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僕が18歳女子高生TikTokerを好きになった理由(改)

作者: ヨッシー@

僕が、18歳女子高生TikTokerを好きになった理由  


理由 1


TikTok(@kagaya)

「星空かがや」という名前の女子高生。TikTokでアカウントを開設してから、たったの数日で動画再生数が100万回以上再生されたTikToker。

彼女の動画には、僕たちとの共通点がある。それは、この町、星ノ宮町の景色が映り込んでいる事だ。

制服姿は、あえて架空の衣装だが、背景の川、野原、山、すべて星ノ宮町の風景だ。

「いったい誰なんだ?」

「どこの高校生なんだ?」

僕たちの学校も、この噂でいっぱいだ。

「あの女子高じゃねぇ」

「いや、あそこの高校の生徒だよ」

噂が噂を呼び、町中が大騒ぎ。ネットでも盛り上がっている。

謎のTikToker星空かがや。

しかし、正体は不明…


「絶対、CGじゃねぇ」

釜本がぼやく。

「AIで作ったんだよ」

「違うよ、本物だよ」

「私も田村君の意見に同意する」

パソコン部の山本が資料を見せた。

「ほら、私の調べたところによると、この動画や画像にはCGの形跡はまったく無い。グラフにも出ている。ほぼ実写、ほぼ本物の人間。間違いない」

「もう、やめようぜ田村〜」

「見つけたって、俺たちなんか相手にもしてくれないし〜当然付き合ってもくれないぜ。やるだけ、無駄、無駄、虚しいだけだよ」

皆んなは諦めムードだ。

「でも、気になる!」

「この写真を見ろよ」

僕は、一枚の写真を皆んなに見せた。

「これは、ウチらの学校のすぐ近くだ」

「ほら、この山、星ノ宮山だろう」

三角の尖った頂がある山。

「確かに、似ているけどさ〜」

「ほら、こっちの麦畑も大川さん家の麦畑だろう」

「まあ、似ているけどね〜」

「絶対、この町の学生だよ」

「もしかしたら、ウチらの学校の生徒かもしれないぞ」

「そんなバカな〜」

「だって、どう見たって、ウチらの学校の近くばっかりじゃないか」

「まあ、そうだけどさ〜」

「ウチらの学校だったら、すぐ解るよ〜こんな美少女いないし〜」

「いや、普段は地味なメイクをしていて、地味系女子を演じているかもしれないぞ」

「実は美少女ってか、」

「そんな、漫画みたいな事あるかよ〜」

釜本がぼやく。

「お前は、まだまだ子供だね〜漫画は、漫画。夢の世界さ」

「現実の、本物の青春を楽しもうぜ、田村〜」

「そうかなぁ」

「そうそう〜」

僕は納得しないまま、学校を後にした…


夕方、

河川敷を自転車で帰る。

夕焼けがきれいだ。

この星ノ宮川から見える夕焼けは、昔からきれいだった。

その向こう、

見知らぬ制服の女子が立っていた。

「どこの学校だろう?」

僕は、通りすがりに眺めてみた。

「ええっ、星空かがやだ!」

キキーッ、

慌ててブレーキをかけた僕は、そのまま土手から転げ落ちてしまった。

ガラガラガラ、ガッシャーン

「痛てててて」

かろうじて、川に落ちるのは助かった。

すぐさま、土手の上を見上げる。

そこには、あの星空かかやが夕焼けにポーズをとって自撮りをしていた。

その姿は、あのTikTokのように美しく輝いていた。

「やっぱり、星空かがやは、いたんだ!」

僕は大きな声で、彼女の名前を叫んだ。

彼女は一瞬、驚いた表情を見せたが軽くポーズをとり、

「いつも、ありがとう。タミーさん」

と言った。

なに、僕のハンドルネームを知っている?

