Love・love・love……?
異世界にやってきて数日。その生活に慣れ始めた頃だった。
「ユーミ。元の世界に帰れることになったぞ」
帰って来たサガラは静かにそう告げた。
「え!?」
この世界に来た直後だったら、飛び上がって喜ぶ知らせだ。
それなのに、ユーミには嬉しさよりも寂しさの方が大きい。
「ユーミがいなくなったら寂しくなりますね」
ザットはすでに涙ぐんでいて、ユーミも思わず瞳が潤む。
「泣くなよ」
サガラが絞り出すような声で言い放つ。
見れば、サガラは眉間にきつく皺を刻み何か痛みに耐えるかのように口を引き結んでいる。
「サガラ?」
「泣くくらいなら行くな」
「!?」
肩を強く掴まれ真剣なまなざしを向けられる。
「好きなんだ」
「へ!?」
「誰にも負けねーくらいに好きなんだよっ。誰にも渡したくない。俺だけのものにしたいんだっ」
「そ、そんな……」
強く熱いサガラの眼差しに、ユーミの体温はみるみる上がっていく。
掴まれた肩が痛い。
「俺は……」
「だってそんなこと言われても私……」
心がグラグラと揺れる。
まさか、サガラからそんな情熱的な言葉が飛び出すとは思わなかった。
「俺はお前が作ったクッキーに本気で惚れてんだよっ!!」
「はい!?」
「あれをもう食うえなくなるなんて耐えられねー。還るなら、一生分作ってからにしてくれっ。つか、作らねーと還さないかんなっ」
「し、知るかー!!」
チーン。
「はっ! 夢……ははっ。夢ね」
ユーミが目を覚ますと、クッキーの焼きあがった甘い香ばしい匂いが広がっていた。
オーブンタイマーが切れた音で目が覚めたらしい。
昨日、サガラが食べたがっていたクッキー。
大量に作って焼き上がりを待つうちに眠っていたらしい。
「なんて夢なのよ」
夢ながら、あまりにも恥ずかしい勘違いに恥ずかしさを通りこしてムカついてきた。
「ただいまっと。ん? 甘い匂い。もしかしてクッキー……」
「作ってない!」
その日焼きあがったクッキーが、サガラの口に入ることはなかったのだった。
コメントいただいて、デレるサガラを書こうとして玉砕しました……というss。
きっといつかデレるサガラを書きたいです(希望)