第二幕 一夜城は実は一夜ではつくられていない
俺は我が目を疑った。
昨日まで確かにそこにあった俺の家が、まったく別の家に取って代わっていたのだ。
しかも俺が気を失っていた半日も経っていない間に。天下の一夜城でさえ一夜では建たなかったというのに…
俺はまだ夢の中にいるのではないかと頬をつねった。
「いへーよ」
やっぱり痛かった…。
俺はへたりとその場に座り込むと、茫然とその家を見上げた。
短時間で造ったにしては立派な家だ。扉も窓もちゃんとついていて奥行きもある。どうやら張りぼてではなさそうだ。
しかも無駄に二階建てで、全体的に丸みを帯びたその形はキノコのよう。というかキノコをモチーフにして造られたのかもしれない。屋根赤いし。
まるでおとぎ話にでも出てくるようなそんな家だった。
「シルバニアファミリーかっつーの…」
正直この町にはまったくの不釣り合いで、ハンパなく痛々しいその家を眺めて…俺はふと考えた。
これってやっぱりご近所からみたら、俺がリフォームしたように思われるのかしら?
「あら奥さん。見た?あのお家、プーくすくす」
「見た見た。趣味疑っちゃうわよねー、プーくすくす」
そんなご近所での会話が脳内で流れ出す。
「…は、」
恥ずかしすぎるぅぅう〜!俺何にも悪くないのに社会から爪弾きにされるぅ!
もはや家を壊されたことよりもショッキングなこの事実に俺は動転した。何とかしなければ!
俺は素早く立ち上がるとその家の玄関へと走り寄った。よく見れば扉の横にはいっちょ前にインターホンなんかがついていて…てかこれ俺んちのインターホンじゃねぇか!!
俺はもろもろの怒りを己の指にこめてそのインターホンをプッシュした。