親友の忠告
ヘタレサガラと天然ユーミ。
紅茶の彼は、この時まだ名前出してなかったです。
「サプライズは必要だと思うよ」
「は?」
唐突な言葉に、サガラは思わず間抜けな声が出る。
仕事の詳細を報告し、今まさに帰途につこうかというところだった。
相手から発せられた言葉はあまりに脈略がない。
「だからさ、君の帰りを待っている健気な子に、たまにはサプライズプレゼントを、渡してみたらいいと思うんだ」
「……はぁ!?」
ユーミのことを言っているのだと気が付くと、更に間抜けな声が出た。
「馬鹿か。何誤解してやがる。あいつは健気って柄じゃ……」
「ユーミっていう、異世界から落ちてきた推定15,6歳の黒髪セミロングの利発そうな女の子だろ? 偏屈な君の側にいるなんて、それだけで十分健気じゃないか」
「なっ。しっかり調べあげてんじゃねーかよっ。いつの間に嗅ぎまわりやがった!」
「ふっ。警戒していたようだけど、私にかかればこんなこと造作もない」
「くそっ。てめーには関係ねぇだろ」
「私は心配しているんだよ。女性の扱いに不慣れな君をね。いいかい? たまには、花の一つも贈るべきだよ。それだけで、女性は喜ぶものだ。君だって、好きな女の子の笑顔をみたいだろ?」
「なっ」
「想いは行動しなければ伝わらないものだ。これは、親友としての忠告だよ」
「訳のわかんねーこと言ってんなよ。つか、誰が親友だ! 寝言は寝てからいいやがれっ」
そう言い捨てると、乱暴にドアを閉め部屋を後にした。
「相変わらず分かりやすくて面白い」
自称親友の男はクスクスと笑い、淹れたての紅茶に口をつけた。
………………
「ん? どうしたのそれ?」
帰ってきたサガラの手には、可愛くラッピングされたピンクの花束があった。
あまりにも不釣り合いなその物体を見て、ユーミは目を丸くする。
「こ、これは、お……」
「お?」
「落ちてた……」
「へ?」
「だからやるっ」
ユーミに花束を押し付け、サッサとその場を後にする。
「え? ちょっ、花束拾ってきちゃダメでしょ!? 落とした人がきっと困ってるよ。サガラってば!」
逃げるサガラと、それを慌てて追うユーミ。
「どうして素直に渡せないのかしらねぇ?」
「ファイトです。サガラ」
ジュリアとザットは、それを生温かい目で見守るのだった。