『地獄.1』
「………ん~」
希一は深い眠りに落ちていた。
「………ん?ここは?」
重い瞼を開けてみたが、そこは真っ暗だった。どうやら希一意外には何もないらしい。
「おーい、誰か~」
呼び掛けに答える者は誰一人おらず、希一は暗闇を探索することにした。
「………何にもないな」
歩いても歩いても、ぶつかる気配すらない。ここは部屋ですらないらしい。
「これが地獄の三日間ってやつなのか?」
とても暗い場所。どこかしら日本ではないような気がする。
「時間すらわかんねぇな」
あいにく腕時計を着けるのを忘れてしまったらしい。サラリーマンである希一は腕時計をいつも着けているはずだが。そのとき希一は気付いた。
「……!?俺、服着てないのか!?」
希一は自分が全裸なことにやっと気付いた。しかし寒くはない。そしてここはどこなんだと改めて思う。
「何なんだよ……」
地獄だとしてもたった三日。
それさえ乗り越えれば普段の生活に戻れる。
「贅沢な暮らしは良かったなぁ」
希一は一ヶ月前のことを思い出していた。
「また当選しないかなぁ」
そんなことを思い、希一は横になった。
地面の感触は何だかあいまいなものだった。
床なのか、はたまた土なのか。
「砂……ってもっとサラサラしてるよな」
そんなことを口にしてまた眠りについてしまった。
傲慢な暮らしの疲れがここできたのだろう。
時間は分からないが、かなり寝ていた。
「………」
また希一は重い瞼を開けた。
真っ暗だ。
何もない。
急に希一は怖くなった。
「帰れるのか……?」
焦った希一は叫んだ。
「おーい!誰かいないのか~!」
返事はなし。
部屋の中なら反響してもいいのに、それすらもない。
それから希一は走り出した。
「そういえば飯はどうするんだっ?」
止まった希一は気付いてしまった。
自分がどれほど過酷な状況下に居るかを。