表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/93

▶︎ 召喚されました 5(男子高校生その二)

「あんたって、ホント、サイテー」

嫌悪感しか乗らない冷たい声が聞こえてきた。

「は、るなちゃん……」

相手は今にも泣き出しそうだった。


女王さまがまたやってるよ。

てか、誰が通るかわからないこんな往来では止めて欲しいよね。


廊下の角に身を潜ませて、女王さまの嵐が過ぎ去るのを待った。


側から見てると、継母とシンデレラって感じだよな。

本人は分かってないだろうけどね。


しばらくすると、反対側から王子がシンデレラを迎えにきて、そのまま攫っていく。

女には厳しくて男に甘い女王さまは、成すすべもなく二人を見送っている。

内心はらわた煮え繰り返ってんだろうな。


しっかし、晃誠先輩も柄じゃないだろうに、良くやるよ。


そんな事があった数日後、またもや遭遇してしまう。


「聖女さまだろうが、女王さまだろうがなんだっていいが巻き込まないでもらいたいね。持ち上げられていい気になってるだけで、現実を知ろうともしてないのはあんただろう」


シンデレラを背に庇って、継母に吐き捨てる王子さま。

やー、かっこいいねえ。

呆れちゃうけどね。


現状、オレらの中で一番発言力があるのは赤羽根春菜だ。

その赤羽根を敵に回して王宮で悠々生活していくことはできない。

それも、晃誠先輩とあの女の先輩はスキルがないことで、王宮での生活は肩身が狭いはずだ。


「私に逆らったらどうなるか見せてあげる。覚えてなさい!」


捨て台詞を残して立ち去る女王さま。

シンデレラは王子の後ろで謝りながら泣いている。


「大丈夫だから、きっと何も出来ないさ」


慰めている言葉とは裏腹に、先輩の瞳は強い光を放っているように見えた。


晃誠先輩って、あんな人だったっけ?


先輩から目が離せなかった。


不意に強い風が吹き、彼がこちらに視線を向ける。


瞬間、目が合って、オレは慌てて視線を外して来た道を引き返した。


オレって、昔から間が悪い。


この間の悪さがなければ、今頃は日本にいて、普通の高校生活を送っていたはずなのだ。


その時も、何でそんな所に行こうと考えたのか、自分でも理解できなかった。

普段なら足を運ばない場所だ。

なのに、何故かその場所にいた。


男の喘ぎと女の甘く強請る声が耳に届く。


うわ、本物の王子と赤羽根だよ。

まじか、第二王子を食ったのか。

最近の赤羽根の態度が図に乗ってるとは思ってたけど、なに、これって、王子妃狙いってことかよ。

女って恐ろしいな。


呆然としていたのは数秒ほどだったが、その短い間だけでも急いで回れ右をしたくなる痴態だった。


「気持ち良くしてあげるから、はるなのお願い聞いてくれる?」


赤羽根の甘ったるい声に、苦しそうな王子の喘ぎが重なる。


おま、何してんだよ!

童貞のオレには刺激が強すぎるぜ!

てか、そういう事は人の来ない自室でやれってんだ!


我慢させられている王子が気の毒で、オレはこれ以上は見ていられないとばかりに踵を返した。

その時だ。


「お前と、共に来た、女の、一人だ、な。俺を、怒らせたことにして、捕らえてやる」

「捕まえるだけ?」

「王族、への不敬は、反逆罪に、できる」

「反逆罪?」

「は、反逆罪は、死刑だ」


待て待て待て待て、何だよ、そのお願いは!


オレは慌てて晃誠先輩の元に走った。


今は晃誠先輩と話してないけどさ、オレは彼が先輩として好きだった。


晃誠先輩はBチームの主力選手の中でも、とりわけ後輩の面倒見が良い人だったから、オレ達一年で悪くいう奴なんていなかった。

確かに、レギュラーじゃないし、これと言って特徴のある人ではないし、大勢の中に埋もれてしまう人ではあるんだけどな。

でも、何故か人好きのする人だったっけ。


別にさ、赤羽根や三年の先輩二人をちやほやするのは、それでオレが恙無く生活できるなら構わない。

晃誠先輩と疎遠になっても別に何とも思わなかった。

プライドで腹は膨れないしな。


しかし、同じ災難にあった友人を殺す算段は、流石にやりすぎだ。

女の先輩が反逆罪で捕まったりしたら、絶対先輩も巻き込まれるに決まってるじゃん。


まじ、やばいって!


そして、オレの間の悪さはここで最高潮に達したのだ。


「晃誠先輩! 先輩達、反逆罪で殺されちゃう!」


先輩の姿が見えたので、勢いのまま走り込んで、その背中に衝突した瞬間、周囲が真っ暗になった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