第二便
Core研究塔は、昼夜の区別がなかった。
光は一定で、影は落ちず、
制御室には、人が生きるための時間だけが存在しない。
――判断のための場所だった。
制御室のデスク周りには積まれた書類だけが整えられ、
書籍や古いデバイス、
実験道具などは倒れたまま放置されていた。
Core装置の前には白衣がふたつ。
その後ろから規則正しい革の足音が近づいてきた。
「第一便は出た。弟を同乗させた」
スーツの男はそれだけ言う。
「……感謝する、レオンハルト」
白衣の男は小さく頭を下げた。
見守る彼女は、腹をひとつ撫で、続ける。
「国の子はこれで守れるのね……」
彼はその言葉に返さず、
彼女の腹の膨らみへ確認するよう視線を向ける。
「…………臨月だな。」
「ええ。けど、まだ動け――」
「二便へ乗れ。もうじき準備が終わる」
レオンハルトは被せるように告げた。
そして淡々と続ける。
「王太子とも話したが、Coreは絶対に争いの種になる。」
彼は、白衣のふたりの目を見つめ、さらに続ける。
「制御は血族限定にしろ」
「アークライト限定で制御をさせろと?」
「そうだ」
その一言は、フィオーラの心を揺らした。
それに応えるように、お腹の子が動いた。
「もう一度言う。フィオーラ、第二便へ乗れ」
その一言を最後に、部屋に響くは扉の音だけだった。
場は静けさと心の音。
エルディオンは呼吸を整え、一度デスクに座り息を吐く。
視線はフィオーラの腹の子。
すぐには言葉が出てこなかった。
「まだ、私はやれるわ」
「何を言っている。今お前がやることは、子を守ること」
「だって、」
「私は、準備をする。
何が起こるか分からない――だからこそだ。」
彼女は返す言葉が見つけられなかった。
半歩前に出て、エルディオンの頬へ手を添えた。
「……この子が背負うなら、
私は、最後まで一緒に立つわ。」
その言葉にエルディオンは、添えられた手を包み、
静かに「ありがとう」と、一言零した。




