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龍王記

作者: ネキア

サボっていたリハビリに思いつきでテキトーに書いたのでお茶漬けのように薄味かつ少なめ。

適当に流し込んでくだされば幸い。

 世界、『ロードノグ』には、世界の中心に一匹のドラゴンが住み着いていた。

 有史以来、あらゆる人間がその脅威を打ち払おうと立ち向かったが、誰一人打ち倒すこと叶わず、死して故郷に帰ることすらできなかった。それほどにドラゴンは強かったのだ。

 誰も彼もがそれを諦め、「自然災害のようなものだ」と自分を欺き目を逸らす。そうしてこの百数十年の間、8つの島が海中に沈み、12の山が崩れ4つの国が土砂崩れに埋もれ、何十何百万の犠牲を出しながら時を過ごしてきた。

 しかし、この日は違った。現れたのだ、伝説のドラゴンを打ち倒そうとする者が。

 自らを勇者と名乗るその男は、まだ成人してすぐといった程度の若者であり、青空のように深い色の外套の下に純銀の鎧を着込み、背には己の背丈ほどもある幅広の剛剣を背負い、頭部は人あらざる者の手によって作られた神秘の魔導鋼で作られた兜が被せられ丹精な顔立ちの上半分を覆っている。

 その細く、しかし鍛え抜かれた筋肉によって補強された腕は背の剣の一振りで岩山を真二つに切り裂き、きつく結ばれた口を開けばたった一節の詠唱で平原を瞬時に焼き払う炎と万物の挙動を許さぬ絶対の凍気を同時に生み出す魔法を放つ、正に人域の領域を超越した勇者であった。


「どうか、どうかあの忌まわしき龍王を打ち滅ぼしてくだされ」


 ドラゴンの住む世界の中心の地下洞穴からほど近い、つまりは最もドラゴンの挙動の影響を受けるひなびた寒村の村長がやつれた顔を涙に濡らしながら震える指で弱々しく握ってくるその指を、勇者は笑いながら握り返す。

 きっとできるという確信などない。その胸中は不安や重圧、ひょっとすればこの世で最も強かったが故にドラゴン退治などに向かわねばならなくなった己の運命を定めた神へ不満等も渦巻いているだろう。しかし、いくら察そうと、いくら祈ろうと何の意味も無い。


「あなたに神のご加護があらん事を」


 両手を合わせて跪く村人達に背を向けて、勇者は歩き出す。村人達は勇者の姿が見えなくなっても、ずっと祈り続けていた。

 そのくだらない光景には呆れ果てるばかりだ。いくら強く祈ろうと、いくら長く祈ろうと、この世界に神はいないのだから。

 未来を掴むには、彼がその腕で切り開くしか道は無いのだ。

 日が落ち、朝になると勇者は村を出る。供の者はおろか馬車すら用いず、己の足だけで歩んでいく。

 人の仲間がいないのはいい。きっとどれほど強い人間だろうと彼にとっては足手まといにしかならないだろう。しかし移動手段である馬がいないのはどういうことか。あの寂れた町では容易できなかったのか、はたまた勇者が自らの足で進む事を望んだのか。

 後者の場合であればその理由は何だろう。己の力のみで成し遂げるという責任感か、あるいは一刻でもその瞬間を遅らせたいという無意識の行動か。これもやはり知る術はなく察する事しかできぬ事だ。

 勇者の歩調はまるで変わらず、朝も昼も夜もなく歩き続けるようで、そうなればドラゴンと相対するのは5日ほど後か。その足取りにも表情にも怯えや後悔は一切見えない。ただ成し遂げなければという強い意志が込められていた。

 彼はきっと何があっても命ある限り足を止める事は無いだろう。強者としての責任を受け止め、受け入れ、どこまでも進み続けていく。実力差など頭にはない。

 やらねばならないから、やる。やれるかやれないかではなく、やるのだ。

 彼は絶対に止まらない。その意志の強さこそが、彼の勇者たる資格なのだから。

 そしてそれをはっきりと理解して、僕はふぅと弱々しく溜息を漏らした。


『吼雄々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々』


 全世界の大気を一飲みにして尚足りぬ容量の肺胞から搾り出された吐息が声帯で反響し膨れ上がり、ひとつひとつが山よりも高く、剣よりも鋭く、金剛石よりも硬い牙の隙間を通り抜けて僕の口から吹き抜ける。放たれた呼気は緩やかな大気と激突し振動を帯びて岩壁に衝突する。そしてふやけた紙でも貫くようにやすやすと岩壁を刳り貫き、それでも尚勢いを失わずむしろ益々と振れ幅を高く小さく増していき、砂粒よりも更に小さく削り取られた岩壁が摩擦熱で燃え上がる。膨大な熱量すら伴ったそれは更に温度を増して行き触れるもの全てをマグマに変えながら突き進み、未だ遥か彼方にいた勇者の足元から噴出し思考の間すら無く一瞬の内に彼を飲み込んだ。

 口を閉じ、気配ではなく千里眼で外を確認する。俗に龍王の咆哮(ドラゴンブレス)と称されるただの抑え目の溜息により勇者は消し炭すら残さず消え失せ、噴出した溶岩によって最寄の村は勿論、大陸中の国々が焼かれている。被害はそれだけではなく、息を吐いた時の身じろぎが星の至る所で地割れや津波を引き起こし、少なくとも高度な文明を持っている生物が生き残る可能性は限りなくゼロに近いと言える惨状を映し出していた。

 創世以来、913回目の文明崩壊に溜息をつき、頭を抱えて転げまわりたい衝動を必死に抑え思い悩む。

 ちょっと警告して止めるつもりだったのに、また滅びてしまった。危うく753回目の人類滅亡を迎えるところだった。

 胸中に渦巻くフラストレーションを少しでいいから発散したい。叶える事の出来ないその願いに蓋をして、しかしどうせもうほとんど滅びているのだから少しでもいいかと妥協し軽く尻尾を動かす。この瞬間に人類に753回目の滅びが訪れた。少しばかりの満足と、その数倍の後悔が胸に湧き上がる。

 千里眼が映し出す新たな惨状に思わず神に祈りかけ、やめた。

 この世界に神はいない。だって、世界の次に僕を造った瞬間にその産声を浴びて死んでしまったから。

 この世界には神も、魔王も、天使と悪魔も、冥界の亡霊達も、宇宙外から来る脅威も、異世界からの侵略者達ももういない。勇者も新たにいなくなった。みんなみんな、死んでしまった。寂しさにじゃれついて、痛みに怯えた身じろぎで、軽く追い払うつもりで、危険を知らせるつもりで、みんなみんな僕が殺してしまった。

 この世界に神はいない。神への祈りなど馬鹿馬鹿しい。

 それでも僕は、祈らずにはいられない。

 嗚呼、神様。

 僕が滅ぼせない存在を、もしくは僕を滅ぼせる存在を。

 どうかどうか、この|世界を統べる龍王《一人ぼっちの哀れなトカゲ》に与えてください。

 祈りが届かない事など知っている。それでも溜息ひとつ吐くことも許されず、ただ胸中に重苦しい穢れた靄が広がっていくのをただただ感じていた。

あー俺も裏切り者になってエリーゼたんにちゅっちゅされたい。

嘘つきになって女子中学生にぱんつ見せられるのでもいい。

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