彼女はそのまま、オレンジ色の夕日に消えていった。

本当にいたんだ、星空かがやは本当にいたんだ。

僕は確信した…


理由 1ー2


次の日、

「ホントかね〜」

「夢じゃねぇ」

釜本がぼやく。

皆んなは信じてくれなかった。

「星空かがやは、本当に実在したんだよ」

僕は、夢中になって説明した。

「あんまり思いが強くて、幻覚を見たんじゃねぇ」

「違う女子高生を見間違えたとか」

誰も、僕の言ったことを信用してはくれなかった。

でも僕は、間違いなく見たんだ…


昼休み、

「絶対、星空かがやは、この町の生徒だ!」

僕は屋上で、今までの手掛かりをノートにまとめていた。

「これがこれで、あれがあれで、えっと〜それから」

ガサガサ、ガサ、ポト

ペンが落ちる。

「私も星空かがやは、この学校の生徒だと思います!」

突然、同じクラスの君島サクラが声をかけてきた。同じクラスだが、席が遠くあまり話したことのない女子だ。

「私も以前から、星空かがやはウチの学校の生徒だと思っていました」

「やっぱり」

「そうだよね、絶対そうだよ」

僕は力説した。

「でも、田村さんは、何でそんなに星空かがやにこだわるんですか?」

「だって、可愛いだろう」

ポッ、と赤くなる。

「このちょっと垂れた目、ぷっくりした唇」

「可愛いーー」

少し引き気味の君島サクラ。

君島サクラは写真部で、写真に詳しかった。

彼女も以前から、星空かがやの画像は写真の影や背景から見て、本物だと思っていたらしい。

「一緒に星空かがやを見つけましょう!」

「おう、」

僕たちは固く手を握り、星空かがやの捜索を誓った。

新たな助っ人君島サクラを迎え、僕は再び星空かがやの捜索を始めた。


写真部、

「まず、この写真から調べてみましょう」

唯一ある、星空かがやのアップ写真。

僕たちは、君島サクラのアイデアで、校長室から歴代生徒の入学写真を借りてきた。

「まず、一年生からだ」

「はい」

パラパラ、パラ

なかなか見つかりはしない。

手がかりは、一度目撃したことがある僕の記憶だけが頼りだ。

「これじゃないですか?」

「違うな、身長が低い」

「これでは」

「違う違う、こんな顔じゃない」

「あーあ、もう大変じゃねぇ〜」

釜本がぼやく。

いつの間にか、釜本たちも手伝っていた。

「一体、どこにいるんだよ、星空かがや〜」

僕たちは、疲れ果てていた。

「ご苦労様です」

そこへ、君島サクラの後輩の稲元スミレがやって来た。

長身で、細身の色白女子だ。

写真部でも、独自で星空かがやの捜索をしていたらしく、後輩の稲元スミレも手伝うことになった。

「写真部の写真からも、探してみましょう」

稲元スミレもパソコンで探す。

学校の広報写真を担当している写真部は、学校の体育祭、文化祭などの写真撮影も行なっている。

「あっ、これ」

稲元スミレが叫んだ。

「どうしたんだ、稲元」

「これ」

そこには、文化祭での小さく写っている写真があった。

「これ、この人」

「拡大してみましょう」

最大に拡大してみる。

「星空かがやの横顔に似てますね」

似ている、

「違うんじゃねぇ〜」

釜本がぼやく。

確かに、星空かがやとは少し雰囲気が違う。

何か、硬いというかキリッとしているというか。

山本が、ソフトで画像解析をする。

58パーセント一致。

「ちょっと微妙ですね」

見た目には、その女子は少し痩せており目鼻立ちも細めだ。

「いや、私には解ります」

「これは、わざとヘアースタイルやメイクを地味にしてカモフラージュしているんですよ」

この女子は、あの独特な雰囲気の星空かがやには似つかなかった。

「私には解ります、これは女子の感です。女子にしか解らない感です」

「この子が、星空かがやです!」

自信満々で答える稲元スミレ。

「よし、この女子を調べよう」

僕たちは、女子の感という物を頼りに、確実に星空かがやに近づいた…


理由 1ー3


「この写真は、去年の文化祭だ」

「そして、このチョコバナナの店は三組。隣のクラスだ」

灯台下暗し、

僕たちは、身近な所から捜索をやり直した。

隣の三組を覗く。

幸い、中学校の同級生の澤田知之が三組なので情報収集は楽だ。

「おーい、澤田。この写真なんだけど、誰だか解るか?」

「どれ」

澤田が写真を見る。

「記憶にねぇなぁ〜こんな奴、ウチらのクラスにいたかなぁ」

「よく見てくれよ」

「ああ」

もう一度、写真をよく見る澤田。

「ああ、アイツだ」

「ほら、アイツだよ」

澤田が指を指す。

その向こうには、机に座り本を読んでいる女子がいた。

