『地獄.2』
あれから何分たった?
いや、何時間?
何十時間?
希一はまだ歩いていた。
「何なんだよっ!」
イラついて足で地面を蹴る。
靴も履いてないのに。
しかしそこで気付いた。
「……やっぱり………砂?」
希一は地面がどんなものか分かった。
とてもやわらかい[砂]だった。
なぜさっき気付かなかったのか不思議なくらいだった。
「ってことは砂漠?いや、暑いよな…」
どこなのかと思考を張り巡らせる。
「砂、砂………この砂サラサラし過ぎ?」
砂のようで砂ではないような。
何とも表現しにくいものだった。
考えていても仕方なかったので、希一は再び歩き出した。
「………」
やはり何もない。
真っ暗で砂があるだけ。
何も見えない。
「一日くらいたったかな…」
希一は止まり、横になった。
しかし眠りにはつけない。
「……トイレはここでしていいのか?」
聞いてみても仕方ないので、その場ですることにした。
そして再び歩き出した。
「………何だか怖いな…」
誰もいない。
いつもなら東京で嫌というほど人間を見ているはずなのに。
居なくなったらこんなに寂しいものなのか。
「居なくなったら……?」
希一は恐ろしいことを想像してしまった。
「……人類が滅びたわけじゃないよな?」
ありえない。
たった一日で人間が滅びるなど。
しかし、今の希一はそんなことも本気に思えてしまうくらい追い込まれていた。
「うそだろ?俺が生き残りなわけないよな?」
返事はない。
「誰かいないのか!!本当は居るんだろ!?」
返事はない。
「何なんだよぉぉぉ!!」
怒りに身を任せた希一の声は、誰にも届かなかった。




