妄想暴走少女 二宮 円香 5
『二宮 円香』編 最後です。
「いや〜、めちゃくちゃ怖かったねっ」
「あぁ、本当にな・・・・ってか、なんで茜は楽しそうなんだよ。佑は大丈夫か? 」
「ぜぇ・・・・はぁ・・・・いや、無理」
「だよなぁ・・・・」
ボク達は今、真央クンと一ノ瀬サンのデートを尾行してるよっ。
佑クンの提案でみんなで変装して着いて行ってたんだけど、途中で二宮さんに会ったんだっ。
真央クン達も特に進展は無さそうだったし、「二宮さんをナンパするフリして誰が最初に気付かれるかなっ? 」って言ったらみんな面白がっちゃって。
そしたら、あんな目に遭うなんてね〜。
いや〜、びっくりびっくりっ!
さぁ、真央クン。
君は、これからどうするのかな?
☆☆☆
「あれ? 今、円香の声がしたような・・・・」
気の所為、だよな?
「いましたよ? 」
「うそっ!? 」
「私がまおくんに嘘を吐くと思いますか!? 」
「いや、割と・・・・」
「・・・・かなちい」
まずいな、さっきの会話聞かれてたかな?
あいつ、今頃めんどくさい事考えてるだろうな・・・・。
「ごめん、一ノ瀬さん。ちょっと円香を追っていいかな? 」
「何故ですか? 」
「何故って・・・・」
「今は私とのデートの筈です。それなのに、何故行こうとするんですか?? 」
「あいつは、僕の幼馴染だ。家族みたいなもんだ。あいつは今、悲しんでいる。あいつは、『幸せになる権利』がある。だからこそ、今のあいつを放っておけない。ただ、それだけ」
「・・・・わかりました。行きましょう! 」
「ありがと! 」
良かった。わかってくれたみたいだ。
そうと決まれば、急がなきゃ!
「(『幸せになる権利』・・・・。あの時と、おんなじ)」
「ん? 」
「いえ、何も。」
「? そっか」
一ノ瀬さんは、また気になる事を呟いた。
さすがに、後でちゃんと聞いた方がいいかもな・・・・。
「でも、どうやって探すんですか? 結構全速力で逃げて行きましたけど?? 」
「まぁ、こうゆうのが得意な子を僕は知ってるから、その子に頼むよ」
「?? 」
僕は、スマホを取り出し、ある人物に電話をかける。
☆☆☆
気付いたら、私は知らない公園に来てブランコに座っていた。
一体、どうやってここまで来たんだろう?
携帯も忘れてきてるし。
あぁ、今日は本当についてないなぁ・・・・。
こんな時、真央君なら────
「あぁ、そうだ・・・・」
私は、真央君に振られた。
私は、真央君の為に生きてきた。
それなのに、私は真央君に選んでもらえなかった。
一ノ瀬さんが現れて、全てが変わった。
全てが終わった。
涙が流れる。
羨ましい。
憎たらしい。
疎ましい。
妬ましい。
『あいつ』の所為だ。
『あいつ』の所為で
涙が流れる。
「真央、くん・・・・」
「なに? 」
「────え? 」
☆☆☆
返答が来ると思っていなかったのか、円香はビクンと跳ね上がる。
「なんで、ここに? デートは?? 」
「中止」
「一ノ瀬さんは? 」
一ノ瀬さんが僕の背後からひょこっと顔を出す。
「いますよ。ちゃんと。」
「・・・・そっか」
うわぁ、やっぱり仲悪いのかな?
そりゃ、そうだよな。恋敵だもんな。
しかも、その中心にいるのが俺だもんな。
・・・・あれ? これ修羅場じゃない??
うわぁ、何も考えずに連れて来ちゃった。
冷静に考えたらこの状況めっちゃ気不味いじゃん。
失敗した・・・・。
僕が項垂れていると、最初に口を開いたのは円香だった。
「真央君は、やっぱり一ノ瀬さんと付き合ってるの? 」
「いや、付き合ってないよ」
「えっ!? 」
「ちょっと一ノ瀬さん黙ってて? 」
この人連れて来るのは本当に失敗だったな。
「じゃあ、なんで私じゃダメなの? 」
「それは────」
「私が幼馴染だから? 私の髪が短いから? 私の胸が小さいから? 私のスタイルが良くないから? 鬱陶しいから? 嫌いになったから? それとも────」
「落ち着けって、円香 」
「『あの日』、私が逃げたから・・・・? 」
「違うッ!! 」
僕が突然大声を出したので、女子2人をびっくりさせてしまった。
「円香、話はちゃんと聞いてくれ」
「嫌だよ。聞きたくない・・・・」
「なぁ、頼むよ」
「私を選んでくれない真央君の話なんて、聞きたくないっ!! 」
バチンッ!
一ノ瀬さんが円香の頬をビンタした。
かなり痛かったのか、円香の目からは涙が流れ出してしまった。
しかし、一ノ瀬さんは円香の肩を掴み、グイッと顔を近付ける。
「あなた、いい加減にしてください」
「な、何よ。私から真央君を奪った癖に!! 」
「違います」
「何が違うって言うの!? 」
「真央君は、最初からあなたの『モノ』じゃありません。」
「そんなのわかってる! でも、真央君は、私とっ! 」
「そんな子供の頃の口約束を男が覚えてる筈が無いでしょう! 」
今の言葉は胸が痛い。
確かに、僕は忘れていた。
だからこそ、円香を傷付けてしまった。
「したもん・・・・約束、したもん・・・・」
「恋愛は早い者勝ちではありません。根気強く想い続けた方が勝つんです」
「それなら、私だって! 」
「一方的に気持ちをぶつけていても想いは通じませんよ!! 」
え? それあんたが言うの??