「この写真の女子、あいつだよ。岸本マユミ」

「岸本マユミ?」

「でも、絶対違うね。岸本マユミは真面目系で、本ばっかり読んでいる勉強女子だよ」

「星空かがやとは天と地の差がある」

僕たちは、岸本マユミを観察した。

確かに、星空かがやとは似てもない似つかない真面目系女子だ。

体型と身長は同じだが、雰囲気が違う。

「やっぱ、違うんじゃねぇ」

釜本がぼやく。

「う〜ん、確かに…」


僕たちは、緊急会議をした。

「岸本マユミは、違うんじゃねぇ」

「僕も、星空かがやとは違う人物かと思う」

釜本と山本がぼやく。

しかし、たった一つの手がかりだ。ここで諦める訳にはいけない。

「やってみるよ」

僕と君島サクラと稲元スミレは、岸本マユミを尾行することになった。


授業が終わる。

岸本マユミは、すぐに入っている英会話部に向かう。途中、どこにも寄らない。

部室、

難しい英語の本を朗読している岸本マユミ。

隠れて見張る僕たち。

まだ、いっこうに怪しい気配はない。

数時間後、

部活が終わる。

「さようなら〜」

岸本マユミは部員たちに挨拶をし、学校を後にした。

尾行を続ける。

通りを抜け、商店街を進む。怪しい素振りはまだない。途中、本屋により英語の原書を買う。その後、文房具屋に寄り、自宅へと帰って行った。

「今日は、不発でしたね」

稲元スミレが、尾行データをタブレットにメモする。

「まだ、一日だけだ。必ずシッポを掴んでみせるぞ、星空かがや!」

僕たちは、意気揚々とした。


日曜日、

朝から尾行を行う。

僕たちは、サングラスに帽子、コート。皆それぞれ変装をしている。

「何か、楽しいですね」

稲元スミレが笑う。

側から見ると、怪しい三人組にしか見えないが、何故かワクワクする自分がいた。

黙っている君島サクラ。

午前8時30分、岸本マユミが自宅から出て来た。

そのまま尾行を続ける。

午前9時00分、予備校へ到着。

建物の中で授業を受ける岸本マユミ。

僕たちは、ここの生徒のフリをして建物に侵入。いまのところ、怪しい素振りはない。

午後0時30分、友達と昼食。そのまま予備校に滞在。 

午後1時00分、昼の部の授業開始。

「一体、どれだけ勉強するのですかねぇ」

稲元スミレがぼやく。

午後5時00分、夜の部の授業開始。再び勉強をする。

午後9時00分、授業終了。そして帰宅。

岸本マユミは、まったく怪しい素振り無かった。勉強のみ。星空かがやの欠片もない。

「疲れたーー」

僕たちはヘトヘトになり、今日の張り込みを終えた。 

それからも、

時間のある限り、岸本マユミの張り込みを続けた。

そんな日々が一か月と続いた…


「もう、やめた方がいいんじゃねぇ」

釜本がぼやく。

「さすがに、もう、岸本マユミは違うと思う」

山本も言う。

「私もそう思います。女子の感は外れました」

稲元スミレも同意見だ。

これだけ尾行しても、岸本マユミは勉強するばかりで、星空かがやに変身して自撮りをする暇もなかった。

「岸本マユミは、星空かがやではない」

僕たちは、そう結論づけけた。

最初から、捜索のやり直しだ。

せっかく見つけ出した手掛かりだったが、また振り出しに戻ってしまった。

「この女子も違う」

「あの女子も違う」

その後、何人かの怪しい候補女子を尾行したが、どの女子も星空かがやではなかった。

僕たちは、迷宮に陥っていた。 

しかし、

「困難の時こそ、頑張る時だ」

「そうですよ、頑張りましょう」

稲元スミレも同意見だ。

僕たちは再び団結を誓い、星空かがやの捜索を続けた。

ただ、

君島サクラだけが、寂しそうな顔をしていた…


理由 1ー4


「お〜い、田村ー大変だ〜」

釜本が大騒ぎで走ってくる。

「これこれこれ、」

スマホの写真を見せる釜本、Instagramだ。

「これって、星空かがやじゃねぇ」

「えっ?」

その写真には、紛れもなく星空かがやが写っていた。

「いや〜今朝、何気にInstagram見てたら、これがあったんだよ」

僕もInstagramを使うが、星空かがやのInstagramは今までなかった。

「どうしたんだよ、これ」

「今朝、できたんだよ。星空かがやのInstagram」

それは、この学校の、どう見ても、屋上からの風景だった。

「見せて下さい」

君島サクラが、スマホを取る。

「解るのか?」

「だって春に、『学校から見える風景』ってテーマで屋上から写真撮影したばかりですから」

もしかして、

僕たちは、急いで屋上へと駆け上がった。

カメラを四方に向ける。

