第四幕 冤罪はなかなか拭えない
前回までのあらすじ
突然の合い言葉要求にまさかの
「アリババか!」ツッコミ。そして俺はうまいことを言う。
「ありばば〜?あはは〜、違うよ〜。合い言葉が違うよ〜」
どうやら俺のツッコミを合い言葉だと勘違いしたらしい。
いや、そりゃ違うでしょうよ。これが合い言葉だったら俺だって笑うわ。
「あと10回間違えたらアウトだよ〜」
「………」
まだそんなにチャンスあんのかよ…などと心の中でツッコミをいれつつ、さすがにこれ以上は付き合いきれないと、俺は一時的に怒り鎮め、大人の対応でこの状況の打開を図ることとした。
「悪いけど、今はそんな遊びにつき合っている暇はないんだ。ここを開けてくれないか?」
「駄目だよ〜。合い言葉を言わないと入れてあげないよ〜」
あくまでも合い言葉にこだわる少女。ふふ、では仕方がない。大人の対応と言うものを見せてやろう!
「開けてくれたらお菓子あげるから、ね?いい子だから開けてよ。」
大人の対応。それ即ち買収なり。これぞ大人のやり方よ!さぁ、わっぱ!この誘惑に耐えられるかな!?
俺は勝利を確信して、相手の言葉を待った。しかし彼女の口から出た言葉はまたしても俺の予想を大きく裏切るものだった。
「知らない人からモノを貰っちゃいけないっていわれてるから駄目だよ」
えぇぇえええ!?
人の家壊しといて何でそんなとこだけ常識的なのさ!?てか今俺完全に不審者扱いされてる!?
「じゃあ私、色々忙しいから」
「ちょっと待って!何その余所余所しい態度!さっきまであんなに馴れ馴れしかったのに!?俺は別に怪しいものじゃ…!」
ブツンッ
俺の弁解を最後まで聞くことなく、その通信は途絶えた。
「…何故だ」
俺はその時本当に泣きたくなった…。
土地を奪われた挙げ句の果てが変質者扱いなんてあんまりだ。理不尽すぎる…。
「っはぁぁ〜…」
俺は扉に背を向けると、まだ登り切っていない太陽を見上げ、大きくため息をついた。
「はぁ、もうどうでも良くなってきたな…」
リストラされた中年サラリーマンのようなことを呟く俺。そんな俺の発言は、すでに負け組入り決定なんじゃないかなー、なんてどうでもいいことを俺に考えさせて、尚更俺を鬱にさせた。
「はぁ…」
もはや俺はため息の大売り出し状態である。
そんな今の俺には、周りを気にする余裕もなく
「おい、誰だお前?」
その少女の接近にまったく気がつかなかったとしてもおかしくないだろうと思うわけで…。
「そんな所に立ってたら私が家に入れん。さっさと去ね、しっしっ!」
…とりあえずこの子を殴っていいのカナ?