『地獄.4』
あれからどのくらいたった?
まだ希一は歩みを止めない。
「………助けて……くれよ…」
もう三日は経っていた気がした。
希一は時間のことしか頭になかった。
「あと…何時間だ……?」
そのとき希一は歩みを止めた。
「……ははは、あはははははは…」
彼は笑った。
この極限の状態で。
「ははははっ!あーはははははははは!!」
彼の人格は崩壊を始めた。
「人も、動物も、魚も、自然も、家も、会社も、友達も、親も…」
彼の心は限界だった。
「いない。何もないんだ。何もかも…」
足下から崩れ落ちた。
「あはははははははははははははははは!」
高笑いが続く。
もう彼は止められない。
「………俺は何なんだ?一体何のために生きていたんだ?」
元も子もないことを口にする。
「生きていても意味なんかないんじゃないか?こんな俺が憎い。憎い。憎い」
そう言って彼は自分自身殴り始めた。
「憎い…憎い……」
顔は腫れ上がり、口の中は血の味がした。
「………俺って一体誰だっけ?」
何かが割れる音が彼の頭に響いた。
「…あれ?俺の名前は?」
彼はいなくなった。
もうこの世に彼はいない。
「俺って……?名前は…?あれ…?どんな姿だっけ…?」
頭の中で想像することができない。
「………ふふふっ…あはは……あははははははははは…あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
高笑いは止まらない。
いや、止められない。
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!俺は何だっ!?一体何なんだっ!?」
髪の毛をかきむしる。
皮膚を傷つけるほど強く。
「ああぁああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そして最後の言葉を彼は口にする。
「俺は………ドコ?」
その場に倒れた。
そして[彼]は死んだ。