すっごいブーメラン刺さってない??
日頃の行いを棚に上げてよく踏み切ったな??
しかし、言っている事は正しい。
円香のやっていた事は、僕からしたら『愛情の押し付け』なのだ。
だからこそ、どうしても一歩引いてしまう。
「円香さん、あなたは、気付くべきです。自分の愚かさを。自分の過ちを。」
「やめて! これ以上私を惨めにしないでッ!! 」
円香が振り払おうとしても、一ノ瀬さんは、淡々と言葉を続ける。
「あなたは、『幼馴染』と言う立場に甘えて何もしてこなかった。あなたは、『結婚』と言う目標に固執し過ぎて『恋人』になる努力をしてこなかった。」
「それでいいじゃない! 頑張ってるのに! 努力してるのに!! 全部無駄だったって事!? そう言いたいんでしょっ!? 」
「そうじゃありません。いいですか、円香さん。あなたの想いは間違えていない。間違えたのは、『過程』を飛ばして『結果』を得ようとした努力の仕方をしたからです。あなたは少し、『重い女』だっただけです」
一ノ瀬さんの言葉に徐々に円香が抵抗をやめる。
「重い、女・・・・」
「そうです。今のままでは、まおくんのあなたへの評価は『少しめんどくさい娘』なのです」
「だから、私は真央君に振り向いてもらえなかったってこと? 」
「そうです。あなたの『想い』は『重い』んです。」
「やめてよ・・・・急にダジャレを言うのは」
円香の顔に、少しだけ笑顔が戻る。
「まおくんは、まだ私に振り向いてくれません」
一ノ瀬さんが呟く様に言う。
「まおくんは、私と、あなたに好かれています。つまり、三角関係ですね」
「・・・・うん、そうだね」
「だから、私達────」
一ノ瀬さんは、僕の下へ駆け寄り、腕を絡めてきた。
そして、円香に向けて叫ぶ。
「私達は、『恋敵』ですっ! 」
「・・・・うんっ! 」
夕焼けを背後に見えた円香の顔は、とても綺麗に見えた。
☆☆☆
いや〜、良かった。
なんとか和解してくれたみたいだ。
本当に良かった!
このまま二人が仲良くなってくれたら嬉しいな!!
・・・・でも、おかしいな。
路地裏を出て円香の事を聞かれた時、『一ノ瀬さんにストーキングされてる今の状況では付き合っていける自信が無い』って言ったんだけどな。
なんか、一ノ瀬さん、めちゃくちゃ自分の事を棚に上げて喋ってたな。
しかも、それっぽい事言って解決しちゃったし。
それに、言い出せる空気じゃないし。
言わなくていいかな!? うん!!
みんな幸せになれそうだし!
めでたしめでたし!!
☆☆☆
薄暗い部屋の中、白衣を着た複数の女性がモニターを覗く。
モニターには、ベッドで眠る1人の少女が映っていた。
「まだ、寝てますね」
「はい、さすが『眠り姫』ですね」
「えぇ、とっても可愛いです」
「話がズレましたね? 」
部屋の雰囲気とは裏腹に、女性達は楽しそうにモニターを覗き込んでいる。
「あ、起きますよ! 」
女性の1人が、しーっとジェスチャーをしながら周りをなだめる。
『う、うー・・・・』
「お嬢様、夢は見られましたか? 」
『うん、みられた。ありがとう』
「・・・・どんな夢でしたか? 」
少女は、目を擦り大きなあくびをする。
『ふわぁ〜・・・・せんぱいの、ゆめ、みてた』
「「「「・・・・・・」」」」
女性達は顔を見合わせる。
「『せんぱい』って、この前女の子の居場所を探す為に連絡してきた人ですよね? 」
「あの時、お嬢様は彼の声を聞いて嬉しそうにしていましたね」
「やはり、お嬢様は彼の事を・・・・」
「彼を、婿として迎え入れれば────」
その後、女性達は顔を見合わせると、薄暗い部屋に笑い声が響いた。
時を同じくして、1人の男子高校生が大きなくしゃみをした。
「ぶえっくしょいっ!! 」
「まおくん、風邪ですか? 」
「う〜ん、そうなのかな? 」
「ところで、先程のくしゃみで私へと散布されたこの唾液は私へのご褒美として採取させていただいてもよろしいのでしょうか? 」
「は〜い、ごめんなさい、今拭きま〜す」
「むぅ、まおくん、いけずです・・・・」
「さすがにそれは気持ち悪いと思うよ、一ノ瀬さん・・・・」
「二宮さんまで、ひどいです・・・・くすん」
一般男子と変わり者達の日常は続く。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
円香ちゃんは、「自己完結型の性格で周りを少しイラッとさせる少女」を目指したのですが、どうでしたか?
次は後輩、『三峰 言葉』編です




