席替え
隣のヒロイン
高校生になったら変わると思っていたことを2つ発表しよう。
1 モテると思っていた。
中学生より大人の階段を登ったから、案外簡単にモテたりなんて思っていたいたが、これまた世界が意地悪をしてくる。
2 可愛い友達ができると思った。
あんまり社交的ではない僕に話しかけてくる可愛い子を想像していたがそれは起こることはなかった。
よくよく考えたらそれはそうだろう。高校生デビューでした髪型も手入れをめんどくさがってもうボサボサだ。
それに、生徒指導の先生には目を付けられてもいるし。幸せなことより、不幸なことの方が多かったりもする。
窓を見つめては浸るを繰り返す。このクラスには友達がいないのだ。作ろうとは思ったが、作れなかった。あと一歩届かない。
進んで。歩みを得たと思っても結局はビビって元に戻ってしまう。
はぁ、もう少し自分に社交性があったらよかったのに。窓から見える海を眺める。本当に綺麗だ。
何1つゴミなんて見えない。でも、それも案外外側だけかもしれないな。
入学してから数ヶ月が経とうとしている。とっくにクラスの人気者は決まっている。いつも和気藹々と喋っている――金城穂乃果。
明るくて。いつもニコニコしている。そんな彼女はニコちゃんなんて呼ばれてたりする。こんな僕にも挨拶をしてくる人だ。相当人が良いのだろう。
はっきりと分かると思うが、住む世界が違うと言うやつだ。彼女の常識は僕にとって異常で、僕の常識は彼女にとって異常だ。
生活のサークルが違うので仕方がないだろう。
まぁ、こんな浅はかな考えばかり繰り返しているからモテもしない友達もできないのだろう。
「はい。みんな座って〜」
ドアを開け、柔らかい表情をしながら教室に秋山先生が入ってくる。秋山先生は僕らの担任だ。教科は数学を担当していて分かりやすいと評価を受けている。また、生徒思いだとか。
「それでは、今日は席替えをします」
クラスメイトが静まった教室に秋山先生の声が響く。先生の声を一斉にうるさくなる。あちらこちらから希望の声と絶望の声が鳴り響く。
「えぇ。ニコちゃんと離れるのー」
気だるそうな声。
「ニコちゃんの隣になりたいな」
小さな声で希望に満ちている声。
「モテたい」
そして欲望に満ちた。おっと、いけない。危うく欲望の声が出るところだったぜ。心の中で深いため息を吐き黒板を見つめる。
チョークで濃ゆく描かれた席の図面。希望と絶望。そして、ついでに欲望を交えた席替えが幕を開ける。
「よろしくね。藤原祐樹くん」
これは、あれだ。終わったと言うことだ。
「うん。よろしくお願いします。穂乃果さん」
「なんか硬くない? もっと柔らかくだよ! 祐樹」
いきなり呼び捨て? ハードル高かいぞこれ。少しドキッとなる感情を仕舞い込む。
「えっと。よろしく!」
自分ですら好きじゃない笑顔を穂乃果に向ける。すると、目を丸くする穂乃果。
「ふふ。よろしくね祐樹」
こちらに手を伸ばす穂乃果。握手なんていつぶりだろう。それに応えるように僕も手を伸ばす。
ひんやりと冷たい手だな。
「ねぇ。君たちイチャつくのやめてくれないかな?」
前方から声が聞こえてくる。しかも、それはこの手より冷たいであろうこえだ。
「イチャつくも何もただ仲良くしてるだけだよ! ほら、前向いてよ美咲」
「はいはいー」
「はいは1回でしょ」
「うぃ」
仲良さそうに話す二人を見つめる。和気藹々と楽しそうにしている。席に関してはいい方だとは思う。
ただ周りの視線が痛いことを除いて。
「ところでさ。祐樹ってこのあと暇?」
「へ?」
突如としてそんなことを聞かれたらこんな声も出てしまう。クラスのヒロインである穂乃果からの誘い。これは、そうだな。なんだ?
「暇ではあるけど、どうしたの?」
「いやーね。実は勉強を教えて欲しいんだ」
「勉強?」
「うん。勉強」
「それまた、どうして?」
「だって、祐樹って頭いいよね?」
そうか、思い出したぞ。この前先生が間違えて穂乃果が僕のテスト用紙を貰っていたんだ。
「頭がいいっていうか。勉強が好きというか――」
「だから! 私にテストを教えて」
言葉を遮り穂乃果は頭を下げながら告げた。これではどうにも断ることは難しい。まぁ、今のところ毎日暇だし勉強を教えることくらい別にいいか。
「うん。僕でよければ教えるよ」
「本当!? ありがとう」
「じゃあ! 勉強会の会場行くぞー」
元気いっぱいに手をあげる穂乃果と美咲。
今日思ったことは、そうだな前言撤回だ。