あった、南西の方角にピタリと同じ景色がある。

「この写真は、この屋上だ」

微妙に角度や構図は違うが、ここから撮った写真に間違いない。僕たちは確信した。

「星空かがやは昨日、ここでInstagramの写真を撮ったんだ」

挑戦しているんだ、

僕たちが星空かがやの捜索をしているから、あえて学校の屋上での写真を、Instagramにアップしたんだ。

しまった、

星空かがやは、僕たちの捜索に感づいている。

そして、挑んでいるんだ。余計、捜索意欲が湧いてきた。

「絶対見つけてやるぞ、星空かがや!」


次の日、

「もしかして、先生とかじゃねぇ?」

釜本がぼやく。

「そんなバカな、」

「音楽の久住なんか、似てねぇ」

似ている気もするが、肌の張りというか、やっぱり星空かがやとは違う気がする。

Instagramの写真は、TikTokの写真より美しい写真だった。

「アプリ使ってるんだよ〜」

「そうかな」

山本に聞いてみる。

「この写真はアプリは使っていないけど、照明や光の加減、メイクで綺麗に写している」

「昔はデジタルでの加工が出来なかったから、照明やフィルターで調整していたんだ」

「まあ、今でもプロの写真家は照明を大事にするけど」

「しかし、星空かがやは素人だろう〜プロじゃねぇし」

「そう言えば、君島サクラの親父はカメラマンだったよな」

「そう、」

「でも、報道カメラマンだけどね」

「そうか」

「ちょっと聞いてみてくれよ、この写真がどの様に撮影されたか」

「解った」

僕たちは星空かがやからの挑戦を受け、再び捜索を続けた。


数日後、

君島サクラの父から、メールがきた。

「これは、プロの撮影だね。露出やシャッタースピードも計算された、素晴らしい写真だよ。このカメラマンは、かなり技術を持っている」

このメールにより、もう一つ情報が増えた。

星空かがやは、写真が上手い。

手がかりをまとめて見る。

1、この街に居住。

2、僕たちの学校に出入りできる。

3、若い。(注・高校生ではないかも)

4、写真の撮影が上手い。

さんざん調べた挙句、集まった情報はこれだけだった。手がかりは増えたが、捜索の発展はまだまだだ。

僕たちは、また行き詰まってしまった。


放課後、

僕は、遅くまで図書室で星空かがやの資料をまとめていた。

スマホとパソコン、紙の資料をくまなく整理する。

「え〜っと、予想できる身長と体重、体型、髪型。出没する時間帯」

資料は、いつの間にか、かなり大量になっていた。

「あー疲れた」

いつの間にか、夕日が図書室に差し込んでいた。

「きれいな夕焼けだ、明日は晴れだな」

僕は、夕焼けに目を向けた。

その時、

校舎の屋上に、一人立っている女子を見かけた。

何かポーズをとっている。

「あっ、星空かがやだ!」

僕は、慌てて屋上へと駆け上がった。

ハアハアハア、

バン、

扉を開く。

そこには、あの星空かがやが自撮りをしていた。

しかも、スマホではなく一眼レフのカメラを三脚で撮っていた。

「星空かがや!」

僕は、叫んだ。

「また会ったわね、タミーさん」

夕焼けに映え、オレンジ色の空にポーズをとる彼女は、やはり、あのInstagramのように美しかった。

カシャ、カシャ、

写真を撮る星空かがや。

「そのレフ板を、当ててくれない」

星空かがやは、僕にレフ板のアシスタントを頼んだ。

「はい」

見よう見真似で、レフ板を当てる。

「上手いね、もうちょっと左、もうちょっと上、顔に当てて」

カシャ、カシャ、

意外と枚数を撮る。

そうだよな、そう簡単にいい写真なんか撮れる訳がない。たくさん撮った中からの数枚がベストショットだろう。僕はtiktokerの苦労を初めて知った。

しばらく僕は、星空かがやの助手を務めた。

カシャ、

最後の撮影が終わる。

「ありがとう、タミーさん」

「あなたのおかげでいい写真が撮れたわ」

可愛いい、声も可愛い。

やっぱり、星空かがやは可愛い♡。

顔が、ポッと赤くなる。

「あのー、一つ質問が?」

「なに、」

「もしかして、この学校の生徒ですか?」

「うーん、ノーコメント」

やっぱり、そう簡単に教えてはくれないか。

「でも、一つ教えてあげる」

「あなたを、いつも見ているよ」

「ええっ!?」

そう言って、星空かがやは去って行った。

僕は、夕日が沈むまで、

その場に立ちすくんでいた…


理由 1ー5


謎の言葉、

「あなたを、いつも見ているよ」

僕は、また難解な問題に立たされた。

「あなたを見ている、」

ウチらの学校の生徒か?

