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 午後の霞が関。地味な灰色のビルの一室で、男たちの眉間に皺が寄っていた。


「……ヴェルカスタンからの亡命希望だと?」


 乾いた声が、厚みのある報告書の上に落ちる。椅子にもたれる男の名は、飯田。内閣情報調査室、外事担当。対外工作、特に亡命案件を扱うベテランだった。


「外務経由で今朝、上がってきた。非公式ルートで保護中。申告によれば──」


「防衛機密、か」


 向かいに座る若手職員・三科が、書類をめくる。表情は微妙だった。


「本人は“旧陸軍情報将校”と称している。ヴェルカスタンの軍制、政軍関係、それに国外に展開中の情報網──」


「ずいぶんと、話がデカいな」


 飯田は、ふぅと息を吐いた。ヴェルカスタン。名目上は民主主義国家だが、軍が実質的な統治機構を握る東欧の小国。政治的に不安定で、ここ十年でクーデター未遂が二度、国際的な人権批判も根強い。


「何でもありだからな、あそこは」


「ええ。ただ、国としては“準友好国”です。今の政権とは、一定の外交関係がありますし──」


「だからこそ厄介なんだろ」


 飯田が目を細める。


「こんな亡命案件、一歩間違えれば国際問題だ。慎重を極めるべきだが……これは俺たちの範疇か?」


「公安も一応目は通してますが、どこも積極的じゃないようで」


「“ウチじゃないだろう”ってか」


 飯田は鼻で笑った。


「……結局、回ってくるのはここだ」


 書類を閉じると、飯田は席を立ち、窓の外に目をやった。春の陽射しが霞む午後。穏やかな景色の中に、目に見えぬ火種が忍び寄る。


「情報の真偽も怪しい。亡命者の供述に不自然な点がある」


「例えば?」


 三科が問うと、飯田は淡々と答えた。


「極秘に行われたはずの部隊配置を“知りすぎている”んだよ。しかも──情報の一部が、既に昨年廃止された部隊に基づいている」


「……古い情報?」


「それとも、“仕込まれた情報”かもしれん」


 しばし沈黙が流れる。


「それでどうします? 外務も対応に困ってるようです。大使館側は、本人の身元が割れる前に早く受け入れか、拒否か、決断を迫ってきてます」


 飯田は小さく舌打ちし、机の端に置かれた封筒を指差した。


「“あの部隊”を動かすしかない」


 三科が目を丸くする。


「ゼロ隊、ですか?」


「正式には“内閣情報調査室特別行動班 第零分隊”。公安じゃお手上げだとさ」


 飯田は椅子に戻りながら言った。


「……あの“ゴレンジャー”に任せるしかないってわけだ」


(続く)

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