『天国』
【拝啓
在坂 希一様
このたびは当選おめでとうございます。
貴方様にはこれから一ヶ月間、『天国』がプレゼントされます。
その後、三日間だけ『地獄』がありますが大したことはありませんのでご了承を。
そろそろ迎えの者が参りますので、何とぞよろしくお願いします。
敬具】
という手紙が在坂の家宛に送られてきた。
希一はごくごく普通の独身サラリーマンであり、こんなものに応募する余裕などない。
訳も分からず、ただただ高級リムジンに乗るだけだった。
希一が向かった先はお城みたいな立派な家。
そこはさながら西洋のようで、レンガ造りの4階建て、セントラルのシャンデリアに驚きつつ、テレビでしか見たことのないような長テーブル、著名な画家の作品の数々、銀食器、そして豪華な食事。
至れり尽くせりとはまさにこのことだろう。
西洋の貴族はこんな生活をしているのだろうかと思いつつ、その夜は眠りについた。
次の日には希一はもうすでに貴族だった。
毎日遊びほうけ、日本だけでは飽きたらず、世界各国を旅した。
そんなことをしている間に、あっという間に約束の一ヶ月が来てしまった。
このとき希一はこの生活が身に染みてしまったのか、このままでいたいとうなっていたが、「約束ですから」と言われ、しぶしぶ了解をした。
これから恐怖の三日間が始まることも知らずに―…




