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恋と悪魔契約インターフェイス〜非モテ大学生、推しの歌姫を守るため世界と戦う〜  作者: 首藤蓮


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6/8

第6話 次のターゲットはギャルでした


 翌日、昼休み。


 学食のカレーを前に、俺はスマホ画面をにらんでいた。


共鳴値レゾ:1.1】

【契約悪魔候補:

 《インク》 必要5.0/会話サポート

 《ミスト》 必要8.0/感情安定 ……】


(……遠いな、5.0)


『一晩でレベルカンストされても困る。ゲームは少しずつ進めるから楽しいんだ』


 胸ポケットのウォルフが、相変わらず偉そうに言う。


(で、次のクエストは?)


『そう焦るな。ターゲットは、じきに向こうから来る』


 フラグみたいなことを言うな、と思ったところで。


「お、斗真じゃん。隣いい?」


 トレーを片手に、明智雄大が当然のように座ってきた。ゼミ同期で、コミュ力おばけの男。


「珍しいな。学食で一人?」


「ゼミのグループチャット見ただろ。今日はみんなバイトとか。……っていうか、お前こそ」


「レポート山積みで死んでる途中」


「生きて」


 いつもの軽口を交わしていると、雄大がふと顔を上げた。


「――あ、こっち空いてる?」


 その視線の先から、ぱっと色が近づいてくる。


 明るいミルクティー色の髪。巻いた毛先。メイクはしっかりめ。ネイルもちゃんとしてる。


 制服の上からパーカーを羽織って、トレーにはポテトとパンケーキ。


「やっほー、明智くん。隣いい?」


「どうぞどうぞ。サークルの後輩。鳴海こはる」


「二年の鳴海こはるでーす。よろ〜」


 彼女は迷いなく俺の正面に座った。


 近い。距離感もテンションも、全部近い。


「えっと、斗真慶太です。同じ二年」


「知ってるかも。図書館でよく見るよね? 白木さんと一緒にいる人」


「っ」


 いきなり本丸の名前が出てきて、スプーンを落としそうになる。


『平常心だ、恋愛スキル:0』


(うるさい)


 こはるは気にした様子もなく、ポテトを一本つまんで口に運んだ。


「白木さんさ、文学サークルの部室にもたまに本置いてってくれるんだよね。選ぶの渋くて好き〜」


「そ、そうなんだ」


 百合香、そんな活動もしてたのか。


 と、そのとき。


 鳴海こはるの足もと――椅子の影に、黒い“ノイズ”がじわりと広がった。


(……出た)


 昨日、水谷さんの周りで見たものと同じ。けれど、こっちのほうが少し濃い。墨を多めに垂らしたみたいな、ざわざわした揺れ方。


『見えるか、斗真』


(見えてる)


 心の中で答えると、ウォルフが静かに続けた。


『あれが次の“歪み”だな』


 こはるはそんなことに気づきもしないで、雄大と楽しそうに話している。


「でさー、この前の新歓コンパさぁ――」


「また派手にやったらしいな。写真回ってきた」


「見た? あれまだマシなほうだよ〜。裏のやつはもっとやばい」


「やめろ、斗真が固まってるだろ」


「ふふ、初心くん?」


 からかうように笑ったこはると目が合う。その瞬間、ノイズがわずかに濃くなった気がした。


『――感情の起伏が大きいほど、“歪み”は育つ』


 ウォルフの声が、淡々と重なる。


『楽しそうに見える奴ほど、内側にストレスを抱えていることも多い。ギャップがエネルギーになるからな』


(……つまり)


『つまり、あいつも“候補”だ』


 鳴海こはる。ギャル。社交的。雄大と普通に話せるタイプ。俺とは真逆の種族。


 そんな彼女の足もとに、黒い歪み。


(マジかよ……)


 雄大が、こはるに手を振る。


「午後サークルあるんだろ? 遅れるぞ」


「あ、やば。ありがと、教えてくれて〜。斗真くんも、またね」


 そう言って、彼女は軽く手を振って席を立った。パーカーの裾がひらっと揺れる。彼女が離れると同時に、歪みも少し薄くなったが、完全には消えない。


 残ったのは、妙なざわざわだけ。


「……斗真、どうした? なんか、ぼーっとしてたけど」


「いや、なんでも」


 雄大をごまかしながら、トレーのカレーをかき込む。


 胸ポケットの中で、ウォルフが静かに告げた。


『では、次のクエストだ』


【クエスト更新】

【ギャルの歪みを薄くしろ】

【対象:鳴海こはる】

【推奨行動:会話/ペア作業/“秘密”の共有】


『好きな子を守りたければ――まず、別の子に話しかけろ』


(またそれかよ……)


 ため息が、カレーの湯気に混じって消えた。

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