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おじさんという生き物が異世界に転生し若返って無双するキモい話  作者: 埜上 純
第二章 冒険者編

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第60話 エシュロキア迷宮攻略

 地下一階へ降りると、ミズトは急がずにくまなく歩きまわることにした。

 エンディルヴァンド地下洞窟では目的がダンジョン攻略だったので、駆け抜けるように急いで進んだが、今回は素材の採取。

 しかも受けた依頼は地下一階か二階で採取できる素材ばかり。必要であれば地下一階と二階を何度も往復するつもりでいた。


(ずいぶん混んでるダンジョンだな)

 少し進んだだけで、何組もの冒険者パーティを見かけた。エンディルヴァンド地下洞窟に比べると明らかに高い頻度だ。


【エシュロキアはドゥーラの町に比べると冒険者人口が多いうえ、このダンジョンは町中という好立地のため、たくさんの利用者がいるようです】


(まあ、そうなんだろうけど、おかげでこの依頼の難易度高くないか……?)


 ミズトはダンジョンを歩きながら、ここの通路ではモンスターが現れることも、採取できる素材がないことも気付いた。

 どちらも通路ではなく、いくつもある部屋の中だけのようなのだ。

 そしてほとんどの部屋には別の冒険者が陣取っていて、誰もいない部屋が見当たらなかった。


【想定を超える混み具合です。空いている部屋が見つかれば良い方ではないでしょうか】


(ああ、その通りかもな。しかも、空いてる部屋を見つけたとしても、たまたま目的の素材がないと意味がない。どうするか……)


 だからと言って依頼はすでに受領しているので進むしかない。

 ここはもう空いてる部屋があれば素材を探すだけ探し、あとは諦めてダンジョンを進むことに決めた。


 結局、地下二階までに誰もいない部屋は一つしかなく、そこで何とか依頼一つ分の素材を集めることができた。

 ダンジョンに潜って一時間ほどしか経ってない。仕方なくミズトは地下三階へ向かった。


 地下三階以降も、冒険者で混み合っているのは変わらなかった。

 どのフロアも二十ほどの部屋があるのだが、空いてるのは一つ二つ程度。

 ミズトは空いてる部屋を順番に回り、モンスターが出現すれば退治し、必要がなくても素材があればついでに採取した。


(あれ? ここで行き止まりか?)

 地下十階の一番奥の部屋に来ると、降りる階段が見つけられず辺りを見回した。


【ここ『エシュロキア迷宮』は地下十階が最深部で、この部屋が唯一のボス部屋になります】


(ボス部屋? 出てくる気配ないけど?)


【別の冒険者に討伐されたばかりなのでしょう。ダンジョンのボスは倒されると、再度出現するまでに数時間かかります】


(何? すると、これで終わりか?)


【はい、あちらに見える魔法陣で脱出して攻略となります】


(そうか、初心者向けダンジョンだけはあるな……)


 ミズトには拍子抜けのダンジョンだった。

 地下九階、十階ぐらいまで来て、やっとエンディルヴァンド地下洞窟の地下一階、二階レベルのモンスターが現れる。

 倒したところで大した経験値にもならないし、何回か現れた宝箱も店で買えるランク1のアイテムばかりだった。

 調合の材料になりそうな素材もなく、冒険者ギルドの依頼じゃなければ来る用事はなさそうだ。


(まだちょっと早いが、今日は帰るか)

 ミズトは帰還用の魔法陣に乗った。


 ====================

 ミズト・アマノさんが『エシュロキア迷宮』を攻略しました。

 ====================



 *



 翌日も、ミズトは『エシュロキア迷宮』に潜った。

 今回は地下一階と二階で依頼達成に必要な素材が集まり、そのまま地下十階まで回る。

 相変わらず道中は大したものが手に入らなかったが、前日と違ってボス部屋ではボスモンスターが現れた。


 ====================

 バトルベア LV28

 属性:地

 ステータス

  筋力 :G

  生命力:G

  知力 :I

  精神力:H

  敏捷性:I

  器用さ:J

  成長力:H

  存在力:I

 ====================


(ん? バトルベアがボス……?)

 エンディルヴァンド地下洞窟で何度も倒したモンスターだ。


【同じモンスターでも、ボスの場合は生命力が高いはずです】


(そうなのか? ま、なんでもいいけど)

 ミズトは『ストーンバレット』一発でバトルベアを吹き飛ばした。


 それから『エシュロキア迷宮』から出ると、冒険者ギルドに戻り依頼達成の手続きを行った。

 最初に受けた三つの依頼を二日で達成しただけではなく、手続き後すぐに三つの依頼を追加で受け、その場で素材を提出した。


「ミズトさん、これはどうされたのですか!?」

 いつも九番か十番の窓口にいる受付の女性が、今日は珍しく八番窓口にいた。

 先日ミズトと口論になった女性だ。


「どうされたもなにも、当然エシュロキア迷宮で採取してきました」


「ミズトさんが受けた依頼は地下一階か二階で採取できる素材です。これは地下五階以降でしか採取できないはずですよ!」


「そうなんですね。では地下五階以降で見つけたのだと思います」


「はい? まさか地下二階より下へ行ったのですか!?」

 受付の女性は驚きと怒りの混ざった表情をした。


「ええ。地下一階と二階は混んでいましたので、余った時間は降りていきました」


「なんて危険な真似をされたんですか! ダンジョンはそんな思いつきで行くところではございません! 初めて行くダンジョンは、事前にダンジョンの特徴や出現するモンスターを調べ、それにあった準備をして挑むものなんです! ましてや単独なら尚更です!!」


「なるほど、おっしゃる通りですね。危険そうなダンジョンの時は注意いたします」

(まあ俺だって危険な目に遭いたかないが、だいたいの強さは離れてても分かるからなあ)


「それで、今回は一人でどこまで行かれたのですか?」


「今回は地下十階まで行きました」

 ミズトは一瞬嘘をつこうか迷ったが、虚偽はペナルティになるので正直に言った。


「え!? ちょ、ちょっと冒険者ギルド証をお借りします……」

 受付の女性はミズトの冒険者ギルド証を持って奥へ入っていった。

 そんなことより追加分の依頼の処理をしてほしかったのだが。


「お待たせしました……。まさか攻略までされてたのですね、しかも二回……」


「冒険者ギルド証でそこまで分かるのですか? たしかに昨日も今日も攻略しましたが、昨日は他の方がボス討伐後だったので、最後は戦っていません」


「そうですか……」


「これで追加分の依頼達成処理をしてもらえますか? あ、それと、次からは『ギール地下遺跡』の依頼でもいいでしょうか?」


「…………分かりました」

 受付の女性は、危険を感じたら逃げることを優先するよう忠告だけすると、しぶしぶ了承した。


「ありがとうございます。明日からは『ギール地下遺跡』の依頼を探しますね」

 ミズトは笑顔を崩さずに言うと、当日分の報酬を受け取り冒険者ギルドを退出した。

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