事へ向かっている。堅苦しい雰囲気を持った容姿をしているが、中身はノリの軽いだけのただのおっさん。
「紗奈ちゃん、真央の事よろしく頼むな〜? こいつ、結構だらしない所多いからさ〜」
「お任せ下さい! 私がまおくんを養います!! 」
あら嬉しい。初めて一ノ瀬さんが頼もしく見えたよ。
からかってくる両親に鬱陶しく思っていると、台所から咲がひょこっと顔を出してきた。
「朝からうっさいな〜、少しは手伝ってよ」
「あぁ、ごめんな、咲。今行くよ」
怒られたので手伝いに台所へ行くと、制服の上にエプロンを着用した咲が立っていた。
「ふむ・・・・」
「な、なに? 」
「いや、我が妹ながら可愛いな、と・・・・」
「はぁ? 当たり前でしょ?? 」
「あ、認めるんだ? 」
「だって努力してるもん。何なの? 寝惚けてんの?? お兄ちゃんキモいんだけど。ほら、早くこれ持ってって! 」
「え? あ、あぁ。って、ちょっと、危ないから押すなよ! 」
咲は味噌汁を渡してくると、僕をリビングの方へグイグイ押してきた。
なるほど、照れてるんだな? かわいい奴め。
「お兄ちゃん何ニヤニヤしてんの? マジでキモい」
「咲ちゃん、お兄ちゃん割とガラスのハート。」
その後、罵倒されながらも朝食を運び終えた。
そう言えば、なんで今朝は父さんも母さんも家にいるんだろう?
「「「「いただきまーす」」」」
「あら〜、おいしい。咲ちゃんまた腕を上げたんじゃない? 」
「お母さんが料理しないからね」
「そうね〜、今まではお仕事があったからね〜」
咲ちゃん、今日は不機嫌っすね?
反抗期なのかな??
「ん? 『今までは』?? 」
「どうしたの? 真央くん?? 」
「いや、え? 『今までは』ってどうゆう事?? 」
何だろう、凄く嫌な予感がするぞ??
「なんだ、香織さん。真央には言ってなかったのか? 」
「あら〜、そうね〜、紗奈ちゃんにびっくりして言い忘れちゃったかしら?? 」
「父さん達の会社────」
この瞬間、僕の時間はとてもゆっくり流れている様に感じた。
あぁ、もしかしたら、僕は不幸の星に生まれてしまったのかもしれないな。
だって、
「父さん達の会社、倒産しちゃった☆」
最近こんな事ばっかり。
☆☆☆
学校に着き、教室に入るといつも通り優太が話しかけてきた。
「よぉ、真央っ! 相変わらず夫婦一緒に登校か? 」
「そうなんです。まおくんってば昨日も激しくって、夜も眠らせてくれなかったんですよ? 」
一ノ瀬さんやめて。今日はツッコミを入れる気力が無い。
二人を無視し、自分の席へと向かう。
すると、佑と円香が心配そうに話しかけてきた。
「だ、大丈夫? 真央君。顔色悪いけど、一ノ瀬さんの所為?? 」
「違うよ? 」
「や、やっぱり、一ノ瀬さん迷惑だよね?? なんなら、私が始末しておくけど・・・・??」
うわぁ、朝から物騒。
円香は、想いをぶつけてきたあの日から少しおかしくなった。
僕に近付く女の子全員に嫉妬し、女の臭いを漂わせて帰ればその日は瞳孔の開いた目で日付が変わるまで見つめてくる。
後、最近あいつのメモ帳に学校中の女の子の名前と「正」が何個も書かれてるんだけど、あれは一体何をカウントしてるんだろう?
