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光と沈黙の律  作者: Naë
序章
4/12

沈むのは、街だけでいい

街の空気が冷える。

冬より深い静けさに包まれて。

そこには静けさに反して、声が響いた。





「報告を聞こう。」




その声には、迷いがなかった。



ノルディア王国、北の王宮。

氷壁と深い蒼の旗に囲まれた玉座で、

アウグスト王は、光塔から届いた“異常通知”を、

ひとつの答えとして受け取っていた。




「……都市が沈みました。」


エルディオンは形式も礼も忘れ、通信の向こう、

ホログラムに映る王へ、短く言った。




玉座室が凍る。

王は眉一つ動かさず返した。




「沈んだ。しかし止まった、だろう?」



「はい。ですが……次は止まりません。」




光脈の黒化ログを送り込む。



【次回臨界予測値:728日】



アウグスト王は目を閉じ、長い沈黙を落とした後――



「フィオーラは?」



「安定しております。ただ、妊娠による危険性が……」



「子供は?」



エルディオンは迷わなかった。



「――この都市に生まれます。」





静寂が走った。

そして王は低く命じる。




「ならば聞け。

直ぐに、年少者、妊婦をノルディアへ帰還させよ。」



「年少者、妊婦……をですか?」



「ルミナス中の子供達、胎児を含め全員だ。」




王は空を見上げ、

古い祈り文句のように言った。




「沈むのは街でいい。

子らまで沈める必要はない。」




それが、都市の未来を決めた最初の政治判断だった。



この日を境に、

ルミナスは死へ向かい始めた。







◇ルミナス政府・臨時布告

【L.C.463年/冬期】

・修学児童、未就学児童、胎児を対象に

北大陸ノルディア王国へ安全輸送

・対象地区:ノルディア領ルミナス市全域

・保護理由:文化交流教育――






民間向けに真実は伏せられた。

親達は泣き、驚き、怒り、喜びーー

都市は混沌に沈む。



だが、研究塔の人間だけは知っていた。

それは、都市の死を前提とした避難だった。


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