ウチらのクラスの女子なのか?

いったい誰なんだ!

クラスの女子を思い浮かべる。

あの子か、あの子か、

いや、どれも違う気がする。星空かがやとは全く違う。

誰なんだ、いったい!

色々な情報が多すぎて、頭が混乱してきた。まるで推理小説だ。

僕は、頭を抱え込んだ。

すると、

「星空かがやは、田村を好きなんじゃねぇ〜」

釜本がぼやく。

「何だって!」

「だって、田村の回りばっかり現れるじゃん。しかも何回も〜」

「これって、逆に星空かがやの方から早く見つけてくれって、言っているんじゃねぇ〜」

確かに、

この学校で、星空かがやに会ったことのあるのは、僕一人だ。

しかも、二回も。他は誰もいない。

僕に惚れている?

いやいや、そんな事ある訳がない。こんな僕を好きなんて、有り得ない。

そんなバカな、

謎は、謎を呼び、謎は深まる…


そして、数週間。

星空かがやは、いつの間にかTikTokよりもInstagram中心の活動になっていた。

その写真は、ますます上達し、

「これは、完成度が高いですね」

「スマホでは、絶対ないですね」

山本と稲元が言う。

「僕も、屋上で出会った時にカメラを見かけたど、一眼レフのカメラだった」

「今時の女子が大きいカメラ使うなんて、プロかも?」

確かに、

ウチらの学校で一眼レフのカメラを使い、写真が上手い女子。

捜索範囲は、かなり狭まってきた。

「写真部じゃねぇ」

釜本がぼやく。

一同、唖然とする。

皆んなの視線が、君島サクラと稲元スミレに集まった。

「そ、そんなことないでしょう〜」

稲元スミレが笑う。

「この中に星空かがやがいるなら、尾行なんかしないですよ〜」

ぎこちない笑みの稲元スミレ。

「そうだよな〜そうだよ」

一同、納得する。

しかし、二人の笑顔は引きつっていた……


高校総合文化祭。

年に一度の文化部の大イベントだ。

絵画、写真、書道、音楽、各文化部が一年間に努力してきた作品を発表する大会だ。

写真部も、選りすぐりの作品をパネルにして発表する。

僕たちは、日頃お世話になっている写真部の為に、お手伝いをすることにした。

皆んなで、パネルを市の文化会館へと運ぶ。

途中、君島サクラが言った。

「急がしいのにすいません、田村君」

「いいんだよ、たまには星空かがやのことを忘れて、気分転換する事も必要さ」

僕は君島サクラと二人で、荷物を二階へと運んだ。

二階には、稲元スミレと釜本が先に来ており、器用にパネルを設置していた。

僕は荷物を置き、写真を眺めた。

新緑の星ノ宮山、早朝の星ノ宮川、どれも美しい写真ばかりだ。

上手い、さすが写真部だ。僕は感心した。

その中に、一際きれいな夕焼けの写真があった。

「これは、誰が撮った写真だい?」

僕は尋ねた。

「それは…私…です」

君島サクラが、小さな声で言った。 

夕焼けの星ノ宮川、その手前に立つオレンジ色の少女。

「これは、」

「星空かがやの写真に似ている!」

僕は、咄嗟にそう思った。

「もしかして〜君島サクラが星空かがやじゃねぇ」

釜本がぼやく。

「えっ、」

動きが止まる稲元スミレと君島サクラ。

「いやいや、私なんか…」(小声)

慌てて否定する君島サクラ。

「そうだよ、そんなバカなことあるわけないよ釜本〜ハハハ」

僕は笑った。

ハハハハハ、

何故か、皆んなも大笑いをした。

そして僕たちは、展示を終えた…


理由 1ー6


数日後、

突然、星空かがやが休業宣言をした。

「しばらく、お休みします。星空かかや@」

いつもの踊りは一切なく、短いTikTokたけだった。

僕は、途方に暮れた。

これから、謎を解明して頑張る時だったのだ。

「どうしたらいいんだー」

僕は気力を失った。青春の生きがいを失ってしまったのだ。完全に、も抜けの殻になってしまった。

「僕の人生、僕の希望、星空かがや……」

僕が絶望して窓の外を眺めていると、

シューン、

メールが来た。

誰だ?

