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親不孝高校 3年D組のデアテーチャー【Forever Yong (追憶の彼方)】  作者: 野松 彦秋


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24/30

24.GTM(グレート テーチャー マルイ)と石井君(承)

大学から合格通知が来た日の放課後、良太は改めて丸井先生の居る職員室へ向かった。


良太の目的は、自分の家の経済的状況を説明し大学へ進学する事が出来ないかもしれないと伝える為だった。


職員室に入り、丸井先生の席へ向かおうとすると、先生を中心に丸井先生と仲の良い数人の人達がくつろいで仲良く話し合っている様子だった。


丸井先生は、良太を見ると、笑顔で片手を上げて良太に早く来るように手招きをした。


『野末、丁度いいとこに来たな、今な、岡部先生、清本生、三浦先生とお前の話をしてたところだ・・』


その先生達は、良太の化学、英語、公民の各教科を教えてくれている先生達だった。


良太が、自分の頭を片手で抑え、照れながらも挨拶をすると、皆それぞれ良太の大学合格を褒めてくれた。


良太は、一人一人丁寧に、『有難うございます。』と言って頭を下げた。


(・・・こんな状態じゃ、進学しないかもしれない・・なんて言えない。)


良太は、丸井先生に相談しに来た内容を、この場では無理だと思った時、丸井先生が当然の様に洋太へ、職員室に来た理由を聞いた。


『野末よ、ンで?どうした、何かオレに用があって来たのか??』


『・・いや、改めて、先生()()にお礼を言いたくて・・』


良太がその場の雰囲気を考え調子を合わせる様にそう言うと、丸井先生はその場に居た先生達に嬉しそうに、『ネ、オレが言った通り、ヤッパリコイツ(野末)は律儀な奴でしょ、こういう奴なんですよ!!』


『・・ヤッパリ、担任の丸井先生の日頃の教育が良いんでしょうね・・』


英語担当の清本先生が、ふざけた様子で言うと、他の2人の先生もドッと笑い出してしまった。


(言えない、この場では絶対言えない・・・、進学しないとは、絶対)


良太は暫く、その場にいたが、タイミングを見て職員室を後にした。


良太の高校では、雪の降る期間、自転車による通学は禁止されていた。

禁止の期間はバス通学か、親が自家用車で送ってくれるかしか方法は無かった。


良太の自宅から高校までは、自転車で1時間はかかる距離である。


良太はその日高校の校舎を出る前に家に電話をし、母親には理由をつくり、帰りが19時頃になると伝えた上で校舎を出て家路をたどる。


その日は、雪は降っていなかったが校舎を出た時点で、既に外は薄暗くなり始めていた。


良太は、その日バスには乗らず、歩いて帰る事を選んだ。

どれだけの時間がかかろうとも、その日は歩いて帰りたかったからである。


期待もしていなかった、大学受験に合格した事はとても嬉しかったが、経済的に大学進学は難しいと分かっていた。親にどう報告しようか、親に会う前に自分で結論を出す必要があったからである。


30分もすると、陽はすっかり落ち、良太は静寂な夜の道を歩いていた。


陽が落ちても、所々に少しだが街頭などの光源があり、たまに車もすれ違う。


その灯りが道に積もる雪に反射し、その白さを際立たせてとても綺麗だった。


しかし車も無く、静寂が続くとき、時折風が吹き、冷たい空気が顔に当たる。

その時は。どうしてもマイナスの思考が出てきてしまった。


広い世界で自分は独りだけなんじゃないか、これからの自分の将来は、今歩いている道の様なモノなのかもしれないとか・・・である。


様々な事を考えて1時間以上過ぎた時である。


比較的大きな道を歩いていると、良太の後ろから一台の車がやって来た。


通り過ぎる車と思っていたら、その車は良太の横で止まったのである。


セダンの後部座席の窓が開いたと思うと、聞き覚えのある声が聞こえた。


『野末君か?野末君でしょう?石井君、ヤッパリ野末君だったよ、ウケルぅ』


その声は石井君と仲の良い下柳君の声だった。


その言葉を聞いたのか、今度は助手席が開き、又ひとり頭を出す。


『ウっス!!野末くん、何一人で寂しく歩いてるのよ』


クラスメートで卓球部の主将を務めた佐藤君が、ニヤニヤしながら楽しそうに良太に聞く。


『・・・歩いて家に帰ってるんだ・・。』


『家って、どこ??』


『崎島の長崎屋の方かな・・市立病院とか、●●・・・がある方角』


『マジか、結構遠くない??・・何、まさかここまで高校から歩いて来たの??』


『ウン、まあ、それより、皆は何してるの??』


『俺たちはね、石井君の車で夜のドライブしてんだ』


『・・・石井君、免許とったんだ・・・校則では卒業するまで車の運転は禁止でしょ・・・』


良太がそういうと、車の中から甲高いオネェ言葉が聞こえて来た。


『何、固い事言ってるの??、だから、アンタはお子ちゃまなのよ・・』


『もう、高校なんか卒業したも、同然じゃない・・』


『ああ、もういいわ、その子も一緒に乗せちゃってよ、もう・・・』


『車の運転の練習がてら、アンタんちまで、乗せてってあげる』


後部座席に乗ってた下柳君が、すぐさまドアを開け、無理矢理良太を車に引っ張りこんでしまった。


『エッ、チョット、良いの?』


『イイに決まってるじゃない、それでも何?アンタ、アタシ達とは友達じゃないの?』


『ああ、やっぱり、アタシ達とは表面的な関係だったんだ・・・』


『そんな事ないけど・・・』


そんな会話はしたが、石井君は良太の意志など関係なくサッサと車を運転し始めてしまった。


良太は、少し驚いていたが、予期せぬクラスメートの家まで送ってあげるという親切心が嬉しかった。


その気持ちは、直ぐにふっ飛び、後悔に変わるとは、その時は思って無かった。






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