「でも、どうしたんだ、真央? 何かあったのか?? 」
さすがイケメンたっくん。円香の変貌も意に介せずって感じだね。
でも、この件は1人じゃ抱えきれないし。せっかくだから聞いてもらおう。
「それが────」
僕は、二人に今朝の出来事を話し始めた。
☆☆☆
「倒産って、どうゆう事だよ! なんで、急に・・・・」
「いや〜、父さんもびっくりだよ。『父さん』の会社が『倒産』しちゃうんだからな〜。あっはっはっ」
「いや、どうすんだよ、これから・・・・」
「あれ? 俺の渾身のダジャレは無視なの?? 」
いや、冗談言ってる場合じゃないでしょ。
一家の危機ですよ?
なんでみんな普通に飯食ってんの?
興味無いの、こうゆう事。
「で、どうすんの? 」
「あぁ、ダジャレは無視の方向なのね? まぁ、安心してくれ。既に次の職場は決まってるんだ」
「あ、そうなんだ。・・・・随分早いね? 」
「いや〜、実はな? 父さん、『ミツミネ』に引き抜かれちゃって。」
引き抜きって、本当にあるんだ?
て言うか、父さん、結構凄い人だったのか・・・・。
ん? 『ミツミネ』??
「『ミツミネ』って、あの『ミツミネ』!? 」
「そうだよ〜? 」
『ミツミネ』と言えば、車、楽器、農業など様々な産業に大きく貢献している大手企業じゃないか!!
「なんで!? なんでそんな所が父さんをッ!? 」
「お母さんもよ〜? 」
「もうどうなってんだよ、この両親ッ!! 」
何なの? 僕だけ着いていけてないの??
咲も普通に味噌汁啜ってるし、一ノ瀬さんはずっとこっち見てるし。こっち見んな。
「まぁ、お前の言いたい事もわかる」
「え、うん」
「実はこの話には裏があってな? 」
「あれ、また嫌な予感がする」
「真央、お前、『ミツミネ』の社長の娘さんとお見合いをしてくれないか? 」
「ぶはぁっ!? 」
「うわっ、汚ねっ! 」
一ノ瀬さんと咲が味噌汁を吹き出した。
「お義父様っ!? それは一体どうゆう事ですか!? 」
「お義父様ちゃうわ。」
「わ、私は許しませんよ、そんな事っ! 絶対に、絶対にっ!! 」
「父さん、この人は何故か一緒にご飯を食べてるけど全くの部外者だ。無視して話を続けてくれ」
何でだろう。最近こうゆう話が来ても動じなくなってるのが嫌だな。
「う〜ん、父さんもよくわかんないんだけどな〜、なんか、『君は黙って息子を差し出せ』って頼まれちゃってさ〜」
「なるほど、それは『頼み』じゃなくて『脅し』だね? 」
「え〜? そうなのかな〜?? 」
全く、なんでこんな一大事に慌てないんだよ、この両親は・・・・。
結局、何の情報も得られないまま僕は『ミツミネ』の社長の娘とお見合いをする運びとなってしまった。
☆☆☆
「どう? 伝わった?? 」
「「さっぱりわからない」」
「うん、だよね〜」
僕も説明しててもさっぱりわからないもん。
「で、でも、とりあえず『ミツミネ』の娘を始末すれば良いんだよね? 」
「おっと、円香ちゃん? なんでそんな結論に至った?? 」
「だ、だって、真央君に迷惑をかけたんだもん。当然の報いだよね? 」
「円香ちゃん、一ノ瀬さんと関わってから物騒な事言うようになったよね」
「そ、そうかな? で、でも、大丈夫! 証拠は、残さないから」
「うん、そうゆう事じゃなくてね? 」
「ま、真央君と結ばれるのは私。それを邪魔する人は許さない」
「いや、円香ちゃん、その話は・・・・」
「フラれてないもん・・・・。まだ、フラれてないもん・・・・。」
この娘、自分で地雷踏み抜きまくってて怖いよぉ・・・・。
でも、そうだよな。
円香にも、『幸せになる権利』がある。
それが、僕にしか出来ない事なのだとしたら────
次回、新キャラが登場します。期待はしないでください。




