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「直接愛を伝えることができるなら、それはとっても素敵なことだと思わない?」


 溌剌としたいつもの調子で、あかりは言った。


「だからそうやって毎日少しずつ抜いているの?」

「これは果てしなく大きな愛を少しだけ小さくしているの。放っておくとゆきや公人君への止めどない愛が溢れてしまうから」


 自室の壁一面に備え付けられた棚にはこれまで採ってきた『愛』が整然と並んでいる。狭い瓶の中で窮屈そうに詰められた愛は星々のように煌めいていた。


「私は親の顔も知らずに育ったけど、公人君とゆきには果てしなく大きな愛をもらったんだ。だからゆきにも特大の愛を感じて欲しいなぁ。もちろんプレッシャーにならない程度にね」


 そう言って今日の分の愛を棚に並べた。


「公人君も私が出張の時は試してみてもいいんだよ?」

「どうだろう。愛なんて複雑なもの受け止められるかな」

「公人君の私への気持ちもその程度か~」

「もちろん君のこともゆきのことも心から愛している。でも採った感情は持ち主にしか感じられないって前言っていた気がしてさ」

「まぁその辺りも含めて、ももちゃんと色々研究しているから、時間の問題だと思う。ももちゃんはちょっと人間じゃないし」

「君月さんか、あかりから見てもそう思うの?」

「あの人こそ天才だと思う。性格はちょっとアレだけど」


 肩を竦め、呆れたように笑う。


「ももちゃんの目標知ってる?」

「知らないよ」

「『究極の愛を創る』だって」

「究極の愛? それはまた荒唐無稽な話だな」

「でも素敵だよね。もし『究極の愛』を創れたなら、世界中の人が最高の幸せを感じられるんだよ」

「愛の定義も分かっていないのに、究極なんて付けたら永遠に叶いそうにないと思うけど」

「つまるところ、全生物に分け隔てない愛ってことじゃない?」

「それって虫とかも入るの?」

「きっとね」

「虫の幸せか……考えたこともないな」


 そもそも虫に感情があるとは思えないけど。


 表情を見て察したのか、あかりが自信満々に言った。


「ももちゃんはきっと叶えるんだろうなぁ。そのためにも私ができることなら全てやるよ」


 やる気に満ち溢れたその顔を見て、心の底から頑張れと思う。

読んでくださり、ありがとうございます。

今後ともご愛読頂けますと幸いです。


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