第92話 ミズトとセシル
(ミズトとセシル?)
ミズトはセシルが立つものだと思い彼女を見ると、想定していない言葉を耳にした。
「ミズト、頼んだわ」
セシルが無表情に言った。
「はい?」
「ミズト、あなたがパーティリーダーよ」
「えっと」
(おいおい、まさか俺に話せって言ってるのか?)
【どのパーティもリーダーが紹介していました。ミズトさんとセシルさんのパーティはミズトさんがリーダーとして登録されているようです】
(マジかよ……)
ミズトはこんなところで揉める恥ずかしい場面は見せたくないので、勝手にリーダーにしたセシルには何も言わずに立ち上がった。
「では『ミズトとセシル』パーティのリーダーから、二人について頼む」
ハロルドが立ち上がったミズトに言った。
(ん? 『ミズトとセシル』パーティ?)
【『ミズトとセシル』は冒険者ギルドに登録したお二人のパーティ名です】
「ただいまご紹介に預かりました『ミズトとセシル』のミズトです」
(芸人のコンビ名みたいだな……)
「彼女はセシル・フルール。レベル76のエレメンタルシューターです。私の方はミズト・アマノと申します。レベル50の魔法使いです。B級冒険者としては新米ですが、どうぞよろしくお願いします」
ミズトは軽く頭を下げた。
「ハ……ガハハハハハッ!! レベル50って最低レベルじゃねえか!」
「しかも基礎クラスの魔法使いだってよぉ!」
「はい、役立たず決定!」
ジェイクを中心とした氷雪旅団のメンバーが騒ぎ出した。
「待てよ、お前ら! レベルが低くても、基礎クラスだとしても、そいつだって何かの役に立つからここにいるんだろ! 笑ったらダメだろ!」
勇者リアンが、戦闘では役に立たない前提でミズトをフォローした。
「勇者リアン殿の言う通りだ。冒険者ギルドが討伐隊に加えた理由があるはずだ」
「そうは言うがよ、勇者にハロルドさんよぉ。そっちのハイエルフを参加させてえだけで、異界人なんてオマケじゃねえのか? こんなチビが、あんたの言う、命を預ける仲間に相応しいとは思えねえけどな!」
ジェイクは立ち上がり、ミズトに近づきながら言った。
「たしかに、ジェイクの話も一理あるかの……。じゃあこうするのはどうだ? まずは『ミズトとセシル』を隊列の先頭になってもらい、二人に実力を示してもらおう。この討伐隊に参加する資格があるか、言葉ではなく実力でだ。どうだろうか、セシル殿」
ハロルドは座っているセシルに視線を向けた。
「ええ、構わないわ。私も、ミズトの魔法は見たことないの。楽しみだわ、フフ」
「は? ちょっと待てよ! この女、今、見たことないとか言わなかったか? ふざけんな、コラ! なんでそんな奴を連れてきてんだ!」
ジェイクが、ミズトの横にいるセシルを睨みつけた。
「ま、まあ待て、ジェイクよ。こうなったら、彼の実力を見せてもらうしか、君だけじゃなく皆も納得しないだろう。セシル殿も構わないと言うし、勇者リアン殿もどうだろうか?」
「そ、そうだな。俺も、彼の実力は見ておきたい……」
「では、この話はここまでだ。さあ、出発しようぞ」
ハロルドの声に皆が立ち上がった。
(なんか、当事者の俺を無視して勝手に話が決まったんだが……)
【セシルさん以外の全員が、ミズトさんの実力に疑念を持ったようです。これは良い機会になりましたね】
(良い機会? どこがだよ)
【これでミズトさんの実力を見せつければ、そのギャップで強い印象を皆さんに与えることが出来ます】
(強い印象を与える意義を一つも感じないんだが……)
【とんでもありません。ここにいる方々は世界でも名の通ったB級冒険者。しかも勇者パーティまでいらっしゃいます。ここで爪痕を残せば、後々に何か役に立つことがあるでしょう】
(言いたいことは分かるが……)
ミズトは自分が思っていた以上に厄介な事態に巻き込まれて、少し投げ出したくなっていた。




