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 渚との一件から、クラスで孤立していると感じるまでにそう時間はかからなかった。


 冗談を交えながら会話に入っても、途端に会話が終わってしまう。


 靴に画びょうを入れられたり、机に落書きをされたりとか、そんな分かり易い虐めこそないけれど、それでも真白ゆきと同様に俺が口を開くと教室が静まり返った。


 ある意味、仲間とも言える現状の中で、除け者の先輩である真白は相も変わらず自分だけの空間を完璧に築き上げていて、我関せずといった様子だ。


 そういうときは決まって感情リキッドを飲んだ。


 感情リキッドさえ飲めば教室で独りで居ることさえ楽しく感じる。例え嫌われているとしても、それさえも楽しむことが出来れば嫌われている事実なんてどうでもよくなる。


 そもそも俺は転校してきたばかりだし、出来上がった人間関係の中に飛び込むのは苦手なタイプなんだ。だから大勢でいるより、一人でいる方が楽。


 授業中は授業に集中すればいいし、休み時間は寝ていればいい。


 自分たちが気に入らないからと言って距離を置いてくるクラスなんて、こっちから願い下げだ。俺には真白と過ごす放課後の方が合っている。


 人の視線を気にしないで居られる空間は居心地が良かった。会話らしい会話をせず、二人で本を読んでいたり勉強をしたりするだけでも心が落ち着く。


 感情が無いと強がって人を避けていた真白は、俺が図書館に通っても何も言わない。


 言っても無駄だと思われたのかもしれない。


 しかし真白の父親の話によれば、俺のことを好意的に話していたらしいので、俺はその話を信じることにした。


 嫌われたら……その時はその時。感情リキッドを飲めば、どんな煩雑なことも楽観的に考えられた。


 真白は図書館でも相変わらず無表情だったが、長い時間を一緒に過ごすうちに表情に少しずつ変化が見られるようになった。


 くだらないことで堪えきれずころころと笑ったり、気に入らないと感じているときは露骨に無視をしたりする。自分では抑えているつもりでも、感情や考えていることが自然と表情や態度に出てしまうのを見ると、なんだか嬉しくなってしまう。


 慣れてみれば随分と素直な性格だと感じた。


 気付けば、俺にとって真白と過ごす時間は特別なものになっていた。クラスでの立ち回りや人間関係を考える必要もない。


 ただ二人だけの時間。俺は真白と過ごす時間に傾倒していった。



小説を読んでくださり、ありがとうございます。

今後ともご愛読頂けますと幸いです。


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