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11.D組の運動会(1995夏の日)【後】超高校生

『・・・・もう、見てらんないわ、勉強しかできない真面目ちゃんは、だからダメなのよ』


痺れを切らした様な声が、突然横から入る。


『丸井の面子を立てればいいんでしょ・・・・』


『委員長、どうする、私に任せるなら、私が決めちゃうけど・・・』


『どうせ、誰も良いアイデアなんかないんでしょ】


副委員長なのに、席も立たない石井君である。


『・・・石井君、何かアイデアあるの?』


『あるに決まってるじゃない、ハチマキ、皆で同じ色のハチマキをすれば良いのよ・・』


『そのハチマキに、2-D必勝って、書いて終わりよ・・簡単じゃないの』


『・・・・イイね、その考え・・・』


自分の答え等用意していなかった、30年前の自分が言う。


(ウァッ、リーダー失格な奴。30年前のオレ、こういう奴だったな・・)


遠き日の自分の至らなさを見て、恥ずかしくなる良太であった。


『だけど、学校の購買で売ってたっけ??』


自分の取り仕切る能力を隠す為、16歳の良太は、もっともらしい事を指摘する。


『これだから、教科書バカは・・・ちょっと待ってて私が確認するから・・』


石井君は、呆れた顔でそう言うと、自分の持っているPHSで、電話番号を検索し、誰かに電話をする。


『・・・あ、もしもし、こんにちわ』


『私です。石井です。・・・・どうも~、御無沙汰してま~す』


『エッ、悪さしてるかって、・・チョット、止めてくれる。真面目な高校生の僕が、悪い事するワケないじゃない・・』


相手が笑っているのか、石井君も合わせる様に笑う。


『それよりさ、鮫島さん、お願いがあるんだけどぅ・・・』


『学校の行事があってさ、ハチマキ50本、至急欲しいんだけど?エッ有る、助かるわぁ』


『一本いくら、250円、250円って高いわねぇ、50本まとめて買うから、安くならない?』


『・・・200円にしてくれるの?ウワァ、流石、鮫島さん、助かるゥ』


『エッ、色、何色あるの、青、赤、黄色、緑・白・・』


『そうね、マジックで字書くから・・・だけど白じゃ、味気ないし、黄色で』


『鮫島さん、チョット1分だけ待ってくれる?』


『委員長、一人200円だって、ハチマキ、サッサと決を採りなさいよ!』


『・・・・アッ、ハイ、』


あまりの石井君の手際の良さに、見とれてしまい、突然の石井君の指示に慌てふためく。


(ヤバい、直ぐに決を採らなければ・・・)


『・・・、ミンナ、石井君の案に反対の人がいれば、手を挙げて下さい。』


反対する人など居なかった。


それを見て、石井君も、直ぐに電話相手と会話を再開。


『鮫島さん、待たせてゴメン、それじゃ、黄色のハチマキ50本、ヨロシク』


『来週にでも取りに行くから、用意しておいてください、ホント、何時も頼りにしてゴメンね』


『アリガト・エッ、今度飲みに行く時、奢れって?ヤメテくれる、私高校生なんだから、ってウソウソ』


(ウソでは無いだろう~)


最後の石井君の言葉に、現在の良太は心の中でツッコミをいれる、30年前の良太も同じ顔をしていた。


石井君が電話を切ったと同時に、6時間目が終わるチャイムが鳴り出した。


僅か15分ぐらいの間で、石井君は良太が受けた丸井先生の任務を終わらせてしまったのである。


チャイムが鳴り終わった後、石井君が見えない筈の良太の前に来る。


『アンタ、あの時、よく、賛成の人って、聞かず、()()()()で決を採ったわね、上出来よ』


石井君がそう言ったかと思うと、又眩しい光が、その場を包んだ。


良太は目を瞑る。


遠き昔の風景を思い出しながら、良太は改めて30年前の石井君に驚愕を覚えた。


(あの人、本当にオレと同じ16,17の高校生だったのか・・)


この日良太は、石井君の頭の良さ(机の上ではない)を見せつけられた日であった。


この日を境に、良太は何度も石井君に驚かされる。


彼は、ある意味、超高校生だったのである。


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