第84話 B級へ
翌日、ミズトが冒険者ギルドを訪れると、想定通りミズトの嫌疑は晴れ、今回の件に関しては何もお咎めがないと伝えられた。
それどころか、ミズトが伝えた闇ギルドアジトへ領主の兵が乗り込んだところ、メンバー全員が拘束されていて難なく捕らえることが出来たのは、ミズトの功績とされた。
さらに、捕らえた商人レジナルドの屋敷からは、精霊石だけでなく、さまざまな違法取引の証拠がいくつも見つかり、アボット子爵と結託して他国へ売り捌き儲けていたことも分かった。以前、アナング商隊を襲った盗賊も、彼らの手引きによるものだった。
エシュロキアに暗躍していた、貴族と商人による闇取引が白日のもとに晒された功績も、C級冒険者ミズトによるものとして称えられた。
それもあり、トリスターノからは意外な提案がされた。
「ミズト。お前のB級昇級を推薦したいと思うのだが、どうだ?」
「昇級の推薦ですか? 私はC級になってから大した依頼を達成していないのですが」
ミズトは支部長室のソファーに浅く座ったまま答えた。
「前にも言ったが、C級以上は具体的な昇級条件があるわけではない。冒険者ギルドへの大きな貢献と、階級に見合った実力があると判断されればギルド支部長の名で推薦可能だ。どうだ?」
「そうですね……」
ミズトは少し考えるように、両手の指を交わらせてテーブルに肘をついた。
【ミズトさんが躊躇している理由が不明です。階級が上がれば収入も上昇します。B級からはさらに高い報酬となるため、すぐに快諾しない理由が見当たりません】
感情がないはずのエデンが不思議がっているように、ミズトには感じ取れた。
(まあ、今までの俺を考えればそうだろうな。実際、B級の報酬を見るとプロスポーツ選手並みの収入になりそうだ。だけど、どの依頼も一日や二日で出来る簡単なものでもないし、中には戦争に参加するようなものもあって、なんかな……)
【ミズトさんの意図を理解いたしました。昇級するかどうかに関わらず、わたしはミズトさんの意見を尊重します。ただし、冒険者ギルドは国境を越えた世界的な組織であり、社会において独立した高い地位を確立しています。そのため、武力以外の力を必要とした場合では、冒険者としての高い地位が非常に役立ちます】
(…………)
「ミズトよ、珍しく迷っているようだが、もしその気があるのなら二つほど確認することがある」
トリスターノは座ったままジッとミズトを見下ろした。
「確認することですか?」
「そうだ。一つは、再度鑑定を受けてもらいたい。レベルがいくら高くてもB級にはなれないが、最低レベルとして50が設定されている。お前がレベル50に達しているかは確認させてほしい」
「なるほど。もう一つは何でしょうか?」
「お前、どうやって『ドラスヴェイル古代坑道』を攻略した? あれはまぐれでもソロで攻略することは不可能だ。お前が到達者にでもなっていない限りな」
(やっぱギルド証でバレてたか)
【冒険者ギルド証はダンジョンの攻略記録が残る仕様になっております。ただし、どうやって攻略したかまでは分からないのでご安心ください】
(なるほど。なら、全て話す必要はなさそうだな)
「あそこは、ソロで攻略したわけではなく、偶然出会った方とパーティを組んで攻略しました」
「ほお、偶然ね……。異界人のお前なら、名前もレベルも分かっているんだよな?」
「はい、レベル90以上の方に手伝っていただきました。しかし、それ以上を申し上げることはできません。あの方と組む際、口外しない条件で手伝っていただいたので」
(ん? 昇級すると言ってないのに何で俺は答えてんだ……?)
「『到達者』の協力があったのか……。しかし三大ロードが異界人を手伝うとは思えん。もの好きで有名な賢者なら或いはと思うが、ミズトは魔法使い。魔法使い系同士での攻略は無理だろう。となるとあの方か……」
トリスターノはブツブツと勝手に想像を膨らませている。
適当に言っただけのミズトは、見ていて少し心が痛んだ。
「よし、ミズト、『ドラスヴェイル古代坑道』については信じよう! 何にせよ攻略した事実は間違いないのだからな。あとは鑑定だ、どうする?」
「…………分かりました。鑑定を受けますので、昇級についてよろしくお願いします」
拒否し続ける理由も見当たらないので、ミズトは承諾することにした。