「放課後、屋上で待ってます。星空かがや」

星空かがやからのメールだった。

「ええっ、」

何故、僕のアドレスを知っている?

そんな事よりも、何故、TikTokを辞めたんだ!

僕は聞きたい事がたくさんあり、急いで屋上へと向かった。

放課後まで待つ…


放課後、屋上。

まだ、星空かがやは来ない。

かれこれ、3時間は経っている。

カーカー

カラスが飛んでいく。

「まだ待っているの?」 

君島サクラが声をかけてきた。

「今日は、来ないのかなぁ〜星空かがや」

僕は座り込み、空を見上げた。

君島サクラも隣に座り、空を見上げた。一呼吸して、僕にスマホを見せる。

「これを見て元気出して下さいよ、田村君」

それは、星空かがやのInstagramの写真だった。

そこには、僕の見たことのない星空かがやがの写真が、たくさんあった。

美しい、どれも素晴らしい写真だ。TikTokの映像よりもきれいだ。展覧会に発表してもいいくらいの写真ばかりだ。

「また、星空かがやの写真の腕が上がったな」

僕はつぶやいた。

「そんな、照れるなぁ〜」

突然、君島サクラがつぶやいた。

「何だって!」

「あっ、」

慌てて、口を塞ぐ君島サクラ。

突然の告白、

そして沈黙、

……

……

「実は、私が……星空…かがやです」

「ええっ!」

僕は、ひっくり返りそうになった。

「何で、」

「でも…偽物の星空かがやなんです」

「ええっ!」

僕は再び、ひっくり返りそうになった。

一体なんなんだ!

僕の頭の中は、混乱し理解不能になった。

「ごめんなさい、田村君の前に現れた星空かがやは…全部、私でした」

突然の告白に、やっぱり僕の頭は理解不能になった。

「一度だけの出来心でやってみたら…田村君の反応が良くて、ズルズルと続けてしまったの」

「私は入学した時から、ずっと田村君のことが好きでした」

やっぱり、突然の告白。

「僕が?」

「だって、可愛いいんだもん」

「このちょっと太い眉、ドングリみたいな瞳、真面目そうな表情」

「可愛いーー」

ポッと、赤くなる君島サクラ。

少し引き気味の田村。

「影から、いつも見ていました」

「何度も、何度も告白しようと試みたけど、勇気がなくてダメでした」

「ある日、田村君が星空かがやを捜索している事を知り、私は何とか近づきたくて星空かがやに変装してしまったんです」

「そんな、」

「実は…稲元スミレさんと岸本マユミさんも私の仲間です。私の恋のために、手伝ってくれたんです」

「ええっ、」

僕は三度、転びそうになった。

「本当にすみませんでした」

隠れていた稲元スミレと岸本マユミが現れた。

「星空かがやのInstagramは、すべて私たちで作っていました。ごめんなさい」

「……」

愕然とする田村。

「付き合っちゃえば、いいんじゃねぇ」

釜本がぼやく。

いつの間にか釜本と山本も屋上にいた。

「俺たちも、君島サクラと仲間だったんじゃねぇ〜」

「ええっーーー」

僕は四度、転びそうになった。

「お前さ〜そうとう〜鈍いんじゃねぇ〜〜」

釜本が僕の背中を押す。

ドン、

夕日が差して来た、

この星ノ宮山から見える夕焼けは、昔からきれいだ。

その手前、君島サクラが立っていた。

夕焼けに映え、オレンジ色の空に立つ彼女は、やはり、あのInstagramのように美しかった。

「いいよ」

僕は、返事をした。

「僕は、本当は星空かがやじゃなくて、君島サクラが好きだったんだ」 

「ありがとう」

僕たちは、しっかりと手を握った。

二人は、夕日に包まれた……


そして、

僕は現在、君島サクラと付き合っている。

幸せな学園生活だ。

「やっぱ、架空のTikTokerより本物の女子の方が、いいんじゃねぇ」

釜本がぼやく。

笑う僕たち。

星空かがやの事は、しばらく忘れていた。


しかし、

事態は新たな方向へと進みつつあった…


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