21.大学受験の日(中編)
小論文の試験が終わり、昼休みを挟んで午後から5名ずつに分かれ、集団面接となる事を伝えられた。
昼休み時間、コンビニで買ったオニギリとパンを、自販機で買った温かいお茶で胃に流し込みながら、深く落ち込んだのを覚えている。
味を楽しむ、いや感じる余裕も奪われたような感覚であった。
前半終了時に、既に相手チームに大量の点数差をつけられた様な感覚だった。
(そうか、これが神様のお導きか、就職しろよってゆうお告げかよ・・)
18歳になったばかりの良太は、そう思って空を見上げた。
その日は、天気が良く、空は青空だった。
(丸井先生、どうやら、オレ、駄目みたいです・・・)
(先生に言われた通り、生徒会長に立候補して、大勢の前で恥かいて、オレなりに頑張ったのに・・)
(情けねぇな、オレ・・・結局オレは何時もダメなんだ・・・)
良太は、そんな事を考えながら空の太陽を眩しく見ていた。
その時である、良太のPHS(携帯電話の一種)に知らない電話番号から電話がかかって来た。
それは、故郷の市外局番の番号だった。
『もしもし、野末です。』
良太は、驚きながら電話に出ると、それは丸井先生からの電話だった。
『野末、どうだあ、試験上手くいってるか?』
丸井先生は、最近調子どう?、見たいに、名乗りもせず話し出した。
『丸井先生、どうして、オレの番号しってるんですか?』
『親御さんから、聞いた。今、昼休みで、チョット心配だから電話したんだ、どうよ』
照れたような、生徒を驚かせようとするお道化た口調だった。
良太は、素直に状況を説明し、『~、もう落ちました、絶対に落ちました。落ちたんです』と丸井先生に訴えた。
それを聞いた、先生の口調が突然、怒気を含んだモノに変わった。
『バカケッ!何言ってるべさ』
『未だ終わってねぇべさ、ヤレ、全力でやるだけだべ』
『野末ぇ~!オメェのこれからの人生でも、いっぱいあるぜ、こういう時が』
『その度に、オメェは、終わってもねぇ時から、白旗あげんのかよ』
『オメェは、そういう奴じゃねぇ、ねぇべさ!』
『ヤレ、とにかく、最後まで全力でヤレ、落ちてもいい、全力でやって帰って来い』
『結果は、その次だ・・。』
センセイは、先生の周囲にいる人達を忘れた様な大きな声で、そう叫んだのである。
丸井先生は、そう言って、18歳の良太が最初に期待していた様な励ましの言葉はくれず、電話を乱暴に切ったのである。
18歳の良太には衝撃だった、46歳の良太には分かる。
それこそが、丸井先生の励ましであり、激励というものだった事を・・・。
授業中に、コーラを飲み、ゲップをする担任、ダイエットに失敗したような仏様のような体型で、金縁メガネをして邪悪な笑みを浮かべる丸井先生は、自分の生徒達に勉強よりも大事な事を教えようとする人だった。
18歳の良太は、事実半べそかいて、その涙を必死に拭いて、午後の集団面接の会場に向かった。
涙は、多分、丸井先生への感謝の涙だったと思う